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娘の夫くんが、私の息子になったな、と感じたとき

あんなに緊張していたのに、なんだろ、この息子感は。

結婚の挨拶の時、あまりの緊張で、お互いにケーキの上に乗っているイチゴのヘタを出せずに、飲み込んだ仲だった長女の夫くん。


あの日から約2年。

彼はほんとに息子になったんだな、と最近感じている。



長女と夫くんが結婚してからも、やっぱり私も夫くんも「よそいき」だった。
彼が来る日は、少しだけきちんとした格好をして。
ちょっとお互いに遠慮しながら、言葉を選ぶような。

しかし、長女たちに赤ちゃんが生まれてから、その緊張感が緩んできている。

今、娘は産後の里帰りで我が家にいるので、毎日のように、夫くんがうちに来てくれている。
一緒に夕飯を食べたり、たまには彼も泊まっていったりするうちに、お互いによそいきでは難しくなってきたのだ。

風呂上がりも、寝起きも、私は彼の前で、普段の適当おばちゃんを丸出しにするしかないし。

ご馳走ばっかりも無理だから、今日はカレーだけでごめん、ぶつ切りぽりぽり胡瓜も付けとくから、みたいな日もあるし。

赤ちゃんをあやすために、抱っこしながら古い歌を歌いまくる私を彼に披露したり。
彼が、暴れる赤ちゃんのオムツを替えるのを、私が熟練の手際で手伝ったり。

そうしながらお互いに、よそいきの壁が少しずついい具合に崩れていった。


何を作っても美味しい、美味しいと食べてくれる夫くん。
これまでは嫌いなトマトも無理して食べるくらいに気を遣っていた彼が、ある夜、冷奴にポン酢をつける派の我が家で、

「あ、僕は醤油がいいんですけど。」

と、そんな主張をしてくれるようになった。
私はそんな彼に、嬉しくなった。
その瞬間、あ、私の息子だな、と思えたのだ。

夕飯の後に必ずリビングの床で寝てしまう夫の横で、最近では彼も、見事に爆睡するようになった。
2人仲良く並んでうたた寝するお疲れなメンズたち。
寝息が時々ハモる。
そののんびりした景色を、私は長女といつもクスクス笑って見ている。

パパによく似た赤ちゃん抱っこしながら、ソファでこっくりこっくり居眠りしている彼を見ていると、赤ちゃんの頃の長女と夫が重なって、じんわりと懐かしい日々が蘇る。
危うく母乳が出そうな気持ちになったりして。
なんつって。

もう夫くんとは、完全にいちごのヘタを出し合える仲になったな、と思う。



けれどもそんな私は、実は夕方、彼がうちに来る直前に、こっそり化粧を直している。
これは、内緒。
そこは、緊張とかではなくて、乙女心ですから。



諸事情があって、長女と赤ちゃんは連休明けまで我が家にいることになった。
夫くんもほぼ毎晩やってくるだろう。

冷奴を夕飯に添える日は、これからはちゃんと、お醤油も食卓に出しておこうかな、と思っている。





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