「国民は増税、自民は脱税」 インボイス廃止求め、100万筆署名を開始
「私たちは1円2円が問われるのに、億単位の裏金ってなんだよ!」
3月締めの確定申告に追われる自営業やフリーランスの人たちを中心に2月11日、JR新宿駅前で集会が開かれました。テーマは「STOP!インボイス」。主催者は「インボイス制度を考えるフリーランスの会」で政府が昨年10月から開始した新税制「インボイス制度」の廃止を求めています。
インボイス制度とは適格請求書等保存方式。年間課税売上額が1000万円以下の免税事業者との取引にも消費税が課税され、その分を「免税事業者」「課税事業者」「消費者」の誰かが負わされることになります。すでにフリーランスや個人請負、自営業者らがインボイス登録をしていないとの理由で取引から排除されたり、あらかじめ消費税分をひかれて取引価格を下げられたりといった事態が生じています。
フリーランスの会の「STOP!インボイス」のオンライン署名は国内最多の56万筆に達しました。政府に請願を提出するため、この日から紙の署名も並行して集め100万筆を目指すといいます。今後、地方自治体に対し、インボイス反対の請願や陳情も進めていくそうです。
これのどこが「穏やかな船出」ですか?
集会の冒頭で、ライターの阿部伸さんがインボイスに苦しむ人々の声を読み上げました。
「この物価高で、収入が減ったにもかかわらず、インボイスによって経理の仕事が増え、時間もお金もゆとりがなくなり厳しくなった。頼れる家族もいない。誰にも迷惑かけずに子育てと仕事を両立したくて、個人事業主になり、細々と仕事をしてきましたが、疲れました」(30代サービス業)
「将来子どもを産みたくて、ある程度稼げて時間の自由の利く個人の委託のドライバーを始めた。でも、実際はお金がなくて、食べることだけで精一杯。お付き合いのある会社はインボイス未登録でも仕事を回してくれた。だけど報酬を前より少なくすることで合意。出産費用が貯まる気がしない。泣きたくなる気持ちでいっぱいだ」(30代運輸業)
「毎日つねづね、いつ自殺するかを考えるようになりました」(20代クリエイター)
「ただでさえ収入が少ないのに、これから先に見えている超値上げ、さらなる増税を考えると吐き気がします。年齢的に潰しもきかないため、生活保護の文字が頭をよぎります。子どもを作らなくて本当に良かったと思っています。早く死なせてほしいです」(40代クリエイター)
国税庁は昨年10月、インボイス制度の開始を「穏やかな船出」と表現しました。
阿部さんは「これが本当に穏やかな船出でしょうか?」と道行く人に問いかけました。
【リレートークの声】
リレートークでは多種多様な人たちが声を上げました。その一部を紹介します。
政府は手を汚さず仲間内で殺し合い こんな汚い手がありますか?
ラサール石井さん(タレント、俳優)
インボイスが始まってしまっている。確定申告のこの時期、インボイスのめちゃくちゃ面倒くさいことで、税務署、税理士、納税者てんやわんや。こんな制度、続くわけがないでしょう?今からでもやめてほしい。そして自民党の裏金問題。国民は増税、自民党は脱税ってことなんですよ。政治資金に所得税や贈与税がかからないことは知ってますよ。収支報告書に書かなかった時点で脱税じゃないですか。それがなぜ、3000万円以下がおとがめなしなんですか?我々は1円2円違っても文句を言われる。突然税務署から調査がやってくる。2日来るんですよ。昼間は鰻とか取って出さなきゃいけないの。来たからにはちょっともらいますよ、と追徴税をとられるんです。1000万円以下の人は税金払わなくてよかったのに、インボイスで取られることになった。事実上の増税なんですよ。こんなことが許されていいんですか?二階(俊博・元自民党幹事長)さんの政策活動費、5年で50億。使い切れるんですか?1年に10億、1日240万、1時間に10万円。使えますか? 普通は使えないんですよ。インボイス制度の悪いところは、1000万円の免税は残っているんです。だけど、インボイス登録した人は消費税払わなきゃいけない、登録しなかった人は消費税払わなくていい。元請けと下請けの関係で、元請けは消費税を払ってもらった方がいいので、登録した人と取引して、登録していない人には「ごめんねー」となる。つまり、政府は自らの手を汚さずに、仲間内で殺し合いをさせているんですよ。こんな汚い手がありますか?こんなものは絶対にやめるべき。いつでもやめられる。
ストップボタンが壊れた日本 一歩戻るべきだ
ダースレイダーさん(ラッパー)
国税庁からのお知らせです。確定申告はお早めに(笑)たくさんの領収書を整理していたら、家を出るのが遅れました。フリーランスは結構細かいことやってんですよ。
去年の10月のインボイス制度で、「おまえら税金払ってないだろ」と免税事業者に大変怒っていたインフルエンサーのみなさんが、今、自民党の政治家にいったいどういう態度をとっているのかに、すごく興味があるんです。非常におおらかだと思います。かたや、このインボイス制度、何度説明されてもどういう風に計算したらいいのか、いまいち分からない。
商売をしている人は毎日の商売の中でも、この番号書かないといけないの?消費税はいくらなの?と細かい作業がどんどん増えていきます。なんでこんなことになってしまったんでしょうか?
