見出し画像

チームに大きな価値をもたらすマイルストーン

コブ山田です。

ようこそいらっしゃいました。

今回は、ロールモデルになるプロ野球のベテラン選手について、記します。

2023年08月26日(土)バンテリンドームナゴヤでの横浜DeNAベイスターズ戦にてNPB通算2,000本目のヒットを放った中日ドラゴンズ大島洋平。
38歳になるシーズンになりベンチスタートの機会は増えましたが、それでも出場試合数は114を記録しました。
レフトでスタメン出場する機会も多く、主力選手のひとりと言えるものでした。

そんな大島はそのオフの契約更改の席で、こう言いました。

「シーズン中、今の若い選手を見ていて練習量が足りているか? 足りてないでしょ。何のためにやっているのかよく分かってないと思います」。

自身の後輩である若手選手たちに対し、練習量や姿勢にまだまだ伸ばせる余地があると発言しました。
私はすぐ思い出しました。2015年09月に和田一浩が現役を引退することになり、

「何やってるんだ! しっかりしろ! と言いたいですね」

と発言したことを。

和田一浩は自分を脅かす若手選手との競争という緊張感ある経験はあまりできず、それから08年経過した大島も似たニュアンスの言葉を発しています。

大島が不動のセンターだったころの監督である与田剛も、若手にはポジションを奪い取る気概で取り組んでほしいと発言していました。大島さん、平田さん、どいてくださいと。
例外的なのは02年連続でセ・リーグベストナイン、ゴールデングラブ賞を受賞し、背番号も主力選手と言える1を勝ち取った岡林勇希ぐらいのものです。与田の見立てが当たりました。

話を大島に戻しますが、最後の力を振り絞って通算安打数を2,000に乗せたわけではなく、2024年以降もしばらくは中日の1軍にて大きな存在感を示すはずです。
私が思い出したのは西暦2000年に安打数を2,000に乗せたあとも2002年までプロ野球選手を続け、卒業した福岡ダイエーホークスの秋山幸二です。その秋山がその後監督を務め日本一に輝いたように、中日球団としては大島洋平は簡単に手放してはいけない人物です。

さて、その福岡ダイエーホークスに秋山幸二と入れ替わりで入団したピッチャーが2023年オフも契約更改し現役を続けています。
それどころか2023年07月にはバンテリンドームナゴヤで登板。そう、交流戦ではなくオールスターゲームに選出されたものであり、106ビジョンの選手経歴欄に表示される"ダイエー"の文字が異彩を放っていました。
その男の名は、和田毅です。

その2023年オフの契約更改で、和田毅はこう発言したのでした。

「メジャーの世界は、マイナーの選手たちが違うユニホームでプレーしている。彼らのハングリーさを見ているので、それと比べると物足りないと思う。(ソフトバンクも)ユニホームを変えてもいいと思っている。せめて2軍の試合に出たくらいから着られるとか、神格化したユニホームにしてもいいんじゃないかと思う」

福岡に本拠地を置くパ・リーグ球団のベテラン選手も、名古屋に本拠地を置くセ・リーグ球団のベテラン選手も同じようなことを発言しているのです。若い選手にはもっともっと実力つけてほしい、プロ野球は本当は厳しい世界であり毎年毎年生き残る気持ちで過ごしてほしい、と。

育成選手はプロ野球選手じゃない、は大相撲が似た例です。"力士"という表現は序の口から使えますが、"関取"は十両以上です。
幕下以下だと場所手当しかもらえません。十両で関取と呼ばれ7ケタ以上の月給が発生します。
それに対し、プロ野球だと3軍でも1軍と同じデザインのユニホームで試合に出場できます。これだとNPBの育成選手は這い上がりたいという気も薄れてしまうのではないかということです。

また、これは和田毅が2011年の日本一をひとつの区切りとしてMLBに移籍して数年過ごしたから発言できることです。その後NPB復帰も古巣球団に戻ります。
中日で言うと川上憲伸です。それも川上以上に息の長い選手となっている。
見習うべきところがたくさんある素晴らしい野球人であり、福岡ソフトバンク球団も和田毅は大切に遇するものだと思っていました。

思っていました、と過去形にせざるをえなくなったのが、2024年01月11日(木)でした。

埼玉西武ライオンズが、FAで移籍した山川穂高の人的補償に和田毅を指名する方針を固めたというニュースが入ってきたからです。

『【西武】山川穂高の人的補償に和田毅指名へ 近日中に発表 ソフトバンクの顔が衝撃の移籍』

「西武がソフトバンクにFA移籍した山川穂高内野手(32)の人的補償として、和田毅投手(42)を指名する方針を固めたことが10日、分かった。」

と書いてあります。

私は記事を見て、

「はああああ!?」

と声を上げました。川上憲伸や大島洋平(大野雄大もそう言える実績になりつつあります)が他球団に人的補償で移籍したら激怒するはずです。それが福岡ソフトバンクに実際に起こっている。義憤を感じました。

