多い人は100回近く観ている⁉︎熱狂的なファンを生む、みんなの夢を叶えた構想15年の傑作ミュージカル ロンドン観劇日記(8)『Back To The Future The Musical』
『Groundhog Day』を観に行った日、劇場で隣になったニューカッスル在住の女性とミュージカル談義で盛り上がりました。
「おすすめは何?」と教えてもらったのが、先日の『Next To Normal』でした。そしてもう一つ、盛り上がったのが、今回の作品です。
「最高だよね」
「私、15回は観たわ」
「Wow!」
「でも100回近く観てる人もたくさんいるわ」
熱狂的なファンを生む作品の正体。
それは『Back To the Future The Musical』です。イギリスマンチェスターで開幕し、その後ロンドンへ。既に800回公演を超えています。そして今年の6月からニューヨークブロードウェイでも上演。
先ほどの女性はブロードウェイにも観に行ったそうです。
僕は今回の滞在で2度観たので、通算4回となりました。
初めて観たのは2023年の3月。衝撃的でした。
本当にタイムスリップし、デロリアンが飛んでいる。映画の公開以降誰もが夢に描いたことが、舞台で起きている。人間のクリエティブさに舌を巻きました。
当時僕はInstagramの投稿で
「Our dreams come true!」
と叫んでいたくらいです。
このミュージカルのすごいところは、映画と離れていないところ。それもそのはず、映画のクリエイティブ陣がコミットしているからです。
舞台化して世界観がヌメっとしてしまうことは往々にしてありますが、ここでは起きていないのです。
全ては2005年に始まったそうです。
舞台はニューヨーク、ブロードウェイ。
『プロデューサーズ』を観ていたLislieが舞台化を思い付きます。
バック・トゥ・ザ・フューチャーは映画三部作で完成されていたため、監督のロバート・ゼメキスと脚本のボブ・ゲイル、そして音楽のアラン・シルヴェストリの同意と協力が不可欠でした。
当時のことを、アラン・シルヴェストリはこう語ります。
こうしてミュージカル『Back To the Future The Musical』が動き出します。しかし2014年にワークショップが開かれることがなったものの、演出家が降板する事態に。映画誕生の30周年記念にあたる2015年上演を目指していたものの、諦めざるをえない状況になりました。
2018年になり、演出家として、トニー賞受賞経験のあるJohn Randoを迎えることが決定。遂に道筋がみえてきます。2019年2月にワークショップが開催され、5月に遂に上演決定の情報が公開されます。2019年11月にはデロリアンのテスト走行を実施。
2020年2月20日、マンチェスターにて初演に至りました。
Lislieの思いつきから15年が経っていました。
上々の滑り出しだったものの、コロナウイルスがやってきました。ロンドンでは1665年の清教徒革命以来の劇場閉鎖という事態に。
全メンバーでのフルリハーサルができたのは、一年以上経った2021年7月でした。そして2021年9月13日、ウエストエンドのAdelphi Theatreでオープニングを迎えました。
肝心の中身はというと、
(この先はネタバレになるため、お気をつけください。)
まず、オーケストラのサウンドが素晴らしいです。映画館で映画を観ているような完成度で、映画音楽ファンにもたまりません。
次にマーティ、ドク、ジョージの3役の役作りが凄すぎる点です。
マイケル・J・フォックスとクリストファー・ロイド、クリスピン・グローヴァーの3人がそのまま立っているようです。ジョージの成長物語の一面ももつBTFだからこそ、ビフを倒した時には、劇場から歓声があがります。
そして二度のタイムスリップの瞬間の演出。映像・照明・音楽が劇場そのままタイプスリップしたような感覚をもたせます。身体の奥底から燃えてしまいそうなほど興奮します。1985年に戻せたあと、ドクが叫ぶところでも劇場から大歓声があがります。
そして最後の最後、映画ではパートⅡに向かっていくところですが、映画通りデロリアンが飛ぶのです。
しかも客席の上を。
何度みてもこの場面は鳥肌がとまりません。
「Our dreams come true!」と僕が叫んだ理由がこれらにあります。
客層も老若男女。映画リアルタイム世代のご夫婦や、家族、ミュージカルファンの若者が融合して、広い世代を魅了しています。
その理由をボブはこのように語ります。
この作品、実は僕も両親と3人で一度観劇していますが、非常に引き込まれていました。特にジョージに感情移入していたようです。
長く愛される作品になること間違いなしの『Back To the Future The Musical』。是非ロンドンに行かれた際はご覧ください。
一生の思い出になることを、これまでのキャリアをかけて保証します!
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