令和5年公認会計士論文式試験を受験された皆さまへ

論文式試験を受験された皆さま、お疲れ様でした。闘魂さん、てりたまさんの企画に乗らせていただき、筆を取らせていただきました。素晴らしい企画にお誘いいただきありがとうございます。

何者?

申し遅れましたが青い人と申します。怪しい者です。3年ほど前に大手監査法人から独立(会社を辞めただけともいいます)しまして、今は上場の連結含む決算・開示支援、税理士業務、中小企業支援等を行っております。Excelが好きで、操作速度で引かれることがしばしばあります。ゆっくりと話を掘り下げるコミュニケーションが好きでコーチングをしたりもします。

自業自得なのですが数奇なキャリアを歩んでおります。中学校には半年しか通わず、名前を書けば入れて貰えるような高校に入ったはいいものの、馴染めず中退してしまいました。しばらくパートで働きつつ、同僚の勧めで通信高校に入りなおしまして、何とか3年で卒業します。その後の進路で働きながら大学に通うことを画策していたところ、その年から夜間学部がなくなることが判明、年齢や資金面から大学生に専念する勇気は持てず、進路迷子になっていたところで通信高校の恩師から会計士試験の受験を勧められます。

いわゆる大量合格世代直後(*)ぐらいにO原の個別相談での「会計士を狙うなら今がチャンス!」という謳い文句にネギを背負って進撃し、2年半程度の受験期間を経て何とか合格します。

(*)受験開始前の相談時点で既に「直後」なのがポイントです。先方の言うチャンスは既に終わっていたわけですが、情弱たる自分がこのことに気づいたのは受験を始めてからでした。/(^o^)\ナンテコッタイ

合格直後は就職氷河期の色が残っていた頃で、監査法人には就職できず、一旦地元で就職したのち、大手監査法人の東京事務所へ転職、アドバイザリー事業部へ移動、退職・独立して今に至ります。

合格された皆さまへ

合格おめでとうございます!偏に素晴らしい努力の賜物です。あの試験に合格できた熱量があるならば、この後の大概のことは乗り切れるのではないかと思います。

個人的なポリシーで、あまり人にアドバイスをしないよう心掛けているのですが、せっかくの機会ですので、会計士試験合格後のキャリアで「やっておけば良かったこと」と「やっておいて良かったこと」を共有させて頂きます。

やっておけば良かったこと

✔ わんこそばをおかわりしすぎない
ここでいうとわんこそばとは仕事のことです。監査法人就職時点で前職もあり、Excelが得意だったことから、割と調書作成等のスタッフワークは順調にこなせました。

人手不足のこのご時世、監査法人では仕事はいくらでもありますから、早く終わらせて手を挙げさえすれば次々とタスクにありつけます。上述のような変なキャリアの人間だったため、できるなら遅れは取り戻したいという意識もあり、監査調書を作っては巻き取りを繰り返しました。

どうも仕事にはこなす人のところに集まる性質があるようです。法人の採用活動がうまくいかなかった影響で、私の1つ後輩の世代が非常に少なかったことから、当時自分はスタッフだったのですが雑務をお願いする相手もおらず、上場の監査チームであるにも関わらず、往査事務用品の宅配発送から特別な検討を必要とするリスクに対する手続の担当まで自分が一人でやるという独特な状況に陥りました。

そんな状況になれば当然に、人間関係含め色々と歪みが生じてきます。量は質に転化するという言葉もあるように、当時の物量作戦は今を生きるのに役立ってはいるのですが、いかんせん健全さと持続可能性を欠きます。

一人でそのような動き方をしていると「少ない人員でも回せるような監査チームらしい」という目で見られて人は補充されなくなりますし、後から来る後輩にその量を全部お願いできるわけでもありません。

チームに貢献するために量をこなすのはとても大事なことです。しかし、
何事もバランスが大事であり、持続可能性や周囲への影響も考える必要があります。

全体の進捗を意識しながらも、場合によっては割り当てが終わってすぐにわんこそばをおかわりし続ける代わりに、基準や法人マニュアルの読み込み、先輩・上司の作った難易度の高い論点の調書を再現してみるなり、Excelの勉強に時間を割くなり、少し将来を見据えたことをしてみても良かったように思います。

✔ 視野を広げるための活動
上述のように、試験合格後はとにかく目の前の仕事に忙殺され続けていました。そうなると「自分から環境を良くする」「場合によっては環境を移動する」といったような選択肢から遠ざかりがちで、視野も狭くなるように思います。

一概に答えがある話ではないのですが、一緒に仕事をしたいと思える方は総じて趣味や人間関係の幅が広い傾向にあるように感じます。物事を多角的にみることができたり、語彙力やたとえ話のストックが豊富でコミュニケーション能力が高くなることと等が主因と考えられます。

