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漫画原作:『ベストマン~代理結婚式業株式会社~』第2話

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『ベストマン~代理結婚式業株式会社~』
第2話「余命(いのち)短し 結婚せよ孫娘」(後編)

扉絵イメージ:
画面右下、白のタキシード姿の曽我 大祐(そが だいすけ)が左隣にいるウエディングドレス姿の土肥 一実(どい かずみ)の肩を抱き寄せ、画面左上の一実の祖母で着物姿の工藤 経子(くどう きょうこ)を見上げている。
画面左上の経子は、穏やかな眼差しで画面右下の孫の一実と大祐を見守っている。
画面左下でビジネススーツ姿の吾妻 大将(あずま ひろまさ)と大庭 雫(おおば しずく)も穏やかな笑みを浮かべて経子を見上げている。
画面中央下のパンツスーツ姿で伊達眼鏡をかけた伊東 万桜(いとう まお)だけが両腕を組み、不満げな表情で右側の大祐をみている。
※大祐と一実による代理結婚式の成功と経子の死の暗示、裏方として活躍する大将と雫、大祐の行動に不満げの万桜といった、第2話の物語の結末を読者に匂わせるように。

2―3ページ


擬音「!」
経子の声「一実…良い男性(ひと)を見つけたねぇ」
隣に立つ大祐が婚約者であると祖母の経子に誤解されてしまい、驚く一実と大祐の顔のアップ。
※大将・雫・万桜・大祐・一実・経子の服装は前回と変わらず。

擬音「チラッ」
経子の想定外の反応に動揺する一実。
不安な表情を大将に向ける。

「コクリ」
落ち着いて当初の予定通りに話をするようにと、うなずいて合図を送る大将。
※大将を婚約者として祖母の経子に紹介すること。

一実「ちっ…違うのよ おばあちゃん 私と結婚するのは…」
不自然な笑顔で動揺を取り繕いながら、経子の誤解を解消しようと訴える一実。

大祐「そっ…」
大祐の口元のアップ。
※この時点で読者に大将の発言だとミスリードさせるため、目鼻立ちを描かずに口元だけの描写をする。


大祐「曽我 大祐(そが だいすけ)ッス どうぞよろしくッス!」
気をつけの直立姿勢で自己紹介する大祐。
気が動転してのぼせたような表情をしている。

擬音「バッ」
不器用だが誠実さの感じられる馬鹿丁寧なお辞儀をする大祐。

擬音「ニコニコ」
経子「そうかい…"大(だい)ちゃん"と言うのかい…」
経子「一実(かずみ)…良(い)い男性(ひと)を見つけたねぇ~♪」
孫の幸せに心からの笑顔を見せる経子。

4人「えっ!?」
経子のベッドを取り囲む大将・大庭雫・伊東万桜・一実が予定外の大祐の反応に一様に表情を曇らせる。
大祐の上司である芸能事務所社長の万桜のみ、こめかみに怒りの血管を浮かべている。
※経子のベッドの周囲に立つ5人全員が登場するようにロングの構図で。
※5人の立ち位置は、前回同様のまま。
      
       雫 大祐
窓側  大将      万桜  病室出入口  
        経子  一実


こめかみに怒りの血管を浮かべている万桜の顔のアップ。
隣(コマの外)に立つ大祐を伊達眼鏡越しにキッとにらみつけている。

4―5ページ


擬音「ギュッ!!」
万桜がスラリのびた右足のハイヒールのつま先のアップ。
隣の大祐の左足の革靴の甲(こう)を容赦なく踏みつける。

大祐「ぎっ…いいっ!!」
仰け反るように顔を天井に向けながら、歯を食いしばりつつうめき声をあげる大祐。

万桜「おばあちゃん…ちょっと"タイム"ねぇ~♪」
大祐「モガガガ…」
経子に笑顔を向けながら、右手で隣の大祐の口を塞ぐ万桜。
万桜に足を踏まれた挙句、口封じされてもがく大祐。

(時間経過)

