春の夜風に吹かれながら立ちくらみ

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 正直、今回の前書きは漫画『カイジ』が分からない、読んだことない人は読み飛ばしてくれて構わないです。ていうか読み飛ばしてください。ネタバレあるので。



 以下、ネタバレ有りです。

 


 東京シティドーム Gallery AaMoで開催されている『逆境回顧録 大カイジ展』に行ってきました。漫画『カイジ』シリーズの展覧会です。3月16日から5月12日まで開催されているそうなのですが、初日に行きました。圧倒的に面白かったです。


 というのも僕は小3の秋、2010年の10月から、『カイジ』ひいては、作者である福本伸行先生の大ファンなので、とても楽しめました。福本先生の漫画はマジで人生のバイブルになっているし、正直、福本先生以上に好きになる漫画家さんは、もう僕の生涯では現れないという確信があります。それくらい自分の人生にとって大切な漫画です。僕の価値観やセンスは、福本イズムから大きく影響を受けているといって間違いないでしょう。


 小3の時、漫画と言えばコロコロコミックくらいしか読んでいなかった僕が、言うなれば飛び級で、ヤングマガジン(大人向けの雑誌)に連載されている作品にチャレンジしたからこその、大きな感激が当時ありました。
「こんな面白い世界があるのか・・!」
と圧倒的な衝撃を受けました。


 当時、周りの人に
「なんでコイツはそんなもん好きなんや?」
といぶかしそうな目で見られながらも、福本作品に傾倒しまくっていた小学生のころの自分を褒めてあげたいです。



 あの頃の僕は、カイジと自分を重ね合わせすぎて、もう一体化するんじゃないかというテンションで読んでいました。あの頃の漫画体験に勝る体験は、もう難しいだろうなあ。


 小4か小5の時なんか、クラスの友達にカイジを布教して、クラスで流行らせて、昼休みに友達と『Eカード』や『地下チンチロ』(カイジに出てくるギャンブル)をやったもんなあ。
 今考えたら友達は、よくそれに付き合ってくれたよなあ。


 そんな僕にとってカイジ展はもう最高のイベントで、なんかもう10年、15年来の親友(カイジ君)と会えた感覚になれました。あと濃いファンの方もたくさんいたので、ひとりで行ったのに、ひとりじゃないみたいでした。


 本当は今週カイジ展のこと、カイジ愛も書きたかったのですが、正直漫画を読んでる人しか分からないようなディープでネタバレ全開の文章になりそうだったのでやめます。でも、最高に良いイベントだと思うので、絶対に好きな人は行ってください。間違いない面白さです。
 


 ただカイジ展のことを一個だけネタバレ有りで書くとするなら(書いてんじゃねーか!)、焼き土下座ブースなるものがあるのですが、そこがもう腹抱えて笑いました。来場者が土下座するブースなのですが、来場者が土下座するために列になって並んでいる絵だけで、
「こんなブースこの世にあんのかよ・・・!」
と思って笑っちゃいました。

 あと、土下座の際、手と額を鉄板に押しつける部分にボタンがあるのですが、そこを土下座しながら押すと、白い煙が鉄板から出てきて、本当に焼かれているように演出されるんですね。そこの芸の細かさと、細かくするポイントに脱帽です。めっちゃくちゃ笑いながら僕も気づいたら土下座してたし、土下座してる動画を黒服に撮ってもらえました。一生の思い出です。
 歓喜・・!垂涎の至福・・!

 

 読んだことない人は読んで欲しいです。
 アニメでも良いと思います。
 頼むから見てください。
 僕と福本ワールドについて語りあいましょう。
 お願いします。



 ではここから本文です。





 1週間前の夜。

 芸人の友達と僕で飲みに行った時のこと。


 入ったお店の閉店時間が近づき、そろそろ出ようかという話になり、お会計をしようと立ち上がった瞬間。それは突然来た。視界はぼやけ、頭は真っ白。血液が急降下し、平衡感覚を失う。
 

 そう、立ちくらみが来た。



 ヘナヘナヘナと座り込む僕を心配する友達。
「大丈夫か?」
そう聞かれたので
「大丈夫」
と強がりで答えた。しかし、大丈夫ではなかった。明らかに身体がおかしい。冷や汗をかいている。でも、とりあえずお会計だけは済ませようと考え、僕は30秒ほど座り込んだのちにレジに向かった。


