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【作家志望】とある出版社に言われた衝撃の一言で本気で作家を目指すようになった話♯3

♯3「戦略的に、畑違いで場違いな、大馬鹿作家になることです」

前回のはなし

あれから、勇ましく意気込んだものの、結局何をすれば良いかはわからないまま時間だけが過ぎていきました。

「どうしたら自分自身の魅力でファンがついて、この人の小説を読みたいと思ってもらえるのだろうか……」

ずっとそんなことを考えて、2週間ほど経った時、別の出版社の方からお電話をいただきました。昔からのお付き合いもあって、話も弾み、思わずこれまでのことを相談してしまいました。


編集者「なるほど、需要とかファンとか、色々ごっちゃなんですね…」

アベ 「はい…何をしたらいいのかわからなくて」

編集者「ヒサノジョウさん、まず話を分けましょう。ヒサノジョウさんが今考えていることは、

①どうすれば自分にファンがつくのか
②需要を生み出せるのか


ということですよね」

アベ 「ええ、そうですね」

編集者「ぶっちゃけ①は難しいですよ。だって、それがわかっていればタレントとか、みんな困ってないですもん。まあ、よりベストな方法はあるかもしれないけれど…正しい答えはないかなーって思いますね」

アベ 「……ですよね」

編集者「ただ、②需要の方に関してはちょっと考えを提供できるかもしれません……」

そこで編集者はこんな話をしました。

編集者「もし、ヒサノジョウさんが、魚屋で魚を売るとしたら、どうやって売り出しますか?」


アベ 「…魚ですか?えーと、鮮度とか値段とかをアピールします」

編集者「そうですよね。魚を買いに来た人は、より安くて質の高いものを購入しますよね」

アベ 「はい」

編集者「では、さらに聞きますね」

編集者「もし、肉屋で魚を売るとしたら、どうやって売り出しますか?」


アベ 「肉屋?」

編集者「はい、肉屋です。お客はみんな『肉を買いに来た人』です」

アベ 「同じように、鮮度とか…安さ…とか?」

編集者「きっと数名はまた買ってくれると思います…でも、肉が欲しい人には興味がないかもしれません。誰も買ってくれないかも」

アベ 「確かに………つまり作家を目指すのであれば、たくさん作品があって、本に興味のある人が集まる場所に作品を出していこう……ということですね!」

編集者「いえ、その逆ですね」


編集者の衝撃の一言に思わず驚いてしまいました。

アベ 「でも、先ほどの話では……魚は魚屋でって…」

編集者「僕の考えは違います……先ほどヒサノジョウさんも言ってましたが、魚を買いに来た人は『より安く、質の高いもの』を目指しに買いに来ますよね…」

アベ 「はい」

編集者「それって、すごい競争の世界じゃないですか?質のいい文学作品は読まれるけど、他は見られないまま終わる。魚屋さんでも買われない商品って絶対にありますよね…」

アベ 「だから、競争率の低いところで戦うってことですか」
アベ 「そちらの方が見向きもされない作品を生むのでは?」

編集者「はい。なので、先ほどの話に戻りますが、肉屋で魚を買いたくなるような方法を探せばいいんです。戦略的に自分で需要を作ればいいんですよ。」


アベ 「な、なるほど」

編集者「たとえば肉の横に魚のショーケースを置いてPOPを書きます、
『最近、ずっと肉じゃないですか?DHA足りてる?』
『頑張った今晩のおかずは豪華に魚料理をもう一品』とか」

アベ 「うんうん」

編集者「もちろん例え話なので売れるかどうかとか、需要があるかどうかはまた別の話ですよ。でも、この発想にたどり着いた人だけが見える景色もあると思うんですよね、僕は…」

最後に編集者は付け加えるように言いました。

編集者「戦略的に、畑違いで場違いな、大馬鹿作家っていうのも悪くないのかもしれません」


電話を切った後も、ずっと考えてしまいました。
作家になることばかり考えるあまり、視野が狭まっていたと実感しました。

何か、モヤモヤとした負の感情が「そういった方法もありかもね」と、肯定された気がしました。

「大馬鹿な作家でいい」

作家志望である以上「書くこと」から逃げることは、作家としてのアイデンティティを失っているように感じますが、戦略的に戦っているんだと思うと、「こんな方法もありかもしれない!」とドンドン思いつくのです。

例えば、私が今現在noteで執筆させていただいている【創作百物語】 一月十日のシェヘラザードも、

「小説に合わせて、本当に語っているような音声作品と同時に展開したら、面白いのでは………それを、いつもはYouTubeしか見ない人に聞いてもらえたら、興味を持ってくれる人が増えるかもしれない…」
「だとしたら若い子も楽しめるような怪談で…じゃあ、百物語にしたら…」

なんて、自由に考えたりします。

♯1の最初で述べたように、これはサクセスストーリーではありません。
失敗することが多い創作活動がこれからも待っているのだと思います。

でも、

戦略的に、畑違いで場違いな、大馬鹿作家

であるために、夢を追い続けたいと思い、日々、挑戦しています。

いつかサクセスストーリーとして皆さんにお話しできることを楽しみにしています。

長々とお付き合いいただきありがとうございました。
どこか、別の作品でお会いできると幸いです。

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