穴木 好生

好きな生きもの:オニヤンマ、サイ 。         好きな言葉:おもしろき こともな…

穴木 好生

好きな生きもの:オニヤンマ、サイ 。         好きな言葉:おもしろき こともなき世を おもしろく。 生きてるだけで まるもうけ。            好きな生きかた:easy-going 、 半農半書。

最近の記事

もう一つの世界、22   白うさぎ,4/5

 小学校につくと、用務員(ようむいん)さんが通用(つうよう)口(ぐち)をあけてくれた。  初めてはいる夜の小学校。 暗闇につつまれた校舎、もう一つの別の世界がそこのあった。  四人はふだんとちがう暗闇の世界にこうふんしている。  先生の当直(とうちょく)室にいくと、4人はさっそく寝袋(ねぶくろ)を広げて、場所取りをした。  六(ろく)畳(じょう)ほどの部屋が、狭(せま)く感じる。 「君たちも来たのか。」  先生がおどろくと、おばさんが、 「ちいに会いたいといったので、親御(お

    • もう一つの世界、22   白うさぎ3/5

      白うさぎ 3/5  次の日、きなこは、ちゃんと帰ってきた。 「どうする、ちいちゃんのおばさんにあいにいく?」   三咲は、まだまよっている。ケンはいく気満々、 「茶々がどうなったかしりたいやろ?  だって、白うさぎと一緒にあいにきたんやで。」  奈美と光司はおたがい顔をみあわせていた。 「いく?」 「いったほうがすっきりするよね。」 「じゃあ、おばさんにあって聞いてみる。」  三咲のひとことできまった。  放課後(ほうかご)、四人は家に帰ってランドセルを置(お)くと、三咲(

      • もう一つの世界、22  白うさぎ2/5

        白うさぎ、2/5  放課後(ほうかご)、三咲(みさき)は、うさぎ小屋のまえに座(すわ)りこんで、じっと見つめていた。 「どうしたの?」  奈美(なみ)がたずねると、 「『ちゃちゃ』かどうか、たしかめてるの。」 「『ちゃちゃ』って?」 「ちいちゃんが飼(か)ってたうさぎ。  ほら、身体が茶色で、頭の後ろに少しだけ白い毛がはえてる。  あたし、ちいちゃんの家にお見舞いにいったとき、うさぎを飼(か)ってるって、『ちゃちゃ』をみせてくれたの。  でも、一匹だけでかわいそうだから、小

        • もう一つの世界の物語、22  白うさぎ 1/5

          白うさぎ 1/5  三咲(みさき)は四年三組、うさぎ当番。  いつもはにがてな月曜日も、うさぎ当番になってからはまちどおしくて、小学校につくと、まっすぐうさぎ小屋にとんでいった。 「おはよう。  きなこ、ふうこ、まる。  みんな、げんき?」  クラスで飼(か)っているうさぎ三匹、もってきたキャベツの葉っぱをほうりこむと、さっそくまるとふうこがかじりだした。 「あれっ、きなこがいない?」  巣の中も空っぽ。 「おかしいなあ?」  きょろきょろあたりをみまわしても、やっぱりいな

        もう一つの世界、22   白うさぎ,4/5

          もうひとつの世界の物語、21  マリーンと あんこう 5/5

          マリーンと あんこう  マリーンとカイトは、もう南のサンゴ礁にいくひつようがなくなった。  用心深く、サメがいなくなったのをたしかめると、これからふたりで暮らす、安全な場所をもとめておよいでいった。  やがて、砂地のなかに砦のようにつきでた岩場で、ふたりですむのにちょうどよい大きさの穴をみつけた。 「ここを、僕たちの新しいすみかにしよう。」 「ここなら、だいじょうぶね。  穴の中からすべてまわりをみわたせるし、もし何か危険がせまったら、まわりの小魚たちがしらせてくれる。」

          もうひとつの世界の物語、21  マリーンと あんこう 5/5

          もうひとつの世界の物語、21  マリーンと あんこう 4/5

          マリーンと あんこう 4/5  海の中は、どこまでもはてしなくつづいていた。  深くくぼんだ溝もあれば、小高い山のように起伏した岩礁もある。  どこまでいっても、そのさきにはしらない海があった。  海草におおわれた海の林、ごつごつした岩場,色とりどりのサンゴが木のように枝を広げている。  またその先へ行くと、明るい海にテーブルサンゴがおおいつくし、小魚が楽しそうにむれてあそんでいる。 ―なんて、美しい海なの。  マリーンは、海底をおよぎながら、岩のくぼみで休憩をとり、仲間の

          もうひとつの世界の物語、21  マリーンと あんこう 4/5

          もうひとつの物語の世界21, マリーンと アンコウ、3/5

          マリーンと あんこう  マリーンは、もうひとつ大切なことをきいてみた。         「アンコウさん、あたしの仲間をしらない?」 「おまえの仲間?  タコの仲間をさがしているのか?」  アンコウは、またじろりと、マリーンをにらんだ。 「たぶん、いまなら南のサンゴ礁にあつまっておる。」 「ほんとう?」  マリーンは、やっと仲間に会うことができる。  早くおよいでいきたくてしかたなかった。  アンコウは、そんなマリーンの顔をじっとみつめていた。 「おまえは、そんなに仲間にあい

          もうひとつの物語の世界21, マリーンと アンコウ、3/5

          もうひとつの物語の世界21,  マリーンとあんこう,2/5

          マリーンとあんこう  アンコウは、いまいましそうに話しだした。 「いいか、水族館と、海は全く違う世界なのだ。  むかし、お前と同じように、水族館でそだてられたという子魚にあったことがある。  子魚たちは、卵からかえって、海で暮らしていける大きさになると、何千、何万という仲間とともに、海に放されたといっておった。」 「知ってる。」  マリーンは何度も海にかえすところをみていた。 「水族館の飼育員さんが、海の資源をまもるために、子どもたちをふ化させて、海にかえすんだっていってた

