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ゴールデンなウィークの過ごし方〜高知編〜

その者青き衣を纏いて

金色の野に降り立つべし

ゴールデンウィーク。誰が名付けたであろう黄金週間が今年もやってきた。世間には10連休というまさしく金色(こんじき)の野に降りたった伝説の勇者がいるらしいが、一体何をして過ごすのだろう?実際嫁の妹の旦那などは家族の誰にも相手してもらえず犬しか遊んでくれないという、まるで王蟲の群れに轢かれ投げ飛ばされたままの残念なナウシカのような状態のお父さんもいるという。

しかしわたくしのような下の下の一般ピーポーなどは《4日》という連休にちょっと毛の生えた程度の、はたしてゴールデンと呼ぶべきかどうか悩んでしまうような休みを与えられ、ここ数ヶ月ずっとその答えが見いだせないままその時を迎えたのである。

よく考えてみれば日本人というのは(他の国の人はどうなんだろう?)、民族性なのか折角の休みなのにまた忙しくしてしまうという、まるでハムスターが常にくるくるするやつの中を走り続けるような滑稽な休みの過ごし方をする人が大半なのではないだろうか?正月休みはどこもやってないからゆっくりせざるを得ないが、それ以外の大型連休などはそれをどうやって埋めるか半ば強迫観念のように予定を詰め込んでしまうのが日本人の性なのではなかろうか。
わたくしなどはそれを批判しつつも気がついたらくるくる走り続けてしまうとっとこハム太郎なのである。かと言って全く予定を立てずに、なにもしないで家にいるだけの休日を過ごしたとして、休みのプロでない限り暇を持て余すか何もしないことに罪悪感を感じて惨めに終わるのが関の山だろう。

そしてわたくしはと言えば、アホのひとつ憶えである連休といえばキャンプということで、数ヶ月前からキャンプ場を探すという勝手に自分に課したミッションをインポッシブル?し続けていた。コロナ禍にキャンプブームが来てコロナが明けたら落ち着くかと思いきや相変わらずどこのキャンプ場もいっぱいで、近場などは壊滅状態。結果高知県の良さげなキャンプ場が目に止まったのである。自分でも何故かわからないが、奈良から東へはほとんど行く気がせず、行っても三重県どまり。もっぱら西へ行く傾向がある。この謎はいまだに解けないのだが、何故か魂が西を求めるのだ。

というわけで今年のゴールデンウィークは踊らにゃソンソンで有名なアホの聖地(徳島県)も含む、四国は高知県でキャンプという結論に至った。子どもの日ということもあるのだが、ここ数年は毎年だいたいキャンプのような気がする。昨年は広島でキャンプ、その前の年は嫁の兄弟家族たちと奈良県の十津川村で合同キャンプした記憶が新しい。

ゴールデンウィーク1日目は友人主催の明日香ビオマルシェでキトラcoffeeの出店が決まっていたから、翌日のキャンプの準備を気にしつつも前の日からコーヒー豆を深夜まで煎り続け、仕事の疲れも癒されぬまま当日を迎えた。しかも毎回出店の時はスノーピークのエルフィールドという大型のテントを立てて野外喫茶店というコンセプトでやっているので、1日目からもはやキャンプなのである。
ありがたいことに天気に恵まれ、気候もちょうどよくお客さんにたくさん来て頂き繁盛した。はじめて用意した水出アイスコーヒーも完売した。

コーヒー屋なのか分かりづらいキトラcoffee

写真を見れば看板もなくマルシェの中で勝手にキャンプしている変わった人なのだが、回を重ね少しずつ認識してもらえて来た気がする。特筆すべきは10数年前にバリ島で出会ったオーストラリア在住の日本人ミュージシャン、香川千穂さんが来てくれたことだ。彼女はアルモニカという世にも珍しい世界に何十台、日本人奏者としても何人かしかいないというクリスタルグラスでできた楽器を演奏する人で、僕と同じような音楽、ヒーリングミュージックをしている。元アナウンサーで阪神淡路大震災をきっかけにミュージシャンに転向したらしく、移住したオーストラリアでは数年前に癌を患い、全身に転移してしまい余命幾ばくかというタイミングで奇跡が重なり完治したというすごい人生を歩んでいる人で、数日前にもその半生をテレビ番組でも特集されたところだった。そして今回ひさしぶりに帰国されたタイミングで願いが叶いやっと再会できた。パートナーのスペイン人の方と来られていたのだが、マルシェでは忙しく少し喋っただけだったので、マルシェの片付けがやっと終わってからNAZO BALIで合流した。

