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(115)後ろに世にも醜い老婆が座っている②

心の姿

この写真のあとのことだ。
私は男性医師主宰の勉強会に出席していた。

始まってしばらく経ったころ、後ろのドアが「ガチャッ」と開く音がした。

なんだか嫌〜な「氣」が入ってきた。
この「氣」はあの写真の女医?

私は前を向いている。
見えていないのだから本当なら、入って来たのが男性なのか女性なのか分からないはず。
だが「絶対に彼女だ」と「氣」で確信していた。
そして彼女は私の右斜め後ろに座ってしまったのだ。

私は勉強会どころではなくなってしまった。
私の全神経は右斜め後ろに注がれている。

自分に言い聞かせる。
「彼女ではないかもしれないのに勝手に思い込んではダメだよ。」

そうそう…思い込みはいけない。
「彼女かどうか確かめてみよう」と思い、おそるおそる右斜め後ろをチラリと振り返ってみた。

間違いなくその女性は彼女だった…が、
そこに座っているのは
世にも醜い老婆の姿をした女性のおどろおどろしい姿がそこにあった。

私は驚いて目を見開いてしまった。
怪しまれると思い、すぐさまクルッと前に向き直した。

いやいや…いやいや…そんなはずはない。
私の見間違いに違いない。
心を落ち付けてもう一度見てみよう、と思い直し気持ちを穏やかにして、ものすごくゆっくりと右斜め後ろに振り向いてみた…。

やっぱり…
白雪姫に出てくるような老婆がパソコンをパチパチと打っている!!

また即前を向いた。
勉強会のテーマはそっちのけ。

動悸がドックンドックンと打ち、私の心臓はバコバコと音が鳴っている。

「きっと見間違いだ。そんなことがあるはずがない!!」
と自分に言い聞かせて
「最後にもう一回だけ確認しよう…」と意を決し再びジワジワ右斜め後ろに首がキシキシ音がするぐらい…こわごわ顔を向けていった。

さすがに彼女も私の気配を察して怪訝な顔をして私を見ている。
その姿は、
薄汚いボロボロの着物をまとい、
目は大きく深くギョロリとくぼみ、
メドゥーサのように白髪は乱れ、
鼻が折れ曲がって頬はこけ、
顔中に深いシワが何本も刻まれていた。

またサッと前に向き直した。
見間違いじゃない。
彼女だ!!

だが、私が見たものは「彼女の心の姿」「心の陰影」を映し出したものなのだろう。

そして私に見せた理由。

この勉強会主宰の彼に
「どうか伝えて欲しい」
と彼を護っている何かが、彼を案じて私に必死にメッセージを伝えてきたように思えた。私が媒体として通訳者になる。こういう役目がまれにある。

勉強会後もちろん彼に伝えたが全く相手にもしてもらえなかった。が、とにかく伝えるだけは伝えた。

つづく

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