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在宅介護の難しさ。家族との方向性の違いに対処する

同僚と雇用主のconflictが表面化。
同僚は元看護師で30年以上の経験がある。カナダ人にしては清潔だし、時間も守る。けれど病院時代の癖が抜けないのか、そういう性格なのか知らないが病院のやり方、いわゆる教科書通りにやらないと気がすまない。クライアントのお母さん(雇用主)は、長年同じ方法でやってきているのであまりやり方を変えるのは好きではない。私も、薬の投与の仕方や体位変換etcについてなど、様々な点で「正しいやり方」ではないなーと感じることは多々あるが「在宅」home care settingなので、目くじらはたてないことにしている。何しろ、クライアントのことを一番良く知っているのはお母さんなのだ。

お母さんは「Sさんが使用期限に固執するし、色々変えようとしている。正直何も変えなくてもいいけれど、彼女のやる気を削ぎたくないから好きなようにやらせてる」と言って我慢していた。なにしろ、この田舎ではフルタイムのプライベートケアギバーとして働いてくれる人は貴重。しかも、看護師でカナダ人といえば高給を払ってもつなぎとめたいのだ。
同僚Sは、真面目だから使用期限切れの薬剤やサプリメントに関しては常々苦言を呈していた。私は「まあまあ、あなたの言うことはわかるけど、雇用主が捨てるなって言ってるんだから、捨てないで。今までこのやり方で来て問題がなかったんだから・・・」と常々なだめていたのであるが、彼女の勢いは一向に留まることを知らず・・・で、結局雇用主に色々却下され、Sさんは「彼女は何も変えたがらない。もう疲れた・・・」と涙ぐむのであった。

使用期限のみならず、リハビリだとか、社会参加プログラムのこととかお母さんに積極的に動いてほしいことはたくさんある。しかし、ケアギバーが良かれと思ってやったことでも、クライアントにとって迷惑になることもある。学校でもしつこく習うのだが、Client-Centerd Careという。クライアント中心のケアという意味だ。

文化、宗教、民族など様々な多様性があるカナダ。介護の方法、家族の考えも様々であり、クライアントの求めるものも違う。病院で行っている看護がいくら正統だとしても、それを押し付けてはいけないのだ。ここは病院じゃない。病院だと、本当はいけないことだが医療者と患者には暗黙の上下関係があって「患者は看護師の言うことを聞く」のが当然とされている。だが、家庭だと立場は逆転する。お母さんがボスなのだ。

私達が提案した様々な案も、結構退けられてきた。「どう思う?」と聞いてくるけれど結局決めるのはお母さんだ。色々提案しても、賛成してくれないので疲れたという。まあ、お母さんの気持もわかる。変化に対応しきれないのだ。Sも色々変えすぎる。ちょっと落ち着きがないのではないか?発達障害の疑いももたげてくる。毎日のようにものの置き場所を変えたり、新しいことを提案してきたりする。一生懸命だし、アイディアがあるのはすごくいいのだが、もうちょっと空気を読もうよ・・・と言いたくなる。

私も、おかあさんの気持ちがわからない時がある。朝言ってることと夕方言ってることが違うこともある。でも、あまり追求しない。変化を望んでいない、疲れている、メンタルの不調がある。特に、別れた夫のことになると、途端にナーバスになる。でも、家族も含めてケアするのが本来の介護。だから、あまり急き立てないことにしている。彼女はプレッシャーに弱いのだ。

で、せっかくケアギバーも4人になって軌道に乗ってきた矢先、1名バーンアウトしそうになったもんだから、内心焦った。あなたにやめられると、困るんだよー!適当にやってりゃいいのよ!と言いたいが、いかんせんこういうときの慰めの言葉が思いつかなかった。得意の傾聴だ・・・
「受け止め」「共感」だ!
なんで、外国人の私が30年以上のベテランに、Client-Centered Careを教えなきゃならんのか。でも、空気を読めない人に空気を読めと言っても無理。
カナダでも、空気を読むことは必要だった。そして、粘り強くやっていくしかない。


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