          もうひとつの物語の世界21,  マリーンとあんこう,2/5

          もうひとつの物語の世界21,  マリーンと あんこう,1/5

          マリーンと あんこう  身体の半分もある大きな顔。  その口をへの字にまげて、なにを考えているのかわからない。  そばを通っただけで飲み込まれてしまいそうなこわい顔。  アンコウは、海の底から、じっと上を泳ぐ魚をにらんでいた。  そのアンコウが、頭の真ん中から、細長くつき出た竿(さお)を振っている。  しかし、アンコウのその竿の先には、かんじんの小魚をおびきよせるた めの疑似(ぎじ)餌(え)がついていない。それでも、小さく竿をゆらし、ときおり、大きく竿をふっていた。  

          もうひとつの物語の世界21,  マリーンと あんこう,1/5

          もうひとつの物語の世界20 ぼくは タコのカイトや まけへんぞ!

          ぼくは タコのカイトや まけへんぞ!     大海(おおうみ)水族館の大水槽(だいすいそう)で、ジンベエザメの甚平(じんべい)さんはゆうゆうとおよいでいた。 「甚平さーん。」 「おう、カイト、のりたいんか?」  甚平さんは、ぼくがせがむと、いつもぼくを背中にのせて泳ぎながら、大好きな海の話しをきかせてくれる。  ぼくは、この大海水族館でうまれたタコや。  そやから、いちども海にいったことがないんや。  飼育員(しいくいん)の浜(はま)ちゃんが、大空を自由におよぐ凧(たこ)か

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          もうひとつの物語の世界19、 宙船・そらふね

          宙船・そらふね  神さまがおりたった高天原(たかまがはら)の、  その岸辺のほとり。  ふたりの子どもがあるいていた。  おとこのこのなまえは「なぎ」。  おんなのこのなまえは「なみ」。  夜明けまえの、なみうちぎわ、  風は、まだねむっている、  淡い光だけが、水面(みなも)をてらしていた。 「おにいちゃん、あれは?」  なみが、ゆびさした。  なぎは、じっとみる。  金色にかがやき、  遠くで、小さく光っている。 「うごいてる?」  淡い光につつまれ、  水面(みなも

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          もうひとつの物語の世界18, そらとうみ 3/3

          そらと うみ 3/3  ふたりは、壮太(そうた)といっしょに、あっちによばれ、こっちによばれ、ふしぎな話をいっぱいきかされた。  そらは、浴衣(ゆかた)をきた、しかのおばあさんにきいた。 「ぼくたちも、おおかみの顔になるの?」  しかのおばあさんは、ちょっと首をかたむけて、 「なるひともいれば、ならないひともいる。  でも、一年に一度、こんやだけ。  おおかみの顔になりたい?」  と、きいてきた。  そらには、わからない。  うみは、むじゃきにこたえた。 「あたしは、このま

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          もうひとつの物語の世界18 そらと うみ 2/3

          そらと うみ 2/3  洞窟(どうくつ)をぬけると、草原(くさはら)のむこうに湖がひろがっていた。  山々の雑木林が、まわりをとりかこんでいる。  祭りをたのしむひとたちは、もうはやくからきて楽しんでいる。  みんなおもいおもいに草原(くさはら)にすわり込んで、ワイワイガヤガヤにぎやかにお酒をのんでいる。  笛(ふえ)と小太鼓(こだいこ)にあわせ、輪になっておどっているひとたちもいる。  うみが、きいた。 「なんでみんな動物のお面(めん)をかぶっているの?」  壮太(そうた

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          もうひとつの物語の世界18, そらとうみ 1/3

          そらと うみ 1/3  海岸線のアスファルト道路がへびのように曲がりくねり、岬の先までのびている。  夏の青空が広がり、岬のがけが、道路のすぐうしろまでせまっていた。  そのほんの少しひらけた道沿いに、  ぽつんと、古びたお寺がたっていた。  だれも住んでいない。  海風、山風をうけながら、ひっそりとねむっている。 「ついたぞ。」  パパの声で、子どもたちが車から降りてき、おもいきり伸びをした。  男の子の名前は、『そら』、  女の子の名前は、『うみ』 「どうだ、ふたりにぴ

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          もうひとつの物語の世界17,のどか村の甚平さん3/3

          のどか村の甚平さん3/3  次の日、甚平さんは、夢の続きをみるように、昨日の夜のことをおもいだしていました。 ―のどか村は、山の生き物たちの村なんだ。  甚平さんは、自分が場違いな村に迷いこんだ気がしてしかたありません。  これからどうなるのか、自分でもわからず、ぼんやり考えこんでいると、村長とおどろん子が、めずらしくそろってやってきました。  甚平さんは、慌てて起き上がると、二人を迎え入れました。 「甚平さん、昨日はごくろうさん。  緊張したやろ。わしも、あの龍神さまの目

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          もうひとつの物語の世界17,のどか村の甚平さん2/3

          のどか村の甚平さん2/3  やがて、ひと山越えると、遠くから祭囃子(まつりばやし)がきこえてきました。山に囲まれた湖のなかに、そこだけポッカリと草原が開け、古い龍神様の社が建っていました。  その前で村人が祭りを楽しんでいます。笛や太鼓の音にあわせ踊っている人もいます。お酒を酌み交わし、ごちそうをほうばっています。  ただちょっと、村人の顔と身体つきが、いつもとちがっているのです。  見ると、服は着ているのですが、みんな人間ではないのです。 ―なんで?  みんな森の生き物?

          もうひとつの物語の世界17,のどか村の甚平さん2/3