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“キャップノソノゴ” のソノゴ

こんにちは、HITACHI Circular Design Projectです。以前の記事で、東京都国分寺市で行った市民参加型プラスチック循環の実験“キャップノソノゴ”の紹介と、実験における工夫をお伝えしました。今回は“キャップノソノゴ”から何が見えてきたのか?実験を振り返りつつ、対話する機会を頂きましたので、その様子とそれらの対話によって、私たちが新たに得られた気づきについてお伝えします。(文責 デザイナー 金田麻衣子)

ソノゴ① キャップノソノゴインタビュー

キャップノソノゴの実験後に、参加してくださった学生さん、実験にご協力頂いたつくし文具店店主で地域のプロジェクトデザイナー萩原修さん、ビオフォルム環境デザイン室の帰山さんに、キャップノソノゴについてインタビューさせて頂きました。こちらから3人のインタビューを見ることができます。

ソノゴ② 多摩未来協創会議 円卓会議

インタビューを通して、「地域の循環」のような抽象的なテーマを考えていくには、社内で議論を閉じずに、オープンに色々な方と会話をしていく大事さを痛感した私たちは、国分寺市のコミュニティデザイナーのd-landの酒井さんから声をかけて頂き、多摩未来協創会議というメディアで、対話の場を設けることになりました。萩原さん、帰山さんに加え、キャップノソノゴに参加頂いた武蔵野美術大学クリエイティブイノベーション学科の岩嵜先生にも来て頂けることになりました。当日の対話の中で、印象深かった内容を少しご紹介します。

ペットボトルキャップを集めることで意識するキャップの”ソノマエ”

このペットボトルキャップを誰がどこでどうやってつくっているのかという、もっと手前のことが気になり出しました。多くの人が、プラスチックの製品を型に流し込んでつくるということを見たことがないと思う。

キャップノソノゴ以降、ご自宅でペットボトルのキャップを集めるようになったという萩原さんのお話から、私たちは、ある経験を思い出しました。キャップノソノゴの準備をしていたときのことです。

射出成型を試してみると、キャップの色で粘度が違うことがわかり、色ごとにボタンの成型を確認する必要がでてきました。色ごとにある程度の量を集めるため、試しにメルカリでキャップを購入してみたのですが(メルカリでキャップを購入することは、地域の循環からは離れますが、メルカリのようなプラットフォームでどのようにキャップがやりとりされているのか知る良い機会になりました!)、透明な袋の中で整然と綺麗に並べられて送られてきました。受け取った瞬間、いつもの捨てているキャップに見えず、色の美しさや、飲料メーカーのデザイナーが熟考の上「この色にしよう!」と色を決めた背景に思いを馳せました。

私たちは、不要なペットボトルキャップを、ゴミとしてではなく、新しい物を成型するための材料として手放してもらう必要があると考えていたため、ペットボトルキャップの色を活用した回収方法として、色別に回収できるよう5つの色分けボックスを用意していました。

それは、“色分け”という行為を参加者が行うことで、リサイクルの回収時点でも、その先の素材化を意識することができるのでは考えたからですが、キャップノソノゴだけでなく、”ソノマエ”を意識することで、回収前の意識変化の可能性を感じることができました。

異なる領域をつなぐ“バウンダリーオブジェクト”としてのボタン

ジャケットにつけていたこのボタンに興味を寄せる人たちがいて、この取り組みを説明して、再生されたボタンがコミュニケーションの媒体になっていました。“バウンダリーオブジェクト”といって、異なる領域をつなぐものという概念がありますが、このボタンは正にそれだと思いました。

キャップノソノゴで作ったボタンをジャケットにつけ、台湾の学会に参加された岩嵜先生に頂いたエピソードです。私たちは、参加者が、成型したボタンを持ち帰り、自身の物として利用してもらえないかと考え、100円ショップなどで売っているネジネジできる針金の入ったラッピングワイヤーを準備していましたが、ボタンが飛行機に乗って台湾に上陸していたとは、うれしい驚きでした。
 
キャップノソノゴの参加前には、自分のバッグの中でペットボトルの蓋として機能していたものが、自身の手によって色鮮やかなボタンになったように感じられ、自身でジャケットに留め、そのボタンについて周囲の人と語り合う。

自分の飲んでいた飲み物の栓となっているキャップとしての機能性が高い使用方法から、鞄や服に付けるボタンとしてファッション性を意識する使用方法に変化している様子は、異なる人や場所だけでなく、異なる意識を繋いでいたと言える可能性を感じました。

普段は閉じられた住宅街で見えてこない人の姿が見えてくる

こちらが場をコントロールしようとせず、来る人に委ねるような気持ちでいたためか、色んな人が立ち寄ってくれましたね。ボタンをつくったりコーヒーを飲んだりして滞在時間も割と長くなるので、コミュニケーションが始まったり、新たな企画が持ち上がったりということもありました。

今回キャップノソノゴの会場としてもお世話になったビオフォルム環境デザイン室の帰山さんの言葉です。今回は、幸運にも国分寺の街歩きイベントぶんぶんウォークと連携して開催させてもらえたので、ビオフォルム環境デザイン室前に屋台が登場し、屋台で美味しいコーヒーを楽しむ人や、新鮮な野菜を求める人が絶えませんでした。

今まで入ったことのない場所に足を踏み入れるのは、たとえ近所でも壁が高いなと感じる人が多いと思いますが(私は結構勇気がいります)、キャップノソノゴは屋台の恩恵に預かり、コーヒーや野菜に足を止めた人が、緩やかに居室内を覗いてくださいました。そこでの滞在時間は、小さな余白を生み、その余白が新しい企画や多様な参加を生み出しており、地域のようなオープンな場での余白の設計の重要さを体感することができました。

今回、ご紹介した円卓会議の様子は、もう少し詳しくこちらに掲載されています。

今回は、キャップノソノゴのソノゴの対話の様子をお伝えしました。HITACHI Circular Design Projectでは、さらに今回の気づきを深め、来年度の活動に繋げていきたいと思っていますので、また次の活動が動きだしましたら、お知らせします。