万桜の声「ちょっと…どういうつもりなの!?」
自販機や待合椅子が設置されている病棟の廊下の外観。


大祐「ッ!」
大祐のネクタイの根元を右手で鷲掴みしながら、大祐に顔を近づけ詰め寄る万桜。
伊達眼鏡越しにキッとした表情でにらみつける万桜に圧倒される大祐。

万桜の声「せっかくの"計画"(プラン)を台無しにして…どうしてくれるのよ!?」
大将独白「万桜のやつ…」
おでこに右手を当てて、やれやれと言った表情の大将。
大将の側で、万桜の迫力に圧倒された一実は、無言で2人のやり取りを見つめている。

大祐「おっ…おばあちゃんのうれしそうな顔見てたら…オレ…」
申し訳なさそうに力無く俯きがちに顔を背けて万桜の視線を外す大祐。
大祐の真意に気づき、ハッとする万桜。

擬音「!」
大将「万桜…いい加減にそのへんで…」
雫の声「一実さ~ん! 大変!」
右手をのばして2人の仲裁に入ろうとする大将。
経子の病室に残してきた雫が4人の元に駆け寄ってくる。
※雫はコマの外から声のみ。

6―7ページ


雫の声「おばあちゃんが…」
笑顔だった経子が両手で掛け布団を握りしめ、苦しそうに呼吸を乱しあえいでいる。

(画面暗転・時間経過・場面転換)

ひじ掛け椅子に座りながら、病状を親族である一実に説明する主治医。
黒縁眼鏡をかけた融通の利かなそうな感じの若手医師。
机の上のPCモニターには、画像診断で撮影された経子の診断画像が映し出されている。
主治医と向き合う形で、うなだれるように椅子に座っている一実の後ろ姿。

擬音「ガラッ」
やや猫背気味の姿勢で俯き、暗い表情をした一実が診察室から出てくる。

大祐&雫「一実さん!!」
緊張した面持ちで一実に声をかける大祐と雫。

擬音「!!」
大祐と雫の表情が驚いた顔つきに変わる。
※前のコマと同じ構図で、2人の表情だけ変える。


診察室の出入口の床にしゃがみ込み、両手で顔を覆って涙を流す一実。

一実「おばあちゃん……今日・明日が…"峠"(やま)だって……」
両手で顔を覆っている一実の顔のアップ。
指の隙間から、涙で濡れた一実の瞳が見え隠れしている。
一実の頬を幾筋の涙が流れ落ちている。

口惜しそうに右手親指の爪を噛みしめる万桜。
一実の悲しみに寄り添うように、目を閉じて俯く雫。
右手親指と人差し指をアゴに添えて、冷静な眼差しで何かを考え込む大将。

擬音「!」
床にしゃがみ込んだままの一実の右肩の上に左手を置く大祐。
大祐の右手には、クシャクシャのハンカチが。
寄り添う2人の姿を見て何かに気づいた表情の大将。
※第1話5ページ1コマ目、代理結婚式で大将が依頼人の恵美に寄り添った時と同じ構図にしてダブらせ、読者に大将が何かに気づいたことをさりげなく伝える。

大将独白「これだ!!」
唇を結び、右手のこぶしを握り締めて1人何かを決意する大将の上半身のアップ。

(時間経過)

8―9ページ


擬音「ドン」
主治医の声「患者の病室で"結婚式"を挙げたいだと!?」
診察室のデスクを力強く叩く主治医の右手のアップ。

主治医「きみ…病院(ここ)がどこだかわかって言っているのかね?」
肘掛け椅子に座った姿勢で、話にならないとばかりに憤慨しつつ、左手中指で眼鏡のツルを動かして威厳を示そうとする主治医。
※前のコマをアップした構図で。

擬音「ダン」
大将「患者のお孫さんのハレ姿を…一目でも見せてあげたいんです!」
身を乗り出し、診察室のデスクに置きながら、真剣なまなざしで訴える大将。
大将の側に不安な眼差しで事態を見守る一実が立っている。

大将「先生…お願いします!!」
主治医に頭を下げる大将。

主治医「患者は明日をも知れない容体なんだぞ!!」
主治医「主治医として到底認められん!!」
大声を張り上げる主治医の声が、開けっ放しの診察室から廊下に響きわたっている。
看護師や付き添ってきた万桜・雫・大祐が緊張した面持ちで事態の推移を見守っている。

