最近読んだ本たち(秋をかみしめた10月分)
もう11月。こわい。
……最近、こういうことしか言っていない気がする。先月も「もう10月だなんておそろしい」と書いていた。こわいのは時の流れじゃなくて自分の脳内だということにやっと気づいた。今年もあと2ヶ月、後悔のないよう突っ走る所存である。
『書く仕事がしたい』 佐藤友美
「読んでなかったんかーい!」とツッコまれそう(誰に……?)な、ライター界隈では有名な一冊。平易な言葉が連なる親しみやすい文体だからか、内容がすっと頭に入ってくる。
読み進めるうちに、昔、職場の先輩にさっぱりした気質のかっこいい女性がいらしたのを思い出した。佐藤友美さんはその方に似ているなあ、と勝手に思う。後輩ライターたちにエールを送るような調子が心地好く、最後まで一気読み。
こんなに行動力がない私は、すべてを真似するわけにはいかない。けれど、いろいろとエッセンスをつかめた気がする。
『52ヘルツのクジラたち』 町田そのこ
テレビドラマを観ている気分になれる作品だった。登場人物のキャラクターがはっきりしていて、導入部から中盤にかけてスピード感がありながらも丁寧にストーリーが進んでいく。
この世には、声にならない声を発しながら生きる人がいる。もしかしたら私もそうかもしれない。隣にいる人もそうかもしれない。
自分の声を受けとめてくれる人を求めて生きる人は多いんだろうなあ、と思い、じわっと涙ぐんで最後のページを閉じた(朝のドトールで!)。久しぶりの小説時間は楽しかった。
『アイデアのつくり方』 ジェームス・W・ヤング
広告関係の方にとっては古典とも言える本。アイデアとは、斬新なひらめきが突如として頭のなかに降臨するわけではないことを教えてくれた。アイデアを形にするためのいくつかの行程についてもわかりやすく書かれている。
アイデア創出とは「頭に電気がビビビッと……!」きて起こるものだと考えている私みたいな人はぜひ読むべきだと思う。短時間で読了できるので、ほんとうに、ぜひ。
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』 ブレイディみかこ
読もう読もうと思っているうちに文庫になってしまっていた。
英国ブライトンで暮らす筆者が、息子の成長を通じて社会の課題やひずみを見つめるエッセイ集。……と私が説明するまでもないヒット作だ。ブレイディみかこ的視点に立てば、子育てと社会はすんなり地続きになる。中学校のクリスマス・コンサートから貧困層の悲しみと希望が浮き彫りになったように。
私は子育てに専念していた2年間、社会と隔絶された気持ちになっていたけれど、案外そうでもなかったのかもしれない。
『世界はなぜ地獄になるのか』 橘玲
私にはないシニカルな視点があって、ときどき無性に読みたくなる橘玲の本。本屋さんで平積みになっていたので思わず手に取り、レジへゴー。
世の中はどんどんリベラルになっていくのに、なぜ生きにくさも増しているのか。それをキャンセルカルチャーの側面から読み解こうとする一冊。「自分らしく生きたい」が生み出す理不尽や、大衆の狂気があぶり出されている。
ジャニーズ性加害事件をはじめ、世間の注目を浴びる(浴びた)事案を多く取り上げているため、理解しやすい。ただ、本書の内容全体に諸手をあげて同意できるかと問われれば、人によって答えは違うだろうと思う。
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読書の秋。ずいぶん涼しくなった空気を味わいながら本も楽しみたかったけれど、それほど読めなかった。ダニエル・ソカッチの『イスラエル 人類史上最もやっかいな問題』はまだ読んでいる最中で、リストに加えられなかった。ところどころ気になったポイントで調べものをしているので、なかなか読み進まないのだ。
とにかく、マイペースではあったものの秋をかみしめつつ読書も少しはできた。いいひと月だった。
11月はなにを読もうかな。
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