【1】 初めて"ジャッジ"ができない男だった
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私がのちに夫となる男と出会ったのは、満員電車のように男女が密集した週末のクラブだった。
フロアの真ん中でその顔を見た瞬間、すごいイケメンがいるな、と思った。
私は普段、少し癖のある濃い顔の男性が好きなのだけど、彼はいわゆる「誰が見てもイケメン」というやつで、私の好みドンピシャな顔ではないものの、おそらくその場にいる誰よりも芸能人に近い顔立ちをしていた。
私が3歩うしろから30秒ほど見惚れていると、そのイケメンは私の強烈な視線に気付いて近寄ってきた。
左右の男に声を掛けられ、あしらうフリをしていた私の肩を突然抱き、「何か飲む?」と訊いた。
私は「うん」と言って頷き、彼に誘導されるままドリンクカウンターへ向かった。
オーダーの列に並んでいると、知らない男が突然話しかけてきた。
そして次の瞬間、私の右乳を鷲掴みにした。
私は無言でその男を突き飛ばし、睨みつける。
イケメンは再度私を抱き寄せて、「大丈夫?」とだけ言った。こんなこと、この場所では日常茶飯事だ。
イケメンのポケットには、おじさんのようにたくさんの小銭が入っていて、そのお金で一杯700円のレッドブルウォッカを2杯買ってくれた。
普段なら男性との食事や飲み会でお金を出すけど、この場所では財布すら開かない。
男が女に声をかけ、酒を奢り、セックスを打診するための場所だから、開く必要がない。
ドリンクを片手に、30分ほどイケメンと話す。
話してみて分かったけれど、彼は巷によくいるイケメンと同様、顔以外に特に魅力的なポイントはなかった。
彼から見た私はおそらくもっと悲惨で、自分に気のありそうな女であるという以外に魅力なんてなかっただろう。
「結婚相手は初対面でビビッとくる」なんてよく言うけど、私たちはお互いにビビッどころかピクッともせず、この当時はまさか1000日後に夫婦になっているなんて思いもしなかった。
そのイケメンは私に連絡先を訊いてくれた。
嬉しかったけど、当時の私は出版関係でたまにメディアに出たり、サイン会をやったりしていたので、身バレというものに対する警戒心が異常に高かった。
だから相席店やクラブで出会ったほとんどの男性には2台目のダミースマホ(ホステス時代の仕事用携帯)で作った偽名のLINEを教えていたんだけど、そうするとその相手と恋愛関係になったりいい友達になったりすることは永遠にない。
だから最初が肝心で、「この人とはまたデートに行きたいな」とか「婚活的にアリだな」と思える人にしか本当の名前と連絡先を教えないようにしていた。
そうしないと、婚活中は無限に自分の連絡先をバラ撒くことになって危険だからね。(無視して恨みを買ったりするリスクも下げられるので、この戦略はすごくよかったと思う)
で、その<本物>と<ダミー>、どちらの連絡先を相手に教えるかというジャッジだけど、基本的に私はいつも直感で、2秒も迷わずに決められていた。
でもそのイケメンに対してだけは、初めてそのジャッジができなかった。
私はこの人と、今後どうなっていくんだろう。
それが全く読めない唯一の相手だったと言っていい。
普段は自分と経歴が近い人(そこそこいい大学を出ていい会社に就職しているなど、身分がある程度ハッキリしてる男性)を気に入って、正しい連絡先を教えていた。
でもそのイケメンは高卒で、ただのクラブの常連で、エリートとは程遠い。
だから普段の基準で言えば、すぐさまダミーの連絡先を教えるべきところなんだけど、そのときは何故かそれができなかった。
正直にこう言った。
すると彼は「?」という顔をして、しばらく待ってくれていたけど、私が一緒に入店した友達から連絡が来てしまったので、どちらも交換しないまま気まずい感じでサヨナラすることになった。
そうして私はその友達と店を出たので、なんだか惜しいことをしたなぁと思いつつ、「まぁ婚活的には意味のない相手だし、これでよかったんだよな!」と自分を納得させて帰路に着いたのだった。
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-【2】へつづく -
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