擬音「ヌウッ」
擬音「!」
看護師「あっ…院長……」
白衣に身を包んだ相撲取りと見まごう程の恰幅(かっぷく)の良い中年男性が現れる。
看護師の一人がハッとした表情で院長に気づき声をかける。


相撲取りの"朝潮(あさしお)”に似た風貌の院長の上半身アップ。
※威厳が出るようにややアオリ気味の構図で画面一杯に描かれている。

擬音「!」
院長「さっきから何をほたえちゅー………」
怪訝そうな表情で大声のする診察室の方を見る土佐弁丸出しの院長。
院長の視線の先には、診察室の外で事態を見守る万桜たち3人の姿が。
※ほたえるは、騒ぐを意味する土佐弁。

擬音「!」
院長の存在に気づいた万桜が驚いたようにハッとする。

万桜はわずかに頭を下げて院長に目礼する。

院長「うおっほん!」
頬を染めた院長が気恥ずかしさを隠すように右手を口に当ててわざとらしい咳払いをして
みせる。
※読者に院長が万桜に見惚れた結果、大将たちの力になったのだとミスリードさせるための大事な伏線。後に院長と万桜が旧知の間柄であることを明らかにする予定。

10―11ページ


主治医「あっ……院長!!」
驚いた表情で肘掛け椅子から立ち上がる主治医。
主治医の言葉に反応して院長のいる背後を振り向く大将と一実。

擬音「ヌウッ」
大将と一実独白「おっ…お相撲さん!?」
診察室の出入口を塞ぐように立つ院長。
相撲取りのような恰幅の良さに、振り返った大将と一実は呆気に取られる。
※恰幅の良い院長の迫力を出すために、ややアオリ気味の構図で。

PCモニターに表示された経子の病状をジッと見つめる院長。

擬音「ジロリ」
擬音「ドキッ」
モニターから目を離した院長は大将たちに厳しい視線を向ける。
騒ぎを起こして追い出されるのではと、緊張した表情の大将と一実。
大将と一実の背後には、虎の威を借る主治医がしたり顔で左手中指で眼鏡のツルを動かしている。

院長「こん べこのかあ~!!」
院長「おんしゃあ 患者のご家族をがなり散らすらぁて何様のつもりじゃあ!!」
土佐弁丸出しの院長の叱責に圧倒される主治医。
両脇に立つ大将と一実も目を丸くして驚く。
※こん べこのかあは、この大馬鹿者を意味する土佐弁。
おんしゃあは、お前を意味する土佐弁。
がなり散らすは、怒鳴り散らすを意味する土佐弁。


主治医「でっ…ですが…もし病院の責任問題に発展でもしたら…」
院長の大声にひるまず、左手中指で眼鏡のツルを動かしながら、毅然とした表情で反論する主治医。

院長「残念じゃが……わしらの仕事(医療)はここまでじゃ…」
俯き左右に首を動かしながら、主治医の反論を制止する院長。

院長「患者に最後まで希望をもたしちゃることも…医者(わしら)のつとめなんやないかね?」
キリッとした真面目な表情で主治医に医者の在り方を教え諭す院長。

主治医「………」
院長の言葉に呆気に取られて言葉もない主治医。

大将と一実「それじゃあ……」
両手で口を覆って泣き出しそうな一実。
穏やかな表情で右手のこぶしを握り締めて小さくガッツポーズする大将。

擬音「ゴホン」
院長「ただし…ひとつ"条件"がある………」
バツの悪い思いを隠そうと気恥ずかしそうに右手を口に当てて咳払いして見せる院長。

(画面暗転・時間経過・場面転換)

12―13ページ


字幕「数時間後」
経子の入院病棟。
ナースセンターで数人の看護師が忙しそうに、ノートパソコンに入力作業をしていたり、デスクを囲んで打ち合わせをしたりしている。
病棟廊下を数人のパジャマ姿の入院患者がゆったりと歩いている。