道に迷ったらどんどん先に進むんじゃなくて、一歩戻るのが大事だ。スタートした場所に戻るんだ。そして全体を見渡すんだ。
STOP、インボイス。日本人はストップするのが苦手です。日本はストップボタンが壊れちゃっています。
消費税っていったいなんだったっけ?
軽減税率まで戻ればいいんですか?
新聞は軽減税率を取れたから、あんまり消費税のこと触れなくなっちゃったんじゃないですか?
税金は僕らの社会に必要なお金だから、僕らがこういう社会にしたいと思うことに必要だから、集めているんですよ。1円単位の細かい計算して、1円まできっちり出せよと、こういう社会を僕らは運営したかったんですか?
こういう社会を作るために僕らはお金を集めていたんですか?
日本が民主社会になるんだったら、戻れるポイントはいくつかあると思います。僕らが、僕らの作りたい社会のために、僕らでお金を集めて、僕らのために使うんです。これができなくなっている。迷っている。どんな社会で生きかったか、どういう社会に生きたかったか。それをするためには何が必要で、何がいらないか、それを戻って考える。
「STOP!インボイス」はそれを考えるきっかけになると思います。
インボイス登録求めず踏ん張る、けど会社潰れてしまうかも
石川信一さん(内装業、東京土建副委員長)
私は課税事業者です。インボイス制度ができて、取引先の職人さんが個人で免税事業者ですから、私は「今回はインボイス登録をしてくれとは言わない」という決断をしました。
10月から税理士さんに「これから3年間は消費税の8割は負担軽減される、でも2割は自分が持たないといけない」と言われました。消費税、私は10%でなくて12%になるんです。3年後には15%、6年後に特例期間が終わると20%納めないといけなくなります。
作業場で夜、遅くまで仲間とじっくり話しました。今回は求めない。自分もできるところまで事業主として踏ん張ってみる。インボイス制度はずっと続くものじゃない、きっといつか押し返して廃止にできる。そこまでは様子見だ。がまんできるところまでやってみる。でも、20%になったら会社がつぶれてしまうかもしれない。そうすると仲間にも仕事が供給できないし、地域のみなさんの家の修繕もできなくなってしまう。
いま本当に職人さんが不足しています。若い人が全然入ってこない。若い人の起業も失ってしまう。こんな国のやり方でいいのでしょうか?インボイス制度を続けるのならば、裏金をもらった政治家に税務調査に入ってもらい、最も重い50%の重加算税をかけてほしい。弱い立場の人に増税をしないでほしい。次の選挙ではなんとしても政治を変えるために、力を合わせましょう。インボイス制度を廃止にしましょう。
演劇も子育てもひとりでは出来ない。分断をあおらないで
廣瀬綾さん(俳優)
子育て中で、小劇場の俳優です。俳優は決められた台詞を言うものでして、私は人前で自由に話すのはかなり苦手で緊張しています。
なぜここに立っているか。一つは自分の子どものため、もう一つは自分たちが愛している演劇業界のためです。
私はもともと刹那的な生き方をしてきた。未来のことをあまり考えずに生きてきたけど、子どもが生まれてすごく考え方が変わりました。自分の未来の生活を考えた中で、国民全員にかかわるインボイス制度を知りました。
今までは、政治とか経済とか難しくて、私とは縁がないものだと思っていたけど、インボイスをひもといていくうちに自分にめちゃくちゃ関係があることだな、と思って。実は身近にあって、生活に直結していると、子育ての中で気づくことができました。
インボイス制度は子どもの未来にも演劇業界にも多大な影響が出るのに、自分のことだと思っている人が少ないです。すごく分断を生む制度だと思いました。
「インボイス制度を考える演劇人の会」のアンケートでも、たくさんの事例が報告されています。「登録を迫られた」「ギャラを下げられた」……たくさん実害が生まれています。
演劇も子育てもひとりでは出来ません。絶対に誰かと協力しあってやっていかなければいけないんです。制度によって分断を煽り、不安を煽り、負担を強いる政府のやり方にはすごく疑問を抱きました。こんなところで大きな音を出してしゃべるのは初めてです。こうやってやることも、家族に反対されたりしてるんですけど、自分ができることを一つでもやらないと、何も変わらないと思って、せめて自分だけでも声を上げていこうと思っています。子どもの未来のために、「お母さん、あのとき何してたの?」と言われないように、後で子どもに恥ずかしいなと思わないように、ここで話しています。全然関係ないと思っている人がほとんどじゃないかな、と思うけど、経済も社会もつながっています。多様な文化のある未来のために、自分の子ども、自分の未来の不安を少しでも減らすために、インボイス制度のことを知ってもらって、(廃止へ)一歩を踏み出していきましょう。
