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眠り

軒下猫´が
テストを作るわたしの橫で
眠っている
猫らしくまあるくなって
しっぽの先は鼻の先








春が近づいたら猫たちの恋の季節
うちの周りでは ここ何日も
見知らぬ猫たちの声が聞こえているから
軒下猫´はそわそわが止まらない
ごはんもろくに食べられない
入ってきても 止まらず部屋の中を歩き回って
外から猫の声が聞こえたら
すぐに窓の前で「出して~」
と駆け出していく
まさか、恋人でもできたのかな?
(でも、軒下猫´って軒下猫ではなく、軒下猫´なんだけど……。
 そんなことってありえるのだろうか??)







そのせい?か、寝不足の軒下猫´
今日は打って変わってひたすら眠っている


帰ってきたとある少女のランドセルが
ごどん!と音を立てて床に倒れても
とある若者が逆隣りの椅子を
ガガガーッ!!と床を引きずる騒音を立てて引っ張っても
全く起きる気配はない
お腹がゆっくり膨らんだり萎んだり

膨らんだり萎んだり

膨らんだり萎んだり

膨らんだり萎んだり

膨らんだり萎んだり

・・・







生き物が眠る姿はやさしくて
神聖にして不可侵

猫たちはもちろん、
正直言って 高校生たちが
5時間目の授業で、
シャーペンを握ったまま
ノートを書くような角度で
眠ってしまっているのも、
電車にでも乗っているかのように
腕を組んで椅子の背もたれに
体重を預けて眠ってしまっているのも、
ついには
完全に頬がノートにくっついてしまって
眠ってしまっているのも、
困ったなあ、とは思っても
全く腹は立たない
眠いものはしょうがないのだろうし
それにむしろ、
眠たくてしょうがない彼らの顔を見ると
子どもらしくていいな
と、仕事を忘れて思ってしまう


(どうせ 誰かがいたずらして起こしてくれるし。)












とある赤ん坊がまだ、
寝返りもできない赤ちゃんだったある夜、
寝る前 電灯を消して
障子から差すぼんやりした明かりの中で
とある男の子とふたり
赤ちゃん鑑賞会をしたっけ

グーの手をばんざいして眠るとある赤ん坊
とある男の子がうれしげに

(ちいさいね?) 

とささやいた 今よりずっと高い声






 








猫たちのそわそわ気分が伝染したのか
春の変化が近づくせいか
寝不足気味のわたし




いっそさっさと春が来て
軒下猫´のように前後不覚になって眠りたい
 

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