灯りのついた病棟の廊下灯。

擬音「フッ」
病棟の廊下灯が消える。

擬音「ガヤガヤ」
擬音「ザワザワ」
患者「なんだあ~停電か?」
看護師「医療機器とパソコンは動いているわ……」
病棟中の灯りが消えて動揺する患者や看護師たち。
暗闇の中で非常灯や電子機器の灯りで患者や看護師たちの姿が浮かび上がっている。


擬音「ピンポンパンポ~ン」
アナウンス「病棟の入院患者ならびに職員のみなさまにお知らせします……」
暗闇の中で突如流れてきた館内放送に真剣な表情で聞き入る患者や看護婦たち。
※アナウンスは、病院の館内放送を利用して雫が担当している。

雫の声「ただいまより 土肥一実・曽我大祐の結婚式を当病棟で執り行います…」
放送ブースでインカムを耳に装着しながら、穏やかな表情でアナウンスをする雫。
雫の手元の机には、数枚の放送原稿が置かれている。
※インカムは、大将たちとの連絡用。

擬音「グオォーン」
雫の声「間もなく新郎・新婦の登場です みなさまエレベーター出入口ドアをご注目下さい!」
患者「結婚式だってえ!?」
看護師「えっ~? うっそぉ~!」
ナースステーションと病棟廊下に面したエレベーター前の踊り場。
エレベータが音を立てて病棟のあるフロアに上昇している。
病棟から出てきた患者やナースステーションの看護師が身を乗り出すようにしてエレベーターにみな視線を向けている。

擬音「チン!」
擬音「ガラッ!」
やや俯瞰で見たエレベータ前の床のアップ。
病棟フロアに到着したエレベータのドアが音を立てて開く。
開いたドアの中から、一筋の灯りが暗闇の廊下を照らし出している。

14―15ページ


開かれたドアから純白のウエディングドレス姿の一実とタキシード姿の大祐が現れる。
互いの腕をからませ、一実は恥じらうようにやや俯き、大祐は緊張した表情をしている。
※大祐は、一実の右側に立つ。(画面向かって左側)
※2人の背後には、スーツ姿で介添え人を務める大将と万桜が控えているがこのコマでは描かない。
※2人の着用しているドレスとタキシードは、第1話の代理結婚式においてクライアントで新婦役の安田恵美と新郎役の大将が着用したもの。


擬音「パチパチパチ」
擬音「キャア~」
看護師「ステキ~!」
病棟廊下やナースステーションから身を乗り出していた患者や看護師たちが暗闇の中から現れた新郎新婦に笑顔で拍手喝采を送る。

擬音「パッパッ」
一実と大祐が病棟を経子の病室を目指して歩いていく。
お互いの腕をからませたまま、病棟廊下を進むたびに廊下灯が点灯されて暗闇の中に2人の行き先を照らす光の道が作り出されていく。
背後で一実のドレスの裾をとるスーツ姿の万桜。
万桜の隣でインカムを装着したスーツ姿の大将がインカムのヘッドホン部分に左手を添えながら、指示を送っている。

字幕「照明点灯係」
主治医独白「どうしてこんな目に………」
機械室で病棟照明のマスタースイッチを操作している主治医。
院長から照明係にされて不満タラタラの表情。

擬音「パチパチパチ」
拍手喝采の中、廊下を歩く一実と大祐の上半身アップ。
2人とも緊張から頬がやや上気している。

万桜「昼間の式(代理結婚式)で着用した衣装を2人に着せるだなんて…」
大将「大祐クンの背格好 おれ"ソックリ"で助かったよ!」
経子の病棟に向かう2人のあとを歩く万桜と大将の横顔のアップ。
万桜と大将は互いに顔を向けることなく会話をしている。

万桜の声「フフフ……即席だったけど…私のメイク術も中々のモノでしょ!?」
恥じらいながら満面の笑みを浮かべる一実の顔のアップ。
※メイクによって一実が見違えるほどに美しくなったことが読者に伝わるように。

