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〔176〕ポストWWⅡの終焉と新時代の開幕

〔176〕ポストWWⅡ時代の終焉と新時代の開幕
 第二次大戦(WWⅡ)について落合が教わったことを、略していえば以下のようになります。
 
 第一次世界大戦(WWⅠ)は帝国主義段階に入った世界で展開された列強による「植民地獲得戦争」で、ドイツ帝国・ロシア帝国・オーストリア=ハンガリー帝国・オスマントルコ帝国の四大帝国の崩壊をもたらしたが、終戦後も列強諸国に不満が残り、第二次大戦(WWⅡ)の勃発につながった。
 
 落合が右のことを教わった相手は、義務教育と高校・大学における学校教育および出版・放送・新聞など各種メデイアによる自主(社会)教育です。
 家庭や生活環境のなかでは、WWⅡについての情報は我家・親戚・知人の身の上に生じた影響と生活環境を含む周辺地域が受けた戦争被害の他になかったのです。
 つまりWWⅡの一部を、実体験および伝聞により、具体的事実として知っていた落合が、WWⅡ全体を抽象的・概念的に理解したのは、学校教育と社会教育を通したものに限られていました。
 その落合がWWⅡ時代の本質を、自分で理解しようと思い立ったのは平成の初年で、すでに五十歳を過ぎていました。きっかけは「昭和末平成初バブル」の崩壊に個人投資家として直面したからです。
 プラザ合意後の日本が、「土地本位制」を利用して強化した貨幣信用力を用いて空前の好景気をもたらしたことを、身をもって知る落合は、土地の生産性をはるかに超えるレベルに至った地価が一旦低落した場合、日本経済は底知れぬ泥沼に沈没してしまうことを覚っていました。
 地価の低落が日本の国益と真正面から衝突するのは必至だから、政府当局すなわち大蔵省・日銀は、いかなる場合でも政策の限りを尽くして地価の低落を防止する筈である。これは自明なことであるから「当路の役人や政治家にわざわざ確かめる必要はない」と高を括った落合は、もし自分が当路者ならば、いかにして地価の崩落を食い止めるか?」をテーマに、自分なりに研究をしてみました。
 問題の所在は、騰がりすぎた地価とそれに追いつかない賃料との乖離ですから、落ち着くところは「地価が下がるか、賃料が騰がるか」しかないのです。
 マスコミは地価の下落期待を絶叫していましたが、通例の無責任な日本破壊論でしかありません。地価がもし本当に下落したら、日本経済の根本を支える「土地信用」が崩壊してしまい、再建するにしても十年どころでは済みません。

 この時に落合の出した結論は、内閣に「土地庁」を創設して以下の業務に当たらせることです。
 ➀全国の商業地・住宅地・雑種地の地籍を調査し、
 ➁バブルが始まった時からの売買の届け出を義務化して記録したうえで、
 ➂全国地価調査を基準にして全住宅・商業地の地価を公示し、
 ➃売却希望の土地はすべて公示価格の八割で、「土地庁」が設置する「土    
  地ファンド」が引き取る。
 ⑤その財源として特別永久国債を発行し相続法上優遇する。
 ⑥賃借料は公示地価に批准して合理的な料金まで引き上げる。

 ざっと、こういったものでした。この方法で地価の崩落を食い止めることができれば、土地バブル崩壊によって日本経済全般にわたって生ずる破綻を食い止めることができる筈です。
 ここで問題は、進行しつつある一般インフレとの関係ですが、商業地・住宅地の賃借料に関しては、公示地価と賃借料が均衡するまで、段階的な値上げを認めることが肝要です。要するにバブルで騰貴した地価を下げず、むしろ地価を基準にし、これに地代・物価を合わせることで日本経済の相対的な調和を図るわけです。

 日本の財務官僚は優秀と聞くから、落合案などよりはるかに優れた案を造って地価問題を収めてくれる筈、と落合は期待したのです。なかでも日本国民が普段文句をいわずに財務省と日銀を養うのは、この時のためですから、彼らがいかなる手段を講じてくれるかを見守っていたのです。


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