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【映画の噺#3】リメイク最強「監視者たち」

『監視者たち -COLD EYES-(原題:감시자들)2013年 韓国)』は、2007年公開の香港映画『天使の眼、野獣の街』(原題:跟蹤、英題:Eye in the Sky)のリメイク作品。
 韓国警察の行動監視班にスカウトされた、新人女性刑事ハ・ユンジュ(ハン・ヒョジュ)を始めとする、行動監視エキスパートたちの活躍を描いています。
 日本でも組織犯罪の実行グループと指示役が話題になりましたが、行動監視班は実行犯を追尾して、指示役を捕まえる役割を担います。
 元作品に忠実ながら、犯人像を膨らませた本作は、とにかくスタイリッシュでカッコイイ。
 リメイクはこうあるべき、という作品の魅力を語ります(ネタバレなし)。

(見出し画像:'Cold Eyes' Remake: A Rockin' Remake of 'Eye in the Sky' - Variety)

行動監視班とは?

 実際に韓国警察にこのような部署があるのか知らないが、行動監視班の任務は特殊だ。
 組織犯罪では末端の実行犯を捕らえても、組織を潰さない限りまた犯罪が繰り返される。そこで実行犯を泳がせ、常時監視することで組織のメンバーを特定し、全員逮捕(一網打尽)に漕ぎ着けるのが、行動監視班の役目。

 行動監視班にスカウトされた新人女性刑事ハ・ユンジュ(ハン・ヒョジュ コードネーム:子豚)は、完全記憶(超記憶症候群 (hyperthymesia))の持ち主。
 この若い女性刑事と、班長のハン・サンジュン(ソル・ギョング)、犯罪組織のリーダー、ジェームズ(チョン・ウソン)、完全記憶能力をもつこの三人を中心にすえた、頭脳戦の攻防が描かれる。

Image Souse=https://www.screendaily.com/cold-eys/5058888.article

原作に忠実リメイク

 この作品の元になったのは、香港映画の『天使の眼、野獣の町』。英題の”Eye in the Sky”が顕す『天網恢恢(てんもうかいかい)』の如く、行動監視班は天の眼という機能を果たす。

 リメイク版の『監視者たち』は、行動監視班が使う尾行の小技、同じエレベーターに乗り合わせた場合のテクニックなどを含め、忠実に再現している。
 ただ、敵役のリーダーのキャラが膨らませてあり、現場のリーダーさえ組織の都合に左右される、という事情が描かれて厚みが増している。

Image Souse=https://www.soompi.com/article/1045573wpp/han-hyo-joo-surprises-fans-with-a-completely-different-look

ハン・ヒョジュがキュート!

 実は韓国映画はこれ以外に、『猟奇的な彼女(原題:엽기적인 그녀)2001年 韓国)くらいしか見たことがない。

 韓国アクターの欧米風のオーバーアクションに、同じアジア人として違和感を感じるからだろう。その点、ヒロインを務めるハン・ヒョジュは演技が自然で、違和感がない。
 ただ、こんなカワイイ女子があとを尾けてきたら、目立ちまくるだろう。

 冒頭、ある男の後を尾行するハ・ユンジュと、犯罪計画を実行するジェームズの姿が並行して描かれる。
 ユンジュが尾行していたのは、行動監視班の班長サンジュンだった。

 これは、彼女の能力を測るテストだったのだ。詰めに失敗して「不合格?」と不安そうに訪ねるユンジュに、班長はファミレスで結果を告げず立ち去ってしまう。
 ふと思い付いたユンジュが、班長の紙ナプキンを鉛筆で擦ってみる。やがて彼女の顔に笑みが。
 そこには「合格だ!」という文字が浮かび上がっていた。

 このように、スタイリッシュでカッコイイ演出が各所に見られる。
 行動監視班は、みな動物のコードネームをもっており、作戦行動は「動物園、開園!」という室長の声で始まる。
 ヒロインのユンジュは「小鹿」というコードネームを希望したが、「子豚」にされてしまった!?

イラストACより

リメイクかくあるべし!

 英題”Eye in the Sky”は、行動監視班を「天の眼」と喩えている。
 しかし、これはもうひとつの比喩でもある。

 犯罪組織のリーダー、ジェームズは、標的の近くにあるビルの屋上から警察の動きなどを監視し、実行犯たちに指示する「天の眼」の役割を果たしていた。
 このやり方で、彼は政治家が抹消したい文書の盗み出しなど、依頼された「業務」を確実にこなしていた。

 行動監視班の規律(任務は監視のみ。いかなる場合も監視対象には接触しない)に反発しながらも、新人のユンジュは確実に成長していく。
 そして、完全記憶能力をもつ班長サンジュンとユンジュが、ジェームズを追い詰めるのだったが・・・
 敵のジェームズもこの能力を持っており、この三人による頭脳戦は思わぬ展開になっていく。

 このように経験したことをすべて記憶して、のちに細部に渡るまで思い出すことができる能力を、超記憶症候群 (hyperthymesia)」と言う。つまり病気の一種。
 ほかにも、見たものを瞬間的に記憶できる「カメラアイ」や、他の分野で障害があっても特殊な能力を発達させた「サヴァン症候群」などがある。

 その記憶メカニズムは解明されていない。またこうした「忘れることができない」ことには、デメリットもある。
 人生なんて、忘れたいことだらけですもんね。

 リメイクは元の作品が良いからこそ、作り直されるわけです。
 だから、前の作品に愛着があるひとも見るわけで、採点は辛くなりがちです。
 そんななか「監視者たち」は、元作品をあまり変えずガジェットは近代化しています。さらに悪の組織にも事情がある、という相手側のキャラを深掘りすることで、厚みが増しました。

 最近では日本の名作「カメラを止めるな!」も、フランスでリメイクされたようですが、怖くてまだ観ていません。

#リメイク #監視者たち #cold eyes #EYE in The Sky #天使の眼、野獣の街  #完全記憶 #超記憶症候群

 


 

 
 
 
 


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