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おせっかい

私が働いているクリニックに常連さんがいる。
病院なのに「常連さん」
病気で大変というわけではなく
クリニックにあるマッサージの機械を使うために
毎日のようにクリニックにやってくるのだ。


その常連さんは70代の女性で、息子と旦那と3人暮らし。
息子が2人いるのだが、「女の子が欲しかった〜」とよく言っている。

それもあってか、私のことを「孫だ」と思って接してくれているらしい。

私は1人で新卒で知り合いもいない福井県にやってきた20代。
生活のことを色々気にかけてくれる。
「今日の晩はカレーなんや。食べるか?」
「食べる」と言うと
「仕事帰りに取りに来て」
自宅に伺うと
タッパーに詰められたカレーと、サラダまで用意して玄関で待っていてくれる。
「レンジでチンして食べね」

とてもありがたい。
1人暮らしをしていると人が作るご飯を食べる機会がほとんどない。
人のあたたかさを感じることができ、嬉しい。


頂き物のナスを天ぷらで食べたかった私。揚げ物を1人でやる自信はない、と呟くと
作ってくれた。しかもかき揚げのおまけ付き。


昨日も
「焼きそばいっぱい作ったんや。食べるか」と言われ
仕事終わりに取りに行く約束をしていた。

帰り道、なんとなくまっすぐ家に帰りたくなくて
遠回りして帰っていた。家に帰っても1人なのに1人になりたくて。


すると電話が鳴った。なかなか来ないから忘れていると思ったのだろう。
「まだ来んのか、もう家着いちゃった?」
「あ、いや。まだ仕事で」
「さっきクリニックに電話かけたらもう帰ったて言ってたよ」
「あ、、、。今帰り道で。あと数分したら行きます」

なぜか、つかなくてもいい嘘をついてしまった。
なんとなく遠回り、を知られたくなかったが故の咄嗟の嘘。

「ごめんなさい、遅くなって」
「なんか元気ない」
「そうですかねえ、、、。」


確かに元気はなかった。
けどこれ以上触れてほしくなくて、

私のために用意して待っていてくれたのに
すぐに帰りたくなってしまった。


常連さんはこれ以上深く聞いてくることもなく

「いつもと作り方違うから、味はどうかわからない」
「レンジでチンして食べね」
「気をつけての」

いつものように見送ってくれた。


ほっとした。


誰かに気にかけてもらえるのは嬉しいと感じることがほとんどだが
放っておいてほしい時もある。

どんな時も同じようにいてくれる存在
この絶妙な距離感

程よいおせっかいに救われているのかもしれません。

※見出しの画像はいただいた手作りポーチ。
素敵な縁があるようにと渡された50円玉とともに

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