ただ、その後、妙なことになりました。
発表された人的補償は和田毅ではなく甲斐野央だったからです。

正式発表前の報道が誤報だったのか、それとも正式発表の前に変更が生じたのかは噂レベルの情報しか入手できませんが、その一方で、埼玉西武球団が和田毅を求めた理由・背景も十分に理解できるものであり、出ている情報からどう考えても和田毅はプロテクトはされていなかったことになり、福岡ソフトバンク球団の失態だと思いました。

まず、2024年シーズンの埼玉西武においては、隅田知一郎、武内夏暉を筆頭に若い左ピッチャーが在籍していること。
特にこのふたりの名前を挙げた理由は、隅田は和田毅と一緒に故郷長崎県で自主トレを行っていることと、武内は憧れの投手として和田毅の名前を挙げているからです。

一緒にプレーできるとなれば、大きな財産になる可能性が非常に高いです。

続いて、2019年~2023年に在籍した内海哲也が残した功績も大きかったと見ています。
内海は2000年ドラフトでオリックスから1位指名を受けるも入団せず、その後社会人の東京ガスで実績を積み2003年のドラフトにて晴れて巨人に自由獲得枠で入団。その後巨人の先発ローテーションを守り抜き、相思相愛の巨人で幸せなプロ野球選手生活を送るものかと思っていたところ、2018年オフに炭谷銀二朗の人的補償に指名されます。
自由獲得枠入団し、その後NPBでは同一球団の主力投手であり続けたという点で和田毅と内海は似ています。

その内海は巨人にしか在籍しない人生を選んでもおかしくはないのですが、埼玉西武での選手生活を始めました。

巨人時代から変わらない日々の取り組みは、埼玉西武のチームメイトに好影響を与えます。

内海は2024年シーズンから巨人にコーチで復帰しますが、埼玉西武ではありがたがられていたことが伝わってきます。
ちょうどそのタイミングで他球団のベテランピッチャーを獲得できるのであれば、内海のような、内海以上の効果を和田毅に期待してというのは合理的なことです。

それだけに、私は、埼玉西武球団としては不本意であるも穏便に済ませた面もあると感じ、FA宣言移籍時の人的補償制度は広く巻き込んで設計を再考すべきだとも思いました。特定の属性の球団だけ違うルールが適用される事態はダメです。選ぶことが可能な状態で状態で選んだのに、ちょっと待てそれはないだろうと待ったをかけられても簡単には納得できません。
具体的には、まずはプロテクトリストをNPBに提出して完全なブラックボックス状態ではなくすこと。そのうえで、人的補償制度の代替を導入することになるのであれば、その場合はドラフト指名にて優先権を与えるなどです。

最後に

プロ野球FA宣言移籍時の人的補償制度の機能不全について書いてきましたが、一方で私が中日ドラゴンズ大野奨太選手(→コーチ)のFA移籍から自身のキャリア観に大きな影響を受けたとプロフィールに載せ続けているからには、2017年オフに流れた情報は知っています。
その点は私は残念な気持ちですし、中日球団フロントが特に必要な選手をプロテクトをしていれば発生しなかった話です。

当時はその後味の悪さに中日球団フロントに対して怒の感情が出ましたが、もうそれを教訓にしてもらうしかない、と思っていたところであの時と似たような話が出てきて、悲しい気持ちになりました。

私は今回のnoteは“マイルストーン”という言葉を選びました。
単純にマイルストーン、ロールモデルとなる一流選手への道しるべという意味が大きいのですが、加えてストーン、チームに鎮座する強固な石という意味もあります。
福岡ソフトバンクホークスの和田毅は、鎮座する石のような存在だと私は思います。

他球団から声がかかる実力・実績・生きざまがありながらも自分の意思で移籍せず残留を選べるプロ野球選手というのは本当にレアな存在です。他の選手も具体的な成功イメージがしやすくなる。ひとりの選手としての戦力面のみならず、チームに広く効果が波及することが期待できるのです。FA宣言の人的補償で指名されてしまうのは、自分の意思で残留を選んだのにも関わらず、最後の最後ひとすじに引退できない不安も抱かせてしまいます。

最後の最後に話を中日ドラゴンズに戻します。他球団から声がかかる実力・実績・生きざまがありながらも自分の意思で移籍せず残留を選べるプロ野球選手、と言うと2024年01月現在は投の大野雄大、打の大島洋平が挙がります。実際にFA権を取得しながらも残留を選択した選手です。本人の口から厳しい言葉が出るときもありますが、説得力を増す経験・実績があります。

特にこのふたりのフィナーレはバンテリンドームナゴヤにて中日のユニホームを着た状態であってほしい。
チームに、一般社会に、かっこいい生きざまを見せている特別なプロ野球選手にはまっすぐ伸びたレッドカーペットを用意し、ファンも喜怒哀楽の喜と楽の感情しかない状態で見ていられるようにしてほしい。

そのことを、エンターテイメントであるプロ野球の各球団フロントに強くお願いしたいと改めて思いました。

ありがとうございました。

サポートいただければ、本当に幸いです。創作活動に有効活用させていただきたいと存じます。