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【2】 ニセ彼女の登場

1000日後に結婚している夫婦のお話
前回からのつづきです

▼ 1話目はこちら



<6日目> 自宅にて

イケメンと出会って一週間が経った。

私の中には、あの日の後悔みたいなものが、ぼんやりと芽生え始めていた。

あれだけのイケメンと知り合えたんだから、せめて連絡先を交換しておけばよかったなぁ…

たしか5つくらい年下だったけど、気前よく何杯か奢ってくれたし、居心地もよかったし、今の私には彼氏候補すらいないんだから、遊び相手にでもすればよかった…

もちろん、そこそこ高学歴で高収入の私には、顔だけ良くて高卒でクラブなんかに通ってる男は、婚活的にナシなんだけどさ。


そんなことを思っていると、最近ネット上(一緒に相席店に行く仲間を募るアプリ)で知り合った若い女友達から「今夜飲みどう?」と誘いが入った。

私たちの言う"飲み"は、居酒屋で喋りながら酒を飲むことではなく、相席ラウンジで男を漁ったり、立ち飲み居酒屋で天然相席状態になることを狙ったり、バーで隣の席にイケメンが来ないかと待ち構えたり、いわゆるメンズハンティング的なものを指すんだけど、その日は土曜日だったこともあって、結構早くから若者が集まるお店がぎゅうぎゅうになっていた。

ゆえに結構疲れてしまって、いつもなら5時頃まで相席店で飲んでる予定が、2時頃には「疲れたね」と言って店を出ることになった。


するとその女友達が、「クラブに行こう!」と言い出した。
先週の土曜日、私がイケメンと出会ったクラブ。

くしくも今日は土曜日で、あのときと同じ深夜2時。

もしかしたら、彼があの場所にいるかもしれない。

私は胸がソワっとした。
またいるのかな。いたら今度は、本当の連絡先を教えよう。


そう思って深夜のクラブに入り、しばらくフロア内を徘徊する。すると…

案の定、そのイケメンがいた。

グラスを片手に、長椅子に腰掛け1人でうなだれている。完全に酔っ払っているのが分かった。

私がそっと近付いて、トントンと肩を叩くと、彼は「おー」と言って嬉しそうに立ち上がり、私の肩を抱いた。

私「いや…覚えてないでしょ?」
彼「え?覚えてるよ、先週の人でしょ」
私「大丈夫?酔っ払ってるの?」
彼「うん、もう3時間くらいいるから。ちょっと飲みすぎた」

彼は1人で長時間クラブに滞在できる人だった。

私はこういう場所には何度も来ているものの、何もせずただ飲むだけで何時間も居座ることはできなくて、なんというか独特の気恥ずかしさみたいなものが常にまとわりついてくるので、"友人を探している素振り"とか、"ドリンクカウンターに並んでいる状態"とか、"トイレに向かって歩いている途中"みたいな、何かをしているフリをしないとその場に居られないタイプだった。(分かる人いるかな)

なので、この時点で彼のことを「1人で3時間もクラブで飲めちゃう異常者」だと判断した。

その異常者は、またもや私に酒を奢ってくれた。
いつも「何にする?俺はレッドブルウォッカ」と言う。若い。

酔っているのか色々なことを喋ってくれて、実は彼女がいるということもこのときに初めて聴いた。クラブで女と話しているのに、悪びれもしない。


しばらくして、一緒に入った女友達がそろそろ撤収しようと言うので、彼と連絡先を交換した。

そのときだった。

女「あーーー!〇〇ーー!!」

チャラそうなワンレンボブカットの女が、イケメンに向かって大声を上げながら近付いて来る。

そしてスマホで連絡先交換をしている私たちを睨みつけ、彼の肩に強烈なパンチを食らわせながら(のちに痣になったらしい)キツイ声でこう言った。

「あのさぁ、私が見てる前で連絡先交換とかしないでくれる!?」

あぁ、この人が彼女か。別に浮気をしているわけでは無いけど、まずいところを見られたなぁ…

そう思いながら「どういう関係なんですか?」と一応その子に訊ねてみると、私にだけ聞こえるような耳打ち声で「彼女♡」という答えが返って来た。

しかし彼は意外なことに、その彼女をなだめて「後で行くから」とだけ言って、私と別のフロアに移動した。

私「いいの?彼女ちゃん、怒ってたけど…」
彼「彼女って、あの子が言ったの?彼女じゃないよ」
私「え、じゃあなんであんなに怒ってるの?」
彼「今日あの子がここにいるって連絡は貰ってたんだけど、それを無視して飲んでたから…」
私「つまりちょっと厄介なセフレって感じ?」
彼「まぁ…そんなとこ」

モテる男も大変なんだなぁ。

この場にいる男はみんな、どうにかこうにか今夜のセックスにありつくことに必死なのに、彼みたいなイケメンは美人をあしらうことさえあるわけか…

彼女がいながらクラブでセフレを作っているなんて正真正銘のクズだなぁ、ともはや感心するのと同時に、「やっぱり婚活的には論外の相手だな」という最終ジャッジを、このときの私は下していた。

私「早く彼女のところに行ってあげなよ。私はもう帰るから」
彼「だから、彼女じゃないって…」

そう言いながらも、彼はごめんねと言ってニセ彼女ちゃんのいる方向へ消えて行った。

私は特に悲しくもなく、「おもしれー男」くらいの気持ちでご機嫌で帰路に着いたのだった。


▼ その日のLINE

なぜか不在着信が入っていた。のちに聴いた話によると、ニセ彼女とは一緒に帰らなかったらしい。
私は修羅場を見たせいで穏やかじゃない夢を見た


この連載は、私が夫と出会ってから夫婦になるまでの1000日間を綴ったドロゲス生モノ婚活エッセイです。

あまりに生々しい内容のため、6月1日以降は公開3日以内のエッセイを残して過去記事を有料コンテンツにするので、最後まで無料で読みたい人は記事が公開されて3日以内に読むようにしてね!

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-【3】へつづく -


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