見出し画像

【犬噺#4】犬の起源を追跡してみたら・・・

『神の慈悲が犬を創り、神のいたずらが猫を創った』と言われるように(?)、犬は人間の良き友、良き隣人、良き相棒です。
 犬は分類学的に狼の一種で、その始まりは「狼を飼い慣らしたことによる」と言われます。
 人に飼い慣らされた狼が、いかにして犬になっていったのか? 人と犬との係わりについてもトレースしてみました。

(見出し画像はSarah RichterによるPixabayからの画像

นัธทวัฒน์ วสันต์กนกพัชรによるPixabayから

狼と犬は同一種?

 人に懐いた狼が「犬」なら、狼と犬に生物学的な差異はないのだろうか?
 犬の世界には学者というオタクが多くて、人の数だけ説がある。
 そもそも分類学上の「種」の定義が人の数だけあるのだから、犬と狼が同種かなんてのは謎、と言うしかない。これが結論???

 オタクはみな器が狭小で、他人の説に耳を貸さない。
 私などは心が広いので、ガンダムは一年戦争を扱ったファーストしか認めていない。
 それ以外は、ガンダムの名を冠したプラモのプロモーション・ビデオだと公言してはばからない。オリジンすら異端とみなす原理主義者だ。

 犬の世界もガンダム界と同様に、カオスが支配している。
 そもそも犬と狼はどちらもネコ目イヌ科イヌ属。所詮は猫の支配下にある動物なのだ?

 狼と犬は交配して子どもを得ることができ、さらにその子どもにも生殖能力がある。
 これは狼と犬が、非常に近縁であることを意味している。

染色体の模式図

交配を可能にする染色体

 遺伝子の本体はDNAだが、『種』という区分けに重要な、交配して子どもができるか?には染色体が大きく関与する。DNAのミクロな性質だけでなく、染色体や生殖細胞のマクロなふるまいも影響するのだ。

 染色体はDNAが規則的に折りたたまれたもので、細胞核の中にあって凝縮すると「X」や「V」の形になる。
 生物はこれを、父方と母方から1セットづつ受け取って2セットを保持する。そのため子は父と母と似ていながら、双方の特性がシャッフルされた特徴を受け継ぐのだ。

 遺伝子には、機能的に連携しているためバラしてはまずいユニットがあり、これが同じ染色体上で共に行動する。シャッフルすることができる遺伝子は、別の染色体に乗る。

 犬と狼の染色体数は、共に78本。
 
減数分裂で半数の1セットになった染色体が、精子と卵子となって結びつき、新たな生命の誕生が可能になる。

 馬の染色体数は64本。ロバの染色体数は62本。
 数がちがうが馬とロバは交配可能で、掛け合わせると一代雑種(F1)ラバ、ケッティが生まれる。しかしこの一代雑種は、減数分裂で生殖細胞を作れないので、その次の世代が生まれることはない。

 ライオンと虎は共に染色体数が38本。
 交配して一代雑種のライガーやタイゴンが生まれる。しかし次の世代はやはり生まれない。
 交配には精子が、卵子の中に入る必要がある。
 精子は卵子の周囲にある卵丘などのガードを、酵素反応によって突破するが、この酵素が合ってないのだ。

 こうして見ると犬と狼が交配可能で、その子どもも生殖可能というのは、相当な近縁、いや同種だとわかるだろう。

 ちなみに猫の染色体数は38本。
 ざっくり言うと、猫の染色体をばっさり二つに割ったのが犬の染色体。 
 38×2+性染色体2=78が犬の染色体数という計算だ。
 犬は猫神さまのアバラの骨から創られて枝分かれし、染色体が細切れになった分、大きさや形態にバリエーションができた。

 猫はすべての生物の頭上に君臨するのだ!!!

狼と犬を分けるもの

 犬と狼の遺伝子が詳細に解析され、どの犬の系統がより狼に近いかも調べられた。それによると、柴犬はもっとも狼に近い血統になるらしい。

 犬と狼の子をウルフドッグと言うこともある。また犬はコヨーテと交配してコイドッグ、さらにディンゴ・ハイブリッドやジャッカル・ハイブリッドも生まれる。

 日本人は由緒のある、ケンネルクラブなどの権威に弱く、かつ科学は悪だとNHKによって刷り込まれている。
 したがって、生物学や遺伝学などの忌まわしき学問は意味を持たず、ジャパンケンネルクラブの御宣託のみが真実なのだ。
 それによれば、日本でのウルフドッグはアラスカ、カナダなどの交雑種で、人権ならぬ犬権など認めがたし、とのことだ。

 狼と犬を分けるのは、結局ヒトの考え・思い込みなのだ。狼も幼い頃から人に慣れればよく懐くし、犬でも野犬は人と距離をとることが知られている。

犬の起源とは?

 犬の起源が、人が狼を飼い慣らしたことにあるのなら、その経緯は人の歴史の中にあるはず。

 犬は灰色狼(タイリクオオカミ:Canis lupus)、そして絶滅種のタイミル狼(ロシアにいた狼)が、共通起源の先祖から3万~4万年前に分かれた歴史があることが示唆されている。

 チェコ共和国で見つかった、約2万7000年前のマンモスの骨で作られた小屋跡の発掘現場からは、マンモスの骨を口にくわえさせるような格好で埋葬された、初期の犬の遺骨が見つかっている。
 地球がほとんど氷で覆われていた1万4000年前から2万9000年前、ユーラシア大陸北部で、犬(狼)と人との係わりが始まったらしい。

 氷期の過酷な冬の間は植物が乏しく、獲物は痩せていて、その肉は脂肪の少ない赤身だった。ヒトの肝臓はタンパク質の代謝能力が弱く、過剰な赤身肉は中毒の原因にもなる。
 そこで余った肉を狼に与え、共に暮らすことでウイン-ウインの関係性を築いていった。
 この時期に人の狩猟能力が上がって、マンモスの減少が始まって絶滅に向かい、犬が爆誕することになる。

 現在の人と犬の遺伝子を比べると、セロトニンの伝達やコレステロールの代謝やガン遺伝子などに多くの共通性がある。
 人と犬は、生活が密接に繋がっていたので感情や代謝、病気が遺伝子レベルで似てきたのだ。つまり人と犬という「生物種」が確立する頃から、共に手を取り合って生きてきた、と言える。

 現在の犬と現在の狼は、単純に共通起源の祖先から枝分かれした歴史をもつのではなく、環境への適応による形態変化と再度の交雑による形態変化を繰り返している。
 犬と狼は自然状態でも交雑し、遠ざかっては近づく、という関係性を繰り返しながら現在に至っている。

 現代の人と犬の関係の進展は、ワーキング・ドッグの多様性からも窺えるようです。
 ワーキング・ドッグとしての盲導犬や聴導犬だけでなく、セラピードッグの訓練を受けた犬たちによって、癒やされる高齢者の方も多くなっています。

 その一方で犬の寿命が延びたことや、無秩序なブリーディングによって、癌やその他の病気を患う犬の介護の問題も浮かび上がっています。
 犬と人の絆は、これからも変化しながら深まっていくことでしょう。

#犬 #狼 #犬の起源 #染色体

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?