年収300万円の人が、再来年は消費税15万円
佐々木淳一さん(税理士)
東京都大田区で税理士法人をしています。「インボイス制度の中止を求める税理士の会」にも入っています。税理士はいま、3月15日の確定申告に向けて、繁忙期に突入しています。
今までの確定申告の時期と大きく違って感じるのは、例年以上に、非常に気が重くなるんです。
事業者の計算をしたんですが、年収約400万円の人、去年までは免税事業者で消費税は納めなくてよかったんです。インボイスに登録されてからの消費税を計算したら、約6万円です。
みなさんもざっくり計算できるんですが、今年の納税については、昨年10月からの分ですからだいたい年収の0・5%ぐらいだと思います。最低でも来年は年収の2%、再来年は3〜5%の納税になるんですね。
年収300万円に置き換えた時、今年は1万5千円、来年は6万円、再来年は15万円を払わなければいけなくなるんですよ。ほかにも国民年金、健康保険、住民税、所得税を払っています。これまで払わなくてもよかった消費税を払わなければいけない。暮らしていけない、事業を続けていけないんですよ。新たにフリーランスになろう、開業しようとしている人は暮らしていくことができないというのをインボイスは招いてしまうんですね。国民全員で止めなきゃいけない。たとえばヤクルトレディは個人事業主ですから、消費税を納めなければならなくなるんです。インボイス廃止、消費税減税、消費税廃止を掲げる政治を応援していきたい。
努力や未来を税制でつぶさないで
Nearさん(大学生)
都内の大学で社会学を学んでいます。インボイス制度が始まり、5ヶ月が過ぎようとしています。
複雑な税制で経理の残業が増え困っていると言う声、インボイス登録がなくて取引を停止されたという声、開業できなくなった、自殺を考えたという声もありました。
私たち学生は将来の仕事が確実に決まっているわけではありません。私たちと同世代やそれ以下の世代が、こんな話を聞いて将来に希望が持てるでしょうか?
私は絶望しかないです。
インボイス制度を知る大学生の友人からはこんな声が届いています。将来への不安がふくれ、希望が見いだせない。心がやせていく。若い世代からやりがいのある仕事を奪う気なのか。金さえもうかればそれでいい仕事が横行するのは嫌です。
私が一番恐れているのは、この制度により将来の職業選択の幅が狭まるということです。フリーランスや起業の道を選び、将来に向け勉強し、努力する人がいても、この複雑な税制度に直面することになります。それにより、道をあきらめてしまう人がいるとしたら、もったいないことです。多くの人の努力や未来を税制でつぶさないでほしい。
ヨガ講師たちは明るい笑顔の裏で死んじゃいそうです
塙律子さん(ヨガインストラクター、フリーランスユニオン共同代表)
ヨガとピラティスの講師をやっています。インストラクターは業務委託で、店舗に行って決められた時間仕事をする旅人のような仕事をしている人が多いんですね。
同業者がインボイスでどうなっているかを伝えたい。私たちは何社かと契約するんですが、インボイスを仲間と勉強してもすごく難しいので、あきらめて登録しちゃった人もいます。今困っているという人もちらほら出てきている。
あんまり稼げる仕事じゃないんですね。身体一つで出かけていって仕事をして。免税事業者がほとんどです。そうすると「報酬の減額」を言われます。お金を減らされているんですよ。10月以降の報酬明細を見ると、どんどん減っていて、ため息が出ちゃうんです。
この仕事って、人から「毎回楽しみにしている」「元気になるクラスをありがとう」「癒やしをもらえる」って言われるんですね。とてもいい仕事だと思います。明るくて優しくて元気な人が多いんですが、蓋を開けてみるとすごく不安を抱えています。このまま続けられるのか、これ以上インボイスが続いたら、どんどん報酬が減額される、やっていけない。そういう話を明るい笑顔の裏側で持っているんですよ。
インボイス、報酬減額、物価高で死んじゃいそうです。私は家族との時間を大事にしたいから、業務委託で、フリーランスという働き方を選びました。仲間に聞くと、雇用先でパワハラに遭った人、働き過ぎて心が壊れちゃった人、家族の介護、自分の病気、そういう人がなんとか生き残るために行き着いた場所がフリーランスだった。こういう人たちがインボイスによって、また国から殴られている状況なんですよ。
止めなきゃいけないと思いませんか?私たちの手でなんとか止めていきましょう。私も子どもがいるので、世の中をこのままにしちゃいけないと思っています。
高齢のフリーランサーが生み出す芸術を排除するの?