バリで出会い、バリ料理屋さんで再会した。
美味しいご飯を食べながら、あれやこれや話した。話は尽きず、まだまだ聞きたいことやシェアしたいことなどあったが、ふたりの観光の時間を邪魔してもいけないし、僕は僕で明日のキャンプの準備もあったので再会を約束し、お別れした。次に会う時には一緒に演奏できれば良いなと思う。日本もしくはオーストラリアで。

香川千穂さんとパートナーのアンヘルと

帰宅してから荷物を車のキャリアに乗せ、あらかじめだいたいの荷物は用意しておいた。軽四とは言えキャリアを搭載していてキャンプ仕様になっているのでわりと荷物は乗るほうだが、それでもいつも満載になってしまう。もう少し荷物は減らしたいところだが、ギアも毎回少しずつ増えたりしてなかなか難しい。

そして翌日、9:00出発予定だったので食材などをクーラーボックスに詰め、他の荷物も積み込み用意万全というところでいつもの我が家あるある、妻と長男がぐずぐずして突然違うことをし出したりして結局出発が1時間も遅れてしまった。高知県のキャンプ場には15:00には着きたかったがどうも無理なようだ。実際にiPhoneのナビでは到着まで5時間、何故か車のナビでは8時間ぐらいの予定時間で時間に開きがあった。実際経験上、車のナビはあまり信用ならない。以前も何故か『到着しました』と言われたところが墓地だったりして基本的には信用していないのだ。なので都合よくiPhoneのほうを信じたのだが、実際に何時に着くのか不安なまま出発することになった。

明石海峡大橋を渡り淡路島経由で四国に入る道程だったが、明石海峡を渡るまでの高速道路が激混みし、ナビの到着時間はどんどん遅れて行った。淡路島に入ってからは調子よく進んだけれど、4時間ほどぶっ続けで運転したのと、頭痛と空腹で身体が限界に達していた。四国に入ってから徳島県のSA《吉野川ハイウェイオアシス》にさながら砂漠を旅する旅人がオアシスを求めるように駆け込んだ。しかし大きい割にはわかりにくい建物でさして食べるものもなく、仕方なしに豚まんと子どもたちには唐揚げを買い、腹をごまかし再び走り出した。温泉もあるようだったがあいにくそんな時間はなかった。とにかく日が暮れるまでには到着してテントを立てないと面倒だ。

あまり欲望は満たされなかったハイウェイオアシス。


そして高知県に入りもうすぐというところで事件は起きた。市道を走っている時に突然車がなにか轢いたような感覚でブレーキがかかったのだ。慌てて路肩に停めタイヤを確認したがなにもなかった。車載重量もありずいぶん車体が沈んでいたからか、突然自動ブレーキが作動したのか、すべては謎だった。すると次男が『さっき人形がいてたよ!ここは人形の村や!』とか言い出すので怖くなってきて素早く立ち去った。人形の呪いのせいなのか、とにかくミステリーな事件だった。

そしてようやく17:30に目的のキャンプ場に到着した。あとで知ったのだが、18:00以降のチェックインはキャンセル扱いとなりますと書いてあって、危ないところだった。とにかく日が暮れそうだったので慌ててテントとタープを設営した。予定では最初の夕食は焼きそばだったが、山で標高が高いのか寒く、急遽カレーにしようと言うことになった。そして再び事件は起きたのだ!