細かく上げればキリがないのですが、職場以外の人間関係作り、趣味のコミュニティに入ってみること、年齢や職種の違う方と話す機会を作ることなど、一言でいえば自分の幅を広げる機会に積極的にリソースを割いていたら良かったと思います。

独立していると、頑張って営業していることよりも、そんな意図は全くなかった別のつながりから仕事のご相談を頂けたりすることが多々あります。

やっておいて良かったこと

そんな失敗や遠回りばかりの人生を送ってきた自分ですが「続けて良かった」と思えることがあります。読書です。

聡明な皆さまへ改めていうことでもありませんが、読書は特定の分野、領域で極めて大きな知見を持つ方が書かれていることが多いです。そうでないものもあるかもしれませんが、それはそれで特定の視点・視座から物事を見る機会にもできます。

それは時として先輩や上司よりも的確な助言をくれることもあります。どちらを優先すべきという話ではなく、身近で一緒に働く人からの助言を大事にすることも当然に重要です。ですが、長い人生、自分の思考と行動の責任は自分でとる必要があります。

どんな人に何を言われるかは自分ではコントロールできないことも多々あります。時には偏った助言をされることもあるかもしれません。そんな時に、読書により先人の知恵も借りる事で、より客観的・建設的に長期の目線で物事を考えたり、別の分野でのセオリーを類推して、問題解決の糸口にするきっかけにもできるかと思います。

経験それ自体はきわめて不完全な教師である。経験はわれわれが経験していることがどんなものであるかを教えない。物事はただ起こるだけである。もしわれわれが経験の中に何を見出すべきかを知らなければ、できごとはわれわれにとって何の意味も持たない。ここで、概念が特に重要になって来る。

概念とは、知識にまとまりを与えるのに役立つ、いろいろな事実を意味のある形で互いに結びつけるのに役立つ、いわば物事を「説明」してくれる語である。

われわれが経験に意味を与えることができるのは、正に概念を通じてである。

S.I.ハヤカワ 思考と行動における言語 岩波書店

読書で様々な知識や「概念」を獲得することで、日々の出来事の意味づけが多少なりとも変わるかもしれません。

惜しくも結果が出なかった方へ

まずは受験お疲れ様でした。筆者も短答式試験に2回不合格となっており、このまま受験を続けて良いものなのかと悩んだ経験があります。

大きな節目にいる方もいらっしゃるかもしれないので不用意なことは言いづらいのですが、そんな状態にある方へお伝えしたいことがあります。

つらつらと書き連ねている通り、筆者は失敗と遠回りを繰り返す人生を送ってきました。振り返れば我ながら「もうちょっとやりようがあっただろ」と思うようなことばかりです。

年を重ねるにつれてしみじみ思うのですが、人生は「放っておいても楽しいと思えるような出来事」が随分と前半に寄っているように思います。わかりやすい例では身近な友人と他愛もない雑談をしたり、恋愛をしたり、好きな事に好きなだけ熱中できる時間があることなどです。

逆に後半は心構えや工夫・準備をしておかないと気後れするような出来事が続きます。職場や身近な人との人間関係の悩み、両親の介護、実家の老朽化、体力の衰えなど。

自分は人生の前半で多くの人たちが経験するような印象的で楽しい出来事の多くをスルーしてきまして、それがもったいなかったと考えていた時期もあったのですが、今ではむしろ良かったと思うようになりました。

自分は大して頭が良くないので、若いころに物事が自分の思い通りになる経験をしすぎていたら「人生は自分ではコントロールできないことも多分にある」という、ある意味で当たり前のことを忘れてしまったかもしれません。

最近も理不尽な出来事や納得できないことには度々見舞われますし、前向きでない感情が起こることもしばしばあります。が、「まぁこういうこともあるよね」「じゃあ、次はどうしたらこの状況が良くなるだろうか」と考えられるようになってきたのは、自分の思い通りにならなかった経験の数も大きいように思います。

おわりに

まとまりのない文章になってしまいましたが、最後までお読みくださりありがとうございます。論文式試験を受験されるところまで到達できる方ならば、今後大概のことは乗り切れるに違いありません。

興味のある方はX(Twitter)やNoteで発信をされてみると、自分の考えを整理できたり、読みやすい文章を書く訓練ができたり、新しいつながりのきっかけになったりと、とても良いことが多いように思います。

受験勉強が終わって新しいことにリソースを割く余裕がある方は、上述の読書や情報発信に挑戦してみても良いかもしれません。

少しでも今後をより楽しくするヒントになれば幸いです。受験お疲れ様でした!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?