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東京で映画製作に従事していた頃、映画化に相応しい原作モノ(小説・コミック)の市場調査に余念がありませんでした。
2000年代前半頃、市況はホラーブームに沸き立っていた時分です。
洋画大ヒット作品でも、M・ナイト・シャマラン監督『シックスセンス』の影響も手伝ってバリエーションのあるホラーテイスト、そのポテンシャルの高さが伺えたのです。
邦画ではそうした流れを汲む、黒沢清監督『CURE』や石井聰亙監督(現在名:岳龍)『エンジェルダスト』といった心理サスペンス的ホラーから、ダーク心象系ストーリーを軸とした大作『仄暗い水の底から』(監督:中田秀夫)のヒットと従来型の単に恐怖を煽るだけではない、‘余韻引きずるホラー’の登場が顕著になっていきます。

ホラーというジャンルの面白い点は超常現象を扱えるという自由度が許される事、怖さをどのようにドラマツルギーの中で有効利用できるか、表現するかが創造性の喚起に繋がるのです。
私自身もホラーとジャンル的に便宜的な取り上げ方をしてしまいがちなのですが、例えばショップ的に顧客指向に合わせる都合でジャンル設定が日本ではかなり有効であるための弊害があります。
以前のnoteでアップした稿で、監督別より俳優別で棚のレイアウトした方がレンタル回転が良いという件とやや重なりますが、ジャンル別にした方がこの点も有効なのでしょう。
つまりあくまでも本来はエッセンスに過ぎない超常現象や怖さの表現の入った作品を市場に紹介する際に、ジャンルレスは売り方が難しいという点に行き着くのです。
この点を監督別にすると、作風質感への理解や期待としてのジャンルレスでいけなくはない筈だと、筋論として私は考えます。
しかし棚だけの問題に留まらず作品のポスター等について、メインヴィジュアルの表現も特にヨーロッパと日本では大きな違いが生じている点にも気付きます。
ヨーロッパは作品世界観のヴィジュアル表現、これは抽象的に行間を示すものが好まれるものに対して、日本は主演キャストメインに登場人物を表示する方向への訴求性が圧倒的に高いのです。
日本の一般的な映画ファンが観るきっかけは概ねテーマではなく、誰が出ているかに拠ると断言していいと思います。

そして俳優の知名度を売る場として、その媒体はテレビです。テレビで名を売った俳優が主としてメジャー映画作品の主演を務めていく構図になります。

日本の映画コンテンツを生み出すスキームがこのパターンで何十年も来てしまった為の危機的状況に差し掛かろうとしている点に気が付かれた方はおられて不思議ではありません。
テレビが話題の中心から確実にインターネットに移行してきています。
10代世代のアイドルと言われる選択肢からジャニーズが無くなっていく流れが始まっていると感じます。彼らの主力購買層は30代から50代前半女性です。ジャニーズの主たるビジネススキームはテレビである為、それ以外の方法論を確立できずにいます。
これは他の大手事務所も同様に時代の端境期にある事を認識しながら難しい舵取りを迫られている現状です。

これまでの作品制作ベースの考え方、売り方と日本的捉え方のツケが一挙に或る答えに繋がってしまう可能性を孕んでいます。

‘無関心’

本論については映画コンテンツ自体に興味を無くしていくという事です。この安易な流れに終着しない事を願います。

私自身の使命感としても‘伝える’という軸を柱に、無関心を食い止める為のアプローチに努めていきたいと考えています。


【インフォメーション】
下関名画座のご案内
■2023年2月25日(土)
■「男と女 人生最良の日々(2019フランス)」
■シーモール下関2階シーモールシアター
■監督 クロード・ルルーシュ
 出演 アヌーク・エーメ
    ジャン=ルイ・トランティニャン
 音楽 フランシス・レイ
■①10時30分②13時③15時30分④19時30分
■前売1.100円 当日1.300円
シーモール1階インフォメーションカウンターにて発売中。
■問合せ 山中プロダクション(090-8247-4407)

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