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桜庭一樹『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』備忘録(※ネタバレあり)

 あたしははじめて、海野藻屑の方があたしより不幸なのだ、と気づいた。
 なんてかわいそうなのだろう、と思って、それまでの反発とか、あくまで金持ちの幸せな子だと思い込もうとしていたこととか、こんなやつに自分の気持ちはわからないと意地を張っていたこととか、そういう防波堤が一気に崩れた。そして海野藻屑のことを初めて、友達だ、と思った。
 だけど自己嫌悪にも似た嫌悪感が押し寄せてきて、きりきりとあたしをさいなんだ。海野藻屑は思う自分の気持ちにはゆがんだ自意識も混ざっていて、それがいやだった。あたしは……。

桜庭一樹『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』角川文庫、2012年、93-94頁。

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