16―17ページ


生命維持装置につながれた酸素マスク姿の経子がベッドに横たわっている。
うっすらと目を開き呼吸は落ち着いているが、先程までと違い病み衰えた表情。

経子の病室に入室する一実と大祐の上半身アップ。

擬音「!」
2人独白「院長さん!?」
経子のベッドの傍らには、神父の格好をした院長が満面の笑みを浮かべて立っている。
院長の格好に驚く2人。

院長独白「一度でいいから神父の真似事をしてみたかったんじゃ♪」
頬を上気させた院長が少年のようにウキウキと笑顔を浮かべている。


一実「おばあちゃん…わたし……一実よ……」
頬を染めた一実がためらいがちに祖母の経子に語り掛ける。
一実の傍らには、緊張した表情の大祐が控えている。

ベッドに横たわりながら、首を傾けて一実の晴れ姿を穏やかな表情で見つめる経子。

経子の顔のアップ。
溢れ出た涙が経子の頬を流れ落ちていく。

祖母と孫とのやりとりを暖かい眼差しで見守る大将と万桜、院長。

18―19ページ


擬音「ゴホン」
院長「新郎・新婦 前へ…」
式を先に進めるべく、右手を口に当てて咳払いをする院長。

院長「新郎 曽我 大祐 あなたは 病めるときも健やかなるときも 生涯彼女を愛し続けることを誓いますか?」
経子のベッド脇に立つ神父役の院長に向き合う形で並び、院長の言葉を聞く一実と大祐。
※大祐は、一実の右側に立つ。

ここに来て極度の緊張からお風呂にのぼせたかのように顔を赤らめる大祐。
こめかみや首筋から大粒の汗が流れ落ちている。

大祐「はっ…はい…ちっ…誓います……」
どもりながら、エイヤと覚悟を決めて誓いの言葉を口にする大祐。
成り行きから大将に代わり一実の代理結婚式の新郎役をつとめることの重圧と、依頼といえ経子をだますことの罪悪感を誓いの言葉を前にしてようやく意識し始める大祐。

擬音「!」
院長の声「新婦 土肥 一実 あなたは 病めるときも健やかなるときも 生涯彼を愛し続けることを誓いますか?」
神父役の院長の言葉を聞きながら、傍らの大祐が極度の緊張にあることに気づく一実。


一実「はい…誓います!」
やや俯きながら、目を伏せてためらうことなく誓いの言葉を口にする一実。
※大祐と対照的に。

擬音「スッ」
右側に立つ大祐の左手に、自身の右手を伸ばす一実。

擬音「!」
一実の手が自分の手を握って勇気づけようとしていることに気づき、ハッとする大祐。

大祐が振り向くと一実が頬を染めながら精一杯の笑顔を浮かべている。
※笑顔は大祐と大祐の脇に横たわる経子の2人に向けたもの。

院長「よろしい……それでは誓いのくちづけを…」
笑顔で両手を広げ、2人に誓いのくちづけをうながす院長。
院長の目の前で、互いに正面を向きあう一実と大祐。
一実を引き寄せた大祐の両手は、一実の両肩の上にのっている。

20―21ページ


大祐の顔を見上げるように顔を上げ、目を閉じてキスを待つ仕草をする一実。

口を真一文字に結んで、演技といえ本当の婚約者でもない一実にキスをすることに戸惑う大祐。

擬音「ニコッ」
右目を閉じて、イタズラっぽくウインクして見せる一実。

つま先立ちして精一杯背を伸ばし、大祐の首に両手をからめて自分からキスをする一実。
意表を突かれた突然のキスに目を見開いて驚く大祐。

擬音「ヒューヒュー」
観客一同「おお~!!」
経子の病室入口に詰めかけた患者や看護師たちが歓声をあげる。
部屋の脇で温かい眼差しで2人を見守る大将・万桜・雫。


経子独白「一実……」
ベッドの上で首を傾けたまま、涙を流し2人を祝福する経子の顔のアップ。

経子独白「おめでとう………」
字幕「その日の未明…安心したかのように経子おばあちゃんは天国へと旅立ちました」
キスをした2人を取り囲むように大勢のギャラリーが経子の病室に詰めかけている。
※病室全体を経子のベッドを中心として、天井からややフカンで見た構図で。

