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【科学夜話#13】「我思う故に我あり!」ではなかった?

「自由意志」に関するベンジャミン・リベットの実験は有名ですが、初めて聞いたときは衝撃でした。
 この実験結果は、私たちが自分の意志でこうしようと「思う」よりも速く、脳内でこうしなさいという筋肉への「命令」が出ていることを示しています。
   
 我々は自分の意志(自由意志)で決定し、思うように体を動かしているのではありません。脳が情報を分析して判断し、体を動かすように命令を発した後、逆に意識が追認の形で「命令を発したと思い込む」らしいのです。

 このことは、他者にある行動を起こすよう誘発すれば、その人の「意識が追認する」ことで、他者の意識を操ることができる、ということにもなります。
(スピリチュアル要素はなく、脳の情報処理のお話です)

生物は電気信号で動くロボット?

 死んだカエルの足に電気を流してやると、動く(痙攣する)ことはよく知られている。
 また頭頂のさまざまな箇所に電極を付けて、電気信号を計測することでどの部分が、どのような意志決定に関与するかもわかってきた。

 私たちの脳の活動は、電気信号が交わされることで成立している。
 こうした信号を、脳の各部でやりとりすることで「意識」が生まれ、意識に基づいて「行動」の方針が決定され、筋肉に電流が流されて具体的な「動き」になる。

 つまり、「腹減った」⇒「冷蔵庫にケーキがあったはず」⇒「ケーキを食べるために冷蔵庫を開けよう」⇒手を冷蔵庫の取っ手に伸ばす。
 という電気信号の順番だと、全ての人が思っていたはず。

 それがそうじゃなかった! 
「脳が無意識下で血中の糖分低下を感知」⇒「無意識下で食べ物を速く入手する方法を検討」⇒「無意識下で、冷蔵庫のケーキの記憶を引き出す」⇒「脳が手を冷蔵庫に伸ばすよう、筋肉に電流を流す」
 この一連の動作ののち脳が『自己意識』に対して、「ケーキを出すために手を伸ばしたと思い込め!(意志の自覚)」と指示を出す。そののち、手が動く。
 こうして私たちは、「自分が意識した結果、手を伸ばした」ように思い込む、というのが真の姿だった!!!

 つまり『自由意志』はなかった。こんなの信じられます?

「思う」より速く「行動」していた!

 カリフォルニア大学の生理学者ベンジャミン・リベットは、被験者の脳に電極を装着し「指を曲げる」と意識した時刻と、筋電図による「指よ曲がれ」という指令が脳から出た瞬間を計測した(1983年)。

 その結果、被験者が「指を曲げよう」と意識するよりも、平均で0.35秒前に、筋肉への指令が出ていることを計測した。
 書き間違いではないですよ!
 脳波を計測して、指を曲げる「意志」決定の瞬間を捕らえたところ、それより速く、すでに筋肉には指を曲げるための指令(筋電位の変化)が出ていたのだ。

 自由意志で体の動きを決定するよりも、無意識下の指令の方が先行していたわけだ。条件反射的動作ならまだしも、ゆっくりと意志決定して指を曲げる動作のとき、にである。

 行動がすべて無意識に律されているのなら、なぜ「自己意識」というものがあるのだろう?
 無意識の指令が出された後、我々の意識のほうが遅れて「指を曲げよう」と思った、という自覚的な感覚が芽生える。
 だから私たちは無意識ではなく、自分の意識が行動を決めているんだ、と思い込む。実は私たちの意識には、なんの決定権もないと言うのに。

 あまりにも矛盾なく意思決定している自分を感じるため、人は「意識」のことを、判断を下す司令塔のように感じているのだ。

最近の実験による確認

 そうは言っても、なにか実験的な間違いじゃないの? 自分は自分の体を支配しているよ、と思う人は大勢いるだろう。

 ダメ押しをするようだが、2008年にヘインズらは機能的磁気共鳴画像(fMRI)によって脳をスキャンする実験によって、これを確認した。
 被験者は、目の前にあるボタンを左手で押すか、右手で押すかを判断する。
 このとき、脳スキャナーで無意識領域の活動を読み取っていた科学者は、被験者が右手で押すか、左手で押すかを「自分の意志」で決めるより、7秒も速く、どちらで押されるかを読み取ることができた。

 ゲゲゲッ!という感じですね。
 テレパシーより始末が悪い。自分の考えを読まれているのではなく、自分がどう決めるのか、を先に知られてしまう。
 なによりも自分で決めたつもりなのに、自分が決めるより先に「脳」は何するか決めていた、わけですから。
 脳には守秘義務があると思うのだが、簡単に他人に読まれるなよ!

自由意志を操って「好き」にさせる!

 では逆に脳の無意識領域に働きかけて、脳の意志決定を支配し、相手の意識を自分の思ように方向づけすることはできるのだろうか?

 近年「吊り橋効果」をよく耳にしますよね?
 吊り橋上のような不安や恐怖を感じる場所で、行動を共にした男女は、ドキドキを恋愛感情と誤解して互いに好きになっちゃう、というアレ。

 これは実際に効果があることが、実験で確認されている。
 同じ効果をもつ薬を創れば、ラブ・ポーション(惚れ薬)として使えるんじゃないか。
 と思ったら、実際ありました。そういった商品。媚薬効果を謳ったサプリ。
 実際に使うとしたら相手に飲ませるわけで、同意なしにやって健康を害したら犯罪になりかねません。むしろ嫌われますよ。

 人間は意外と嗅覚に依存しており、ジュースを飲むときに鼻が効かない状態になると、味がわからなくなる。
 なので香水というものがあるのだが、より確実に相手をドキドキさせる調香は可能だ。それを使えば、ターゲットに吊り橋効果と同じ影響を与えることができる。
 もし調合法を知りたければ、ここから先は有料ということで。。。
 

 人間の意識というものは、簡単にダマされるようですね。
 鏡を使った錯覚、錯視などオドロキの効果があります。

 ノーベル物理学賞をとったファインマンが、エッセイのなかで幽体離脱のやり方を述べていました。
 本当に幽体離脱するのではなく、どうしたら意識が体から離れるように感じるか、のやり方です。

 大がかりな装置を使わない方法でやってみると、本当に自分の意識が体から離れていきそうな、不思議な感覚に囚われました。まあ、自己催眠のようなものかもしれませんが。
 オススメはしませんが、自己責任でやるなら止めはしません。

#自己意識 #自由意志 #ベンジャミンリベット #fMRI #媚薬



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