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ポートランド州立大学(PSU)の「コミュニティ開発」専攻で学んだこと

仕事は情シスのはずなんだけど、全然関係ないつぶやきやnote記事が多くて、「この人は一体何者?」って思ってる人がいたりいなかったりだと思いますが、今更ながら、僕のIT関連以外のバックグラウンドをまとめておこうと思い立ちました。

ポートランド州立大学のAcademic Strugglesを振り返って

僕は、プロフェッショナルなキャリアは、情シスをはじめとしたIT関係ではあるんですが、2008年〜2012年の3年半の間にアメリカのポートランドに留学し、ポートランド州立大学にて、ITとはほとんど関係ない「コミュニティ開発」を学びました。

誰でも帰路に立たされやすい20代後半で、このままITだけでやっていくことが信じられなくなり、自分にとっても社会にとっても必須な「コミュニティ」を専門に学ぼうと決心したのがきっかけです。

今回、自分がポートランド州立大学で学んだ内容を振り返って、想像以上に人格レベルで学んだ内容が残っていると感じました。当時は、軍隊かと思うくらい徹底的に叩き込まれたので、洗脳レベルで影響を受けてるのかもしれません。正直、朝から晩まで勉強する毎日で、もちろん大変だったんですが、今となってはあのAcademic Struggles(学術的な奮闘)が恋しいです。

当時授業で使ったテキストは本当に素晴らしい本ばかりで、ほとんどの本を日本に持って帰ってきてあり、今も手元にあります。そのテキストを紹介し、どんなことを勉強してどんなバックグラウンドを持っているのかを書きたいと思います。

ネイバーフッド・パブリックプレイスメイキング

自分でも最も色濃く影響を受けていると感じるのは、ネイバーフッド(ご近所)レベルのコミュニティ開発。

Neighbor Power: Building Community the Seattle Wayという本では、アメリカのシアトルのご近所(Neighborhood)レベルのコミュニティ再構築についての取り組みを紹介している本。

この本の中ですごく印象に残ってるのが、シアトルのCourtland Place Neighborhoodという、”the toughest two blocks in Seattle”と呼ばれるまでに荒廃しきった近所の話。

一度、警察のパワーを駆使して、他の近所と同じレベルまで治安が回復したらしいけど、時が経つにつれて、またかつての荒廃しきった状態まで逆戻りしてしまったらしい。

対処に困った警察は、対策を現地のコミュニティに任せる(丸投げする)ことにした。

で、そのコミュニティで取った対策とは、荒廃したストリートの一角の土地で コミュニティ・ガーデンを始めることだった。

その活動は、コミュニティのメンバーを動員するのにとても適したもので、年齢問わず、多様なスキルを持った人が集まり、そこにいる多くの人を巻き込んで大きなムーブメントに発展していった。

結果的に、コミュニティの結束力が強くなり、警察には到底成し得なかった治安の持続的改善を達成してしまった。

というお話。

Native to Nowhere: Sustaining Home And Community In A Global Ageもとても好きな本で、サステナビリティや住民のその場所へのコミットメントなどを考慮したプレイスメイキングをすることや、コミュニティには想像を超えた可能性があるという気づきがあった。

ネイバーフッド(ご近所)くらいの規模が重要なのは、それ以上の規模になると多分大き過ぎて手に負えなくなるという点。個人的にはネイバーフッド規模でも圧倒されてしまうくらいで、本当に社会を変えるには出来るだけ小さな規模で足下から行動することが大事だと痛感した。

コミュニティ開発

The Community Development Readerは、コミュニティ開発の教科書とも言うべき、コミュニティ開発に関する論文集

この本にもすごく影響を受けてて、コミュニティを考える上で、「誰も置き去りにしない」だったり、「コミュニティの中のメンバードリブンであること」などを常に意識するようになった。

また、He, She and Itという小説がテキストとして扱われたことがあった。全部読んでないけど、これはサイエンスフィクションなコミュニティの未来を描いている小説。大学の授業で使われるくらいだから、コミュニティ開発の学問としても有効な内容なんだと思う。

スモール・ビジネス(小商い)

いやー、これもめちゃくちゃ影響を受けてるなと思ったんだけど、やっぱり会社を大きくしてマーケットを拡大することを目指す人ばかりでなく、小さなビジネスでも自分にしか出来ない事業を始める人が増えて欲しい!

The Small-Mart Revolution: How Local Businesses Are Beating the Global Competitionは、巨人Wal-Martに対し無数のSmall-Martで対抗すると言うコンセプトの本で、これを読んで自分もスモールビジネスがやりたくなった。

The Price of Dream : The Story of the GRAMEEN BANKは、ノーベル平和賞を受賞したバングラデッシュのグラミン銀行の物語。

マイクロクレジット(極小の融資)により、貧しい人たちがスモールビジネス(小商い)で生計を立てるまでをサポートし、高い返済率を誇ることでビジネスとしても成功させると言う素晴らし過ぎる事業。

恐らく、コロナショックで多くの失業者が生まれると思うけど、日本にもマイクロクレジットによりスモールビジネスを始める流れが必要になると思う。

都市計画

Cities People Planet: Urban Development and Climate Change, 2nd Editionでは、地球という有限で閉鎖系の世界の中で、世界の都市や地域が良い面も悪い面も含めてどのように発展し、気候変動を含めたどのような結果を産んでいるのかについて勉強した。

