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マイルールと嫁ちゃんのビンタ

ぼくが嫁ちゃんに興味を抱いたきっかけは
「本を読む人」だと分かったとき。
ぼくは本を読む人が大好きなのだ。

そこから話をするようになって驚いた。
嫁ちゃんは数百冊も小説を読んでいる人だった。
マジかよ、こんなゆるキャラみたいな見た目で。

ぼくも“自称”読書家のはしくれ。
なんだか負けられないもんね病がむくりと発症。
ぼくだってこんなに読んでるんだと張り合った。

しかし撃沈。付け焼刃では歯が立たない。
ぼくは負けを認めて嫁ちゃんの軍門に下った。
井の中の蛙大海を知らずの意味を知ったあの日。

・・・

ええっと、マイルールの話です。

みなさんはマイルール、ありますか?
ぼくはあります。めっちゃあります。
たとえば今のマイルールの一例としては…

・嫁様を他人に自慢する(惚気る)
・妄想にふける時間を大事にする
・美味しい食べ物にはお金を使う

どうでしょうこの自分勝手さ。
でもいいんです、それがマイルールだから。

誰だってこういうマイルールをひとつやふたつ
持っているんじゃないでしょうか。

ぼく、小学生から続けていたマイルールがあって
・本は冒頭からあとがきまで全部読む
ということを自分に強いていたんですね。

本が好きだし、言葉を紡げる作家が凄いと思うし
たぶん敬意を払いたかったんだと思うんですよ。
「読み漏らすなんて作家への冒涜だ!」的な。

これこそが読書!
これこそが本を読むということ!
ぼくこそが読書家であり作家の理解者なのだ!

なーんてことを勝手に思っていた気がします。

こんなことを続けていたらあら不思議。
「ぬるい」読書をしている人を見つけると
人として格下に思ったり、時には非難したり。

いつの間にやらぼくは変わっていました。
妙なプライドで心がねじ曲がった偏屈野郎の
一丁上がりでございます。

そんな社会不適合者待ったなしのぼくに
強烈なビンタを喰らわしてくれたのがそう
嫁ちゃんであります。

ぐうの音も出ないくらいに見せつけられた
圧倒的な読書量の差にぼくの心は瓦解しました。

上には上がいる

本当に、嫁ちゃんに出会ってよかった。
あやうく人を鼻で笑うのが日課のとんでもなく
しょぼいザコキャラとしての人生を歩む所でした。

さて、嫁ちゃんの軍門に下ったぼくは尋ねました。
どうしたらそんなに読めるのか?と。
嫁ちゃんの読書スピードが異常だからです。

「同時に三冊とか読んでるから」

嫁ちゃんはサラリと言いましたが
ぼくの頭に電流が走った記憶があります。

(なんだ?何を言ってるんだこの女は)

ぼくは一冊の本を読み始めたら、読み終えるまで
他の本を決して読みませんでした。
一つのストーリーに没頭するのが楽しいし
他の本を読んだら「浮気」だと考えていたから。

それを、この嫁ちゃんは、三冊同時読み??
そんな読み方ぼくの辞書に載っていなんですが?
ぼくの心はまたもや崩れ去りました。

人間って一度崩れると面白いもので
過去のなんでもない記憶が蘇るんですね。

「読書なんて、好きな所だけ読めばいい。
つまらない所なんて飛ばしていいのよ」

いつかどこかで見た『本の読み方』の記憶が
なぜか蘇ったんです。

ああ、そうか、読み飛ばしていいのか。
一字一句冒頭から最後まで読むことはないのか。
なんでこんなマイルールを強いていたんだろう。
よくよく考えてみれば窮屈なルールでした。

でも、嫁はそんなルールを守っていないのに
ぼくよりずっと楽しく読書を謳歌してきた。
ぼく以上に沢山楽しい書籍と出会ってきた。

(うーむ、そういうのもアリなのか)

ぼくの心は砕けたけど、砕けて出来たスキマに
新しい言葉を入れることができたんです。

・・・

マイルールっていうのは
その人をその人たらしめている「個性」だと
ぼくは思っている。とっても大事なものだと。
だから、簡単に変えることなんかはできない。

でも、自分でも気付かないうちに
妙なマイルールを強いていることもあるので
時には立ち止まって見直せるゆとりがあると
いいのかなって思いました。

時には自分のマイルールにビンタしてくれる
おもしれー人との出会いもあるんだから
人生ってのは面白いです。


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