 しかしお会計の際、レジでも再び立ちくらみが来た。店員さんの声が遠い。ふらつく。ぼやける。お釣りの計算がうまく出来ない。やべえなと思いながらなんとか会計を済ませ、店を出た。そして店を出るなり、入り口の横に座り込んでしまった。


 友達に、
「ほんとに大丈夫?」
と聞かれた。僕は、
「ていうか俺、立ちくらみなったの初めてなんだよな。なんでなったんだろ?」
と口にしていた。すると友達は再度、
「え、ほんとに大丈夫?」
と聞いてきた。僕は、
「いやそんなことより立ちくらみなんでなったんだろ?原因わかんねえな」
と口にしていた。その後僕は
「大丈夫なのか?」
と何回聞かれても、
「ていうかなんで立ちくらみなったんだ俺?え、なんで?原因なに?なんでや?原因がわかんねえな」
とぼそぼそ言っていた。すると友達に
「いや大丈夫か聞いてんだよ。なんで原因究明してんだよ今。質問に答えろ」
と怒られた。でも僕は
「いやおかしいな。理由がわかんないんだよな。原因がわかんないよ。大丈夫とかじゃなくて、原因なに?って感じなんだよね。え、マジでなんでだ?原因なんだ?これ?原因がさ、わかんないとな困るな。え、原因なんだ?原因分かんないと安心出来ないっていうかさ。病は気からって言うし。とにかく原因をはっきりさせないとだね。え、なんだと思う原因?なんか、怖くね・・?」
と返していた。すると友達は心配よりも、大丈夫かどうかの質問に答えない僕への苛立ちの感情が勝ったのか、
「うるせえな。もう大丈夫だろお前。原因原因うるさいんだよ。ていうか酒だろ原因」
と怒ってきた。


 「あ!たしかに酒以外に原因ねえよな」


僕はハッとした。確かによく考えれば、飲みの場で具合が悪くなる原因なんて、お酒の飲み過ぎ以外にほぼ考えられない(まぁ睡眠不足とかもあるが)。なぜそれに気づけなかったのか。酔いが回りすぎていたのだろうか。灯台下暗しとはこのことか。そういえば僕はお酒が弱いのに、その日はいつもより飲んでいた(といっても、焼酎とレモンサワーの2杯しか飲んでいないけど)。 
 心の底から、飲み過ぎには気をつけよう。



 その後ちょっとだけ楽になったので、近くにあった自動販売機で水を買おうとした。すると、早くも僕の体調を心配することを放棄し始めた友達が、
「ここでメロンソーダ買ったら勇者やな」
「逆にエナジードリンクね」
「まさか水は買わないよな?」
と、立ちくらみで具合が悪そうにしている僕に、水以外を買いなさいよというフリ、ひいては、なるべく立ちくらみへの対処として効果がなさそう、いやむしろ逆効果だろという飲み物を勧めてきた。
 なんたる鬼畜!なんたる非道!



 その後どれだけ僕が
「いやちょまじで今は水じゃないと無理」
などと返しても、
「からの?」
とか
「おお丁寧にフるねえ」
などと、ふらちなことを言ってきやがる。僕は頭がうまく回らない状態で、あえてのコーヒーを買うことを1度考えてみたが、さすがに身体が嫌がったのか、気づいた時には水のボタンを押していた。友達は水の購入にうっすら冷めたような雰囲気を出していた。



 水買うに決まってんだろふざけんじゃねえ。


  
 でも、そんなことに構っていられない。僕は水をがぶ飲みした。ごくりごくりと喉が鳴る。おかげで体調が大分回復した。内心立ちくらみにめちゃくちゃビビっていたので、とてもホッとした。


 飲み会からの帰り道、ナンダカンダで優しい友達が、
「寒かったら着る?」
と言って、黒の上着(ウィンドブレーカー)をよこしてくれた。しかも返さなくて良いとまで言ってくる。僕が、
「いや、洗って返すわ」
と言っても、
「別にいいわ。それ2000円で買った安物だし。あと何より、もうすぐ春だし。それ着なくなるからあげるよ」
と言って、上着をプレゼントしてくれた。

 もうすぐ春が来るという、季節の到来を理由に上着をくれる友達の粋な感覚に惚れた僕は、上着を羽織った。
 サイズがぴったり。ぴったりさにしっくり。
「この上着もらうわ!」
そう言って、感謝した。
 春の夜風に吹かれながらありがとう。



  
 上着が温めてくれたのは、身体よりも心のほうだった―



 それから数日後、相方を募集していた僕は、その友達を相方に誘った。











 おもっくそ断られた。

 思わず立ちくらみしそうになった。

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