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#44 これだけは言っておきたい「発声こそが一番大事」 ~昇段審査の都市伝説より

私は「これができれば審査は大丈夫!」
みたいなセオリーを語るのは好きではありません。
剣道は十人十色、自分の色を濃く魅せられる人が合格するものだと思うからです。審査に王道はありません。
人様の剣道を型にはめるようなことは望まない、というのもあります。
しかしながら、何人かの仲間に伝えたことで「これは明らかにメリットだ」と確信できるものがあります。これはセオリーでも型にはめるでもなく、剣道自体の底上げのために、ほぼ100%の剣道人が習うことでもあるので、書いてみます。

■それは発声です。

発声を意識すれば、剣道が変わります。
私たちは剣道を習い始めたときに教わったはずです。
「大きな声を出しなさい!」
その誰もが最初に習うことを実践することが、確かに自分の剣道を底上げできると私は信じてきました。

それを四~七段の審査のトンネルにはまっている知人に提案し続けたところ「抜群の効果があった」と報告してくれた仲間が…


なんと、2桁を超えました。

私はどこかの団体の指導者ではありません。
個別に伝えているのに2桁を超えました。

■発声の効果について

では、ちょっと書いてみます。
まず、立ち合いが始まるのは蹲踞から立ち上がったときではなく、立礼の時点であることを理解して体現することから始めましょう。

  1. 立礼から三歩進みつつ呼吸を整えます。

  2. 蹲踞しながらゆっくり息を吐き切ります。

  3. 立ち上がりながらいっぱいに息を吸い込み、そのまま長く大きく発声します。

  4. このときの吸い込んでからの長い発声は単なる掛け声ではなく、深呼吸の役割も兼ねてくれるので、自然とリラックスにつながります。それに発声している間は余程でない限り相手は打ってきません。

●ちなみに「相手の発声に被せて後から声を出せ」と教わっている人もいるでしょう。
「相手の発声に被せたい」
「そうしないと日ごろ教わっている先生から注意されてしまう」
という場合は、蹲踞から立ち上がりつつ吸い込んだ息をそのまま止めて「溜め」ましょう。その後相手の発声に被せることならできると思います。
ちなみに私はの場合は、相手よりも先に発声し、さらに被せるタイミングを逃すほどに長く声を出し続けます。

■面倒であれば最低限、これだけは。

⚫️とにかく構えたら「ヤー」

「なんか面倒だな」と感じる場合は、これだけでも意識することをオススメします。
◎それは「縁を絶対に切らず、一本打ち終わって次に構える時は必ず大きく長く発声する」ということです。
大半の人は、立ち上がりの発声は当然します。
でも、自分または相手がひとつ技を出して展開するとどうでしょうか?

一本打ってお互い振り返って構えると、そこからは無声で攻め合いに入る人がほとんどです。
また一本打ち、振り返るとやっぱり無声。
黙って構えあっていると自然と相手の様子をうかがうようになります。
様子をうかがう、イコール「待ち」になるのです。
これが審査の場になるとどうなるか?

―大半の受審者がお互いに相手を待っていることになります。
結果的に「技前が不十分」と見られて8割の人が不合格になります。

とにかく構えたら「ヤー」
このキーワードを覚えておきましょう。

■効果のまとめ

以下だけ知っておくとメリットがあると思います。

◎立ちあがり、長く発声する

▶自分自身が充実する。深呼吸の代わりになるのでリラックスできる

◎一本打ち終わったら(相手が打ってきたら)、またすぐに発声から入る~これを最後まで繰り返す

▶気持ちが切れることなく攻め続けることにつながる
▶相手を追い詰めることができる

これを立ち合いが終わるまで続けることで、
▶自分のリズムを作れます。
▶自分が発声している間は相手は打ってきません。
▶相手に隙を与える機会が激減します。
▶何より目立ちますし、審査員の目も惹くはずです。

発声の話をすると「声を出すのではなく、むしろ無声の方が品格が生まれると思っていた」という方が複数人いました。しかし無声は難しいです。その域に達することができる人は範士クラスなのではないかと思うほどです。

■呼吸と発声の密接な関係

お気づきの方もいるかもしれませんが、発声は呼吸と密接な関係があります。
発声を意識することは、自然と呼吸を意識することにもつながるのです。
そして、自分が意識してできるようになってくると、相手の呼吸がわかるようになってきます。

■溜めってなんだ

特に六段以上の審査となると「溜め」があるかないかがカギになると言われます。
でも、溜めってなんでしょう。何を溜めるのでしょう??
時間でしょうか?エネルギー??
私は「気」を溜めると理解しています。では、どうやって溜めますか?
そうです。
大きく、長い発声により「溜める」ことができます。
声も出さず、じっと相手の様子を見て黙っていても何も溜まりません。
気力だけを消耗し、焦るだけになってしまいます。
「溜め」を体得する一つの手段としても発声は効果的だと思います。

■気迫八割技二割

ある先生にこう教わりました。
「剣道は、気迫八割技二割」
この「技」には、攻め崩して展開すること~理合い~打突そのものも含みます。

「いやいや、段があがったら理合のほうが大事でしょう!!」
という人もいると思います。
私は、その大事で研究しなくてはならない理合すら2割であり、気迫はその2割を大幅に上回らなくてはならないと思っています。

■ルーティンワーク

ルーティンを大切にするタイプの方がいましたら、
立礼から蹲踞~立ち上がり、発声するという流れをルーティンにしてしまうことをオススメします。
また、この流れはどんな相手には対しても全身全霊をかけて行うことができます。相手が先生であれば当然のこと、子どもたちを相手にしてもできます。
あまりにもデカイ声を出して子どもが驚いてしまうというのであれば、声量は落としても長く発声することはできるはずです。

■体験記

今日の七段審査で友人(女性)が一発合格を果たしました。
その友人にも発声について提案したところ「効果てきめんだった」とのことでした。
「相手や審査員までも自分の世界に引き込むことができたし、気が沈み込み(落ち着き)、相手が浮いてくるのがわかった」と報告してくれました。

何度もnoteで繰り返しているように、剣道は人それぞれです。
昇段審査の合格の仕方も人それぞれで、根拠もわからない都市伝説など入るスキがないと思っています。
でも、発声の大切さは不変だと思います。

なかなか次の段階に進めないという方、一度試してみませんか?
私は、この稽古を六段を受けている後半のころ(11回受けました)から今日まで継続しています。
よって、私は自分自身を「大(私)は、誰よりもデカイ声を出す」キャラに設定変更して今日に至ります。
最初は大声を出すのをためらうかもしれませんが、開き直ってキャラ変することをオススメします。

また、この発声に関連するテーマは、お仲間の剣道中毒先生の著作にも取り上げていただきました。

この稽古法は、審査云々に関係なく続けていくことで剣道の底上げをしていくことこそが本来の意義であることを書いて、今日はこの辺にしたいと思います。

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