(画面暗転・時間経過・場面転換)

字幕「1週間後 大将の事務所」
一実の声「おばあちゃんの葬儀まで手配してくださり…本当にありがとうございました」
「あずまウェディングプランニング」と縦書きされた看板が掲げられた3階建てのビルの外観。
※第1話6ページに登場した建物。

22―23ページ


黒いワンピース型のシックな喪服を着た一実。
目を閉じ俯きながら大将の事務所のソファーに足を揃えて腰をおろしている。
ソファーの脇には一実の黒いショルダーバックが置かれている。
一実の前のテーブルの上にはティーカップをのせたティーソーサーが置かれている。
※経子の死去から数日後、葬式一切を終えて大将たちと事務所に戻ってきたという状況。

擬音「ギュッ」
大将「いえ……冠婚葬祭業に携わる者として当然のことをしたまでです……」
一実と向き合う形でテーブルをはさんでソファーに腰をおろしている礼服姿の大将。
経子に哀悼を捧げるように目を伏せて俯いている。
大将の右隣には、黒いパンツスーツ姿の万桜が大将同様俯きがちな表情でソファーに腰をおろしている。
大将たちの後ろには、黒いワンピース姿でお盆を胸元に抱えている雫と礼服姿の大祐も俯きがちな表情で立っている。

擬音「!」
一実「曽我くん…」
顔を上げて落ち着いた真剣な表情で眼前に立つ大祐に声をかける一実。
一実に呼びかけられハッとする大祐。

一実「本当に……ありがとう……」
一実「おばあちゃん……心から喜んでくれてたと思う……」
ティーカップを膝の上に置き、両手で包みながら言葉を選びながら穏やかな笑顔で大祐に
語り掛ける一実。

一実の笑顔を見て、照れ臭そうに視線を外しながらはにかむ大祐。
※大祐が一実に惹かれていることがそれとなく読者に伝わるように。

(時間経過)


擬音「カラン コロン」
一実「お世話になりました…」
大将の事務所の入口のドアを開け、目礼しながら別れの挨拶をする一実。
右手でドアノブを握り、左肩にはショルダーバックをかけている。

擬音「ポン」
大将「一実さんをひとりで行かせるつもりかい!?」
穏やかな表情で大祐の右肩の上に左手をポンと置く大将。

頬を染めて気恥ずかしそうに俯く大祐。

擬音「カラン コロン」
大祐「一実さん!!」
事務所のドアを開けて一実の元に駆け出す大祐。
大将・万桜・雫は、開け放たれたドア越しに事務所の中から大祐を見送っている。
左手にティーカップがのせられたティーソーサーを持っている大将。
その脇で腕を組んで面白くなさそうな表情の万桜。
2人の後ろでお盆を胸に抱いている雫。

万桜「まったく……"キャスト"失格ね……」
溜息混じりにやれやれといった表情の万桜。
一見、大祐への皮肉であるがどこかうれしそう。

24ページ


雫「あのふたり……うまくやっていけるんでしょうか?」
事務所の2階窓から大祐と一実のやり取りを覗き込む不安げな表情の雫。
事務所の外で身振り手振りを交えながら、一実と向き合い何かを必死に伝えている大祐。
大祐と向き合う一実はうなずく仕草をしている。
※一実と向き合う大祐は表情がわからないように後姿で描く。
※事務所2階から下をのぞきこんでいることがわかるにように、フカンで描く。

大将「………」
窓辺で右手でティーカップを握りながら穏やかな眼差しで2人を見守る大将。
※事務所の1階からのぞいていることがわかるように今度はアオリ気味に描く。

大将の声「きっとうまくいくさ……」
大将の声「おばあちゃんが見込んだ"相手"(かれ)なんだから……」
恋人同士のように腕を組み、お互い笑顔で見つめ合いながら歩き出す大祐と一実。
天国から2人幸せを見守っているかのように、画面上方から微笑む経子。

第2話終わり 次回、大将の事務所に新たな依頼人(クライアント)が!?


第3話のページへ


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