夜の淵についての断章

こうやってずっと歩いてきたんだね おだやかな夜の淵、ウロボロス

折り紙の谷をゆっくりくだりつつ夜(よ)のやわらかい雨を思った

昨日とは風がふかない丘でした フルーツオレの蓋開けながら

吃音のノアを思えり毎日はただ音もなく過ぎてゆくから

逃げ切りをはかった馬がゆっくりと馬群へ沈む お前が好きだ

夜の淵ってあるのかな(あるよ)ぼくはいまことばの決定権を駆使して 

ロードレースの自転車つぎつぎ出発をしてここからが夜の始まり

深夜バスに乗り込むひとらつぎつぎとぼくもぼくから出発をしたい

私から言葉は始まり旅をして言葉はやがて私に還る

いっせいに夜開く傘 そうきっとわたしの死後もことばは続く 

               初出:ネットプリント「gekoの会vol.10」 gekoの会さん発行(発行日不明)5月?

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