妻が野菜を切りに炊事場に行く途中に、隣でキャンプをしている家族から『そこはうちの敷地です!通らないでもらえますか!』とわりと強い口調で言われたと言うのだ。この経験は僕も過去にキャンプ場で同じことを言われたことがあって、ずいぶん腹がたった記憶がある。というかいまだにそのオバハンを恨んでいる。ただ子どもが投げたボールを探しに行っただけなのにそんなことを言われたものだから、咄嗟に僕も言い返してやった。そういうことがあるとそのキャンプ自体が後味の悪いものになって、本当に嫌な気分になる。キャンプマナーなのかもしれないが、明確にサイトを分ける線も引かれていない上に、うちのサイトも隣のサイトも特大サイトなのでじゅうぶんあまりあるほどの敷地なのだ。ましてやたかが一日、二日借りているだけの場所で端っこを通っただけなのになにをそんなに陣地を気にすることがあるのだ。これが世界中から戦争がなくならない理由だ。そして極めつけにどこかのサイトの子どもが薪をふたつくれませんか?と言いにいって『なんであげなあかんの⁈』と言い返され撃沈していた。なんと心の小さいやつだ。テントごと香川県(香川ナンバーだった)に飛ばされればいいのに。なんならお前のせいで香川県民全員を嫌いになるかもしれないぞ。と思ったのだが、喧嘩をしてもしょうがない。アホがなんか言うとるぞという気持ちで静かに過ごすことにした。と思ったところで管理人がスタスタと歩いてきて開口一番『となりの方から敷地を歩かないでくださいと連絡が入りました』と言うのだ。また怒りのキャンプファイヤーが再燃してしまい、アホな管理人にも言い返してやりたかったが、大人の振る舞いをした。以前住んでいた集落にもそんなやつがいた。クズなやつほど電話でチクる性質があるのだ。それも匿名で。いかんいかん、またボルテージが上がってしまった。とにかくラブ&ピースだ。キャンプとは自然と一体になり、平和を感じる場所なのだ。ここで戦争してどうする。

心を取り直してカレーに専念することにした。今日は海老とイカのシーフードカレーだ。しかし高地だからか風が強いからか、なかなか火が思うように通らなくて時間がかかった。そのうち夜になりずいぶん寒くなってきた。出来上がったカレーはとても美味しかった。体があたたまった。毎回思うがキャンプで作るカレーはなんでこんなに美味しいんだろう。

絶品シーフードカレー
ここをキャンプ地とする!

食べた後は焚き火をした。みんな寒すぎて焚き火のまわりに集まり、旅の疲れもありお風呂も入らずに早めに就寝した。僕はしばらく焚き火を眺めて火の始末をしてから寝た。

焚き火にあつまる人たち

翌日は晴天。肌寒いが気持ちの良い朝だ。しかし明日の天気予報がガラっと変わり、朝から大雨になっていた。明日香ビオマルシェでも僕が雨男だと知っているお客さんに今回のキャンプは雨じゃないんですか?と聞かれたが自信を持って今回は晴れなんですよ〜と余裕で答えたのだが、ここはやはり正真正銘の雨男。やはり雨を呼び寄せてしまった。ここ最近は帰りに雨になることが多い。先日のキャンプでも台風が近づいている中、慌てて撤収した記憶がある。流石に起きた時点で大雨は辛いし、その翌日が仕事だったので、もう一泊あったが満場一致で今日のうちに帰ることにした。

気持ちの良い朝

決めたら後は楽だ。お昼は昨日のカレーを食べればいいし、ゆっくり目でお昼すぎに撤収して帰れる。翌日も家でゆっくりできるから1番ベストな選択だった。朝食にサラダチキンのホットサンドと目玉焼きを作った。そしてキャンプで淹れるコーヒーはまた格別だった。お昼までゆったりしてコーヒーを2杯ほど飲み、ご飯を炊きカレーを温めて食べた。食材は余ってしまったが家に帰ってから食べよう。

