こわがる君への処方箋
「ヒュドラって、今もおるん?」
このあいだの夜、次女が唐突に言った。
ヒュドラ。ギリシャ神話に出てくる怪物のことだ。9つの首と不死身の生命力を持つというから恐ろしい(首の数については諸説あり)。
先月、旅行先で立ち寄ったプラネタリウムには、星座のなりたちを解説するコンテンツがあった。その中で、ヘラクレスがヒュドラを退治する場面も語られていた。
なぜか次女は、ヒュドラ退治の場面を思い出して怖くなったらしい。ヒュドラの絵を見たわけではないけれど、首がわんさかある怪物と聞いて「怖いもの」とインプットしたのだと思う。
「なーなー、ヒュドラって今の時代にはおらんの? ほんまにおらんの?」
怖さのあまり(?)、確認を重ねてくる。
「まあねー、神話に出てくる怪物だから、実際にはいないと思うよー」
わたしがいいかげんに答えると、次女は少し安心したようだ。そのまま久しぶりに『あらしのよるに』を読み、眠った。
うちの双子の娘たちは、かなりのこわがりだ。
1年ほど前、『アナと雪の女王2』を観せたときも、途中のシーンが怖いと言って、視聴をやめてしまった。暗い森の映像に怯えたらしい。せっかく購入したブルーレイなんだから観てほしいのだけど。
今まであまり刺激的な番組や映画に触れてこなかったからだろうか。いや、そもそも彼女たちが怖がるから観せてこなかったのだ。いや……。鶏が先か、卵が先か。……どっちもだよ。
ただ、小学校に入学したことだし、これからの彼女たちはママのいないところで未知のものにもいろいろ出会うだろう。そのうちに、やたらと怯えることも減っていくはずだと期待している。
せっかくの面白い映画やコンテンツ、わたしは早く娘たちといっしょに楽しみたい。彼女たちが少しずつ世界を広げていって、もう少しだけ「こわがり屋さん」でなくなる日が待ち遠しい。
こわがり屋さんから、「ちょっとだけへっちゃらさん」へ。小さなステップが二人を待っている。
まずはたくさんの刺激に触れてみて、自分たちの目でたくさんのものを見て、すべてを怖がる必要もないんだと実感すること。それが新しい世界への扉になりますように。
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