藤田桃華さん(書道家)=右
この新宿の街は、歩くだけでいろんなアートに触れることができます。お店の看板、店内を彩る絵画や書道作品。私たちは知らないうちに、たくさんの芸術に触れています。それでホッとしたり、心が豊かになる時間を過ごせているわけです。
私自身、AKBのMVやテーマパークのイベントに筆文字を提供してきました。しかし、インボイスという名の増税が始まってしまいました。私はインボイスに登録していません。市場から排除される恐れがあります。さらに私が心配しているのは、本当に優れた芸術家、作品が排除される危険があるということです。
私の書道の師匠は現在80歳なんですね。数年前にある大企業から、社標を書いてほしいといわれて書きました。会社には書が飾られています。社員や来客は、毎日、芸術に触れることができます。書家には全国の和菓子屋さんの看板を書いている人もいます。75歳です。
何事もそうだと思うのですが、特に書道は深みのある作品を書くに至るまでに長い年月がかかります。すばらしい作品を社会に提供している書道の先生方は高齢の方が多いんです。そうした高齢のフリーランサーが、いまさら、煩雑で増税になるインボイス登録なんてできますか?出来るわけないんですよ。そうした方々が市場から排除される、それは私たちにとっても大きな損失です。
インボイスは私たちから一流芸術に触れる機会を奪う。どうかご一緒に、インボイスSTOPの声を上げ、豊かな文化が発展する社会にして行こうではありませんか。
仕事は減るし、一緒に仕事をしていた人たちの関係悪くなる
栗田隆子さん(文筆家)
いま新宿歩いているみなさんにも、ここで耳を傾けているみなさんにも伝えたいことがたくさんあって。
消費税って1989年から開始されて、30年以上経っているものが、いますごく影響を与えています。政治とか経済とかの怖いのはこういうところで、1989年って私、中学生です。それがいま50歳になって、こんなに影響を受けまくるものになってしまっている。
消費税なんて開始当時から事務が煩雑になることだったり、貧しい人に負担が重くなることだったり、懸念が出ていたんですよね。それ、全然みんな忘れちゃったまま、今ここまで来てしまって悔しいです。
インボイス制度の実害が、私の身にも起きました。9月に国会の前で「私の人生を否定する制度だ」って言いました。やっぱりその通りだった。具体的にいいますと、ある団体の広報誌に書評を書いているんですけど、いきなり原稿料が1割下がった額で振り込まれてきて、「どうしてなんですか?インボイスの影響ですか?」って聞いたら、「言ってませんでしたっけ? はい。そうです。みんな守ってますから」という返事でした。
いやいやいや、あなたたちも結構反対している側だったよね。法律守らなきゃならないっていうのはわかるけど、すごく悲しくなりました。さきほどバトルロワイヤルをさせるのがインボイス制度だという話がありましたが、もうすでに起きています。問題なく仕事をしていたのに、今もう不穏な気分になっちゃって。この不穏な関係性をどうしてくれるんですか?問題なく仕事をしていた人を分断させていくのがインボイスです。
事務の煩雑さも降りかかってくる。いまのこの私たちの声をメディアの方が拾ってくださっていますか?実害ですよ。
社会のためにというけれど、正直、私怨の気持ちがすごくあります。もういい加減にしてくれよ。仕事は減るし、一緒に仕事をしている人たちの関係を悪くさせるんですよ。経済発展とかそんな次元のものは、インボイスはもたらさないんで。はっきりわかりました。ねちねちと言い続けて、しつこくしつこく言い続けていきたいと思いますので、みなさん一緒に声を上げていきましょう。(阿久沢悦子)
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