『箱男と、ベルリンへ行く。』(八)
「ストライク・ジャーマニー」(2)
唐突に、ここで『箱男』の話をしたいと思います。
小説『箱男』には段ボールを被って街を徘徊する男が登場します。
箱を被ること、それがなにを意味するのか、すでに様々なところで語られている、「見る=見られる」という関係からの逸脱です。
この社会は、我々が完全なる客体であることを許しません。見ていると同時に見られている参加者たらねば社会の構成員として見なされません。わたし達はつねに、視線をさらし、視線にさらされています。それが社会に登録される宿