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あだ名の変遷

大学時代の後輩からメッセージが届いた。

「姉さん、元気? あのさ……」

姉さん。懐かしい。若い頃のわたしを「姉さん」と呼ぶ人がときどきいた。なぜかわからない。当時のわたしはなにかしらお姉さんかぜを吹かせていたのかもしれない。年子の妹とコンビ扱いされることもあったから、区別する意味で「姉さん」と呼ぶ人もいた。メッセージをくれた彼は後輩なので、わたしはほんとうに1歳年上のお姉さんでもあった。

これまでの人生の前半は、あだ名をつけられることがわりと多かった。「それ、どうなの?」とツッコみたくなるものも含めて。

中学・高校時代は「よぼ」と呼ばれていた。体が弱く、よく学校を休んでいたからだ。中学1年か2年の運動会は肺炎で入院していて、欠席だった。そんなわけで、よぼよぼの「よぼ」と名づけられた。学年に1クラスしかないコースにいたため、問答無用で中高一貫クラス。あだ名は高校卒業までついてまわった。

晴れて大学に入学したら、「お嬢」というあだ名がついた。わたしがカップ焼きそばのつくり方を間違えたところ、「もしかしてインスタント食品を食べたことのないお嬢様なんじゃ……?」という誤解を招いてしまったのだ。

その後、当時流行していた「可愛ゴー(かわいくてゴージャス、の略?)」と呼ばれるJJ系ファッションにのめり込んだわたしは、誰の目にも派手派手しく映ったようだ。山の上の大学に通うのにいつもピンヒールにタイトスカート、ヴィトンのバッグという装いでいたら、「チーママ」というあだ名をいただいた。不本意ではあるものの、なんとなく笑えるのでよし。カラオケに行くと、歌が下手なのにもかかわらず「よっ、チーママ!」というかけ声が上がった。

あとは、初めてできた彼氏の親友にずっと「こびと」と呼ばれていた。身長が低いからだ。150センチ台前半のわたしは、背の高い彼らからしたら小人こびとにしか思えなかったのかもしれない。まあまあ屈辱的なあだ名である(いや、どれもそう……?)。

会社員時代の初期はやはり小柄なことから「ミニ子」と呼ばれた。今なら絶対にアウトなネーミングだけれど、これも時代だろうか。

気づけばいつのまにか、あだ名をつけられなくなっている。人を無神経に「いじる」文化が衰退したのは喜ばしいことだ。変なあだ名をつけられて平気でいたわけではない。

ただ、自分が人に距離を置かれる存在になりつつあるのなら、それはそれで寂しいなあ、と思う。キュートでビューティフルなあだ名なら、大歓迎です。

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