キャンプで飲むコーヒーもこれまた格別
ゆったりと過ごすいい時間

そしてお昼ご飯を食べてからぼちぼちと片付けはじめ、14:30に全部荷物を車に詰め込みキャンプ場を後にした。とりあえず昨日お風呂に入れなかったから温泉に行きたかったが、ここからすぐ近くの《にこ淵》という瀧に寄ることにした。ここは何故か観光客がたくさんで、まるでイオンモールかと思うほどの人でごった返していた。高知県の観光地はここしかないのかと思うぐらい、それほど人が集まるスポットなのだ。実際地域の人は神聖な場所らしく普通は立ち寄らない場所らしいのだが、道のいたるところに車が停まり、良いのか悪いのか完全な観光地になっていた。急な階段を少しずつ降りたところにそれはあった。

龍がいるという聖地《にこ淵》

妻は途中でリタイアして引き返していたので、少し写真を撮って子どもたちと再び階段を登った。体力に自信のない方はご遠慮くださいと書いてあったとおり、帰りの階段はとてもしんどかった。

そして温泉へと向かった。20分ほど車を走らせたところにそれはあった。

むささびの湯

なかなかにレトロな温泉だったが、良い泉質の温泉だった。サウナもあり、ゆったりとお風呂に入った。とにかくさっぱりして疲れが一気に取れた。

風呂上がりに地元のシャーベットでさらにさっぱり

そして四国に来たからには本場のうどんを食べるべく、いざ香川県へと向かった。ちょうど夕飯時には着くはずだ。途中車が調子悪くなった人形の村?も通ったが、人形はいなかった。ミステリーは深まるばかりだった。

高知県から高速で北上し、丸亀市に着いたのが19:00すぎだった。しかしマクドナルドや王将、ガスト、などありとあらゆるチェーン店ばかりでここに全国のチェーン店がすべて集結してるのか?と思うほど圧倒的にどこにでもある店ばかりだった。香川県民はもううどんを食べ飽きたのか?とすら思ったが、探せど探せどうどん屋はない。そして食べログで探してるうちに驚愕の事実を知ってしまった。香川県民はうどんは夜に食べないのだ!というか、うどん屋はだいたい昼の2時には閉まっているという事実を知ってしまったのだ!香川県民には当たり前なのかもしれないが、少なくとも僕はその常識は知らなかった。一切のうどん屋が開いていないのだった。仕方なしに発想の転換をして海の幸を食べようと思い地元の回転寿司屋に駆け込んだのだが、20組待ちでラストオーダーまで30分ですと言われ撃沈した。次に食べログで見つけたマグロ料理屋に行くも休みで開いてなくて、長旅の疲れもありもうどうでも良くなって最終的にスシローで食べることにした。ワンチャンこの近くで獲れた海鮮を使っているかもしれない!そしてなんならうどんも香川県民のこだわりで美味しいかもしれない!というかすかな期待で行ったのだが、もちろんそんなことはなく、ただ普通のスシローがそこにあった。鶴瓶がいやらしい顔で微笑んでいた。とにかくやけ食いするしかない。食べまくった。それにしても香川県にまできてうどんが食べれないとはなんたる不運。思えば香川県民のキャンパーに出会った時から呪われていたのだろうか。なんだか香川県が嫌いになりかけていたが、また次の機会にあらためてうどんの旅を企画することにしよう。

そして瀬戸大橋から岡山県経由で高速で帰ることになった。しかしこれがまた長旅で、途中休憩を2、3度挟み、結局家に着いたのは明け方だった。疲れていたが昼から雨予報だったのもあり、荷物を全部下ろして片付けた。その頃にはもう朝になっていた。長い旅がやっと終わった。荷物を乗せ、また下ろし、そしてテントを立て、また片付け、そしてまた荷物を乗せ、また下ろして片付ける。この気が遠くなる作業をまた懲りずに続けるのだろう。人生はそんな面倒なことばかりだ。人は何故そんな面倒なことをしてまで楽しもうとしてしまうのだろう。その謎を解き明かす前に人生は終わってしまうのかもしれない。さて、次はどこへ行こうか。まだまだキャンプは終わらない。

朝が来た

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