日本の「江戸」については、世界の歴史上、最も持続可能性が高かった都市として紹介されていた。

PLANETIZEN CONTEMPORARY DEBATES IN URBAN PLANNINGでは、都市化で多くの人が豊かな生活を手に入れられる一方、自動車依存の郊外化やスプロール現象(都市が無秩序に拡大してゆく現象の問題)や、New UrbanismやGentrificationによる社会的弱者の排除の問題とか、それによって齎される副作用について学んだ。

日本では伝統的な都市開発手法の駅周辺の都市開発が当時のアメリカでは注目されてて、中でもポートランドのオレンコ駅のmixed-useでtransit-orientedな街の開発に注目してた。

元々、ポートランドにはUrban Growth Boundary(都市成長境界線)という都市を無秩序に広げない境界線があり、その範囲内でMETROという都市圏政府を設けて交通や土地利用などの地域計画をしていて、それもポートランドの住みやすさにつながってて、これ日本でもやった方が良いかもと思ってた。

政治

「コミュニティ」という文脈での政治についても軍隊のように叩き込まれた。

Practical Politics: Five Principles for a Community that Worksは、のコミュニティを機能させるための5つの原則や、A Ladder of Citizen Participationの市民参加における8つのステップについて学ぶと、日本の政治がいかによくない状態なのかが見えてくる。それは政府がどうのというより、国民の政治に対する姿勢とか関わり方の面で

ソーシャル・キャピタル、コミュニティ・オーガナイジング

ソーシャル・キャピタルといえばBowling Alone: The Collapse and Revival of American Communityという本らしいんだけど、この本にもすごく影響を受けた。

この本を学んで、ソーシャル・キャピタルで得られる「人々の社会的なつながり」によって以下のような5つの効果が得られると当時のエッセーに書いて合った。

* コミュニティ内での問題が共有でき、結束して対処して行ける
* コミュニティ内でのコンセンサスを取るのが容易で、問題をスムーズに改善して行ける
* 「運命を共有している」という感覚を共有しやすい
* 自分にとって有用な情報やサービスを得られやすい
* 身体的、精神的なプロセスを通して個々の生活の向上が図れる

Streets of HopeやFreedome Summerなどの市民参加やボランティアによって社会に変革がもたらされた実話に触れて、自分の身の回りの環境であれば「変革は起こせるもの」という感覚が持てて、しかもボランティアはすごく高貴な行いだという感覚を持てた。

また、授業でこの映画(the real dirt on farmer john)を観て、Community Supported Aguriculture(CSA)にめちゃくちゃ興味を持った。CSAは、コミュニティとしての農業の形で、一般市民が直接or間接的に生産活動に関われる仕組み。間接的にというのは、CSA農家に定期的にお金を払い(投資し)、助けること。その対価として生産物がもらえる。

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生産者と消費者の垣根を無くしてより多くの人が参加して利益を享受できるコミュニティのあり方は農業以外にも応用できそうだといろいろ構想するようになったきかっけでもあるかも。

この映画は大好き過ぎて、DVDを買って今でも持ってるけど、Prime Videoでも観れるかも。

NonProfitと資金調達

Nonprofits & Government: Collaboration & Conflictという本は細かい内容は忘れてしまったけど、これを読んでいろいろ調べてみると、ポートランドの政府とNonProfitsとの関係はとても良い状態だと感じたのを覚えている。

The Revolution Will Not Be Funded: Beyond the Non-Profit Industrial Complexでも、社会(公正さを含めて)に大きな変革を生む事業には、例え社会がよくなるとしても、既得権益だったり人種的などでパワーを持った人たちが立ちはだかって、資金調達はうまく行かないというロジックを学べた。

実際に資金調達する場合のガイドブックもあった。

ファシリテーション

ファシリテーションも1クラス分かけてガッツり学んだ。使ったテキストは、Facilitator's Guide to Participatory Decision-Making

この本にはファシリテーターという立場の人に対してこう書かれていた。

This person is sometimes a coach, sometimes a teacher, sometimes a co-designer of systems and procedures, and sometimes a motivational speaker who inspires the group members to stand up and take risks

ファシリテーターは、上記のようにいろんな立場に柔軟になれる人であり、もっと大事なのは、グループメンバーの可能性を信じて向き合えるという姿勢が根本に必要なんだと思った。

独自テーマで発表したりエッセーにしたもの

例えば...

Sustainable Edo

CITIES PEOPLE PLANETで江戸の持続可能性について触れられていたが、日本人である強みを生かして、もっと突っ込んだ江戸の持続可能性について研究し、クラスで発表を行った。

内容はこんなもの。

How Sharing and Openness Can Reduce Environmental Impacts

2010年くらいの時点で、Uberみたいなシェア社会に興味があって、交通系のクラスでエッセーのテーマにしたことがあった。当時はビジネスとしてではなく、ものやスペース、建物をシェアして稼働率を上げることにより、環境へのインパクトを減らす形でシェア社会を考えていた。

インターンシップのプロジェクト

1. コミュニティリーダー100名にインタビューしてSWOT分析

東ポートランド地区のROSE Community DevelopmentというまちづくりNPOで3ヶ月インターンし、NPOスタッフも総出となって、地区内のコミュニティリーダー100名にインタビューしてSWOT分析するプロジェクト。インタビューした人をタウンミーティングに招いて、分析結果のレポートを共有した。

成果が認められたのか、ROSE CDのファンドレイズイベントで、Outstanding Volunteer Award(傑出したボランティア賞)の授賞式もやってもらえた。

2. East Portland Neighborhood Officeで1年間インターン

昔過ぎて具体的に何をやったのか思い出せないので、思い出し次第書く。

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