わたしの空腹が人の役に立った話。
ろくです。
突然ですが、みなさんの昼休憩時間ってどれくらいですか?
1時間くらいの人が多いのでしょうか。
ちなみにわたしは長くて1時間、短くて30分です。
スッと聞き流した方のためにもう一度言いますね。
短くて30分です。
これがきついんですよ聞いてくれ。
何がきついって、食べる時間が短いこと、そして何より30分遅く休憩に入ることによって、いつもより30分ぶんのお腹が空いていること(大事件だもうおしまいだよこんなの)。
そんな休憩30分のある日、わたしの空腹が図らずも人の役に立ってしまったので、今回はその報告をしたいと思います。
わたしの空腹とタイムリミット
「今日は休憩30分か…」
この日は午前中の仕事が忙しすぎて、例のごとく休憩30分の日だった。
前職は1時間半強ぐらい休憩時間があったからか、休憩30分が本当に短く感じる。体感3分、一瞬である。
でも学校で働いていたときは1秒もなかったなぁということも思い出し、それに比べたらまだマシかとも思う。(給食を食べる時間はあったが、食べるというか流すに近いし、給食食べてる間も昼休み中も、やつらは突然何をやらかすかわからない守るべき尊い生き物なので、1秒たりとも心と体が休まることはない。よって、休憩時間というものは存在しなかった。)
休憩30分、なぜかこういう日に限ってお弁当を作ってきていないわたし、この運の悪さである。時間はないが、お昼を食べないという選択肢はない。わたしが空腹で暴れ出しちゃったら世界が滅んでしまうからね。世界平和のためです。
職場と目と鼻の先にあるカフェに急いでご飯を食べに行く。
このカフェはいつも注文してから5〜10分くらいで軽食を出してくれるので本当に助かっているありがとうございます。
わたしがルンルンで店内に入ると、この日はいつもと様子が少し違った。
「お前話聞いてんのか?」
という声が響き渡る。
不穏だ。
30〜40代ぐらいの男の人が店員さんに何か言っている。
えぇぇぇええ……
わたしのルンルンが静かに消失。
わたしって本当に運がないんだなと悲しくなった。
このカフェは先にレジで注文と会計をして、料理は後から席まで届けられるシステムなので、わたしは仕方なくその男の人の後ろに並んだ。
何に怒っているかは全く分からなかったが、延々と店員さんに罵声を浴びせ続けている。
ここでHSPのわたし、瞬時に自分が怒られているような感覚に陥り、再起不能になりそうだったのでこんなことを考えるようにする。
怒ったりするのにも体力がいると思うんですけど、この人ってば本当すごいエネルギーだな、元気すぎる。
こっちはお腹ぺこぺこですよ。
きっと自分が相手を傷つけてる自覚ないんだろうな、自分の心は平気なのか、それはなんかもうこの人もかわいそうだな。
はやく注文したいですよ。
心が満たされない人生なのですか、誰かを罵ることで、大きな声を出すことで、自分が強くなった気分になるのがそんなに気持ちいいのですか。
店員さんの顔を見てください。あなたのせいで一人の人が辛い思いをしています。
そして後ろに並んでいるやつの顔もついでに見てください。あなたのせいで一人の人間のお腹が爆発して世界が滅びそうです。
時間ないんですよ、今日は30分なんだから。
こっちに気付いてくれ〜〜〜頼む〜〜〜。
男の人の背中にそんな念を送り続けるが、届かない。
時間も空腹も限界が来ていた。
「すみません…急いでて…早くご飯食べないといけなくて…ほんとにすみませんけど…」
意を決しまくって、店員さんと男の人の間をちょっとだけ割って声をかけるザコキャラこと、わたし。
「うるせぇ!」
「他のとこ行け!」
「今話してんだろ!」
「誰だおまえ!」
こんな罵声がわたしに飛んでくるのではないか、正直少しだけ怖かった。さぁ、何だ、何が飛んでくるんだ。言い返す言葉の準備は全くしてないぞ。来い。
そう覚悟したときその男の人から出た言葉は、
「あ、おぉ」
あ、おぉ…?
あ、いいの…?
男の人は帰って行った。
その背中を見てわたしは思う。
もしかしたらこの人も引くに引けなくなっていただけなのかもしれない、自分でも自分のことを止められなかっただけのかもしれない、と。
店員さんが震えた声と引き攣った笑顔で、「ありがとうございます」とわたしにお礼を言ってくる。わたしはこの時初めて店員さんの顔を見た。どれだけ怖かったのだろう。わたしが一言慰めでもしたら、涙がこぼれ落ちてしまいそうだった。
「いえいえいえ、こちらこそいつもありがとうございます。で、注文が、…」
パスタとドリンクセットは5分で到着。わたしのお腹と世界は救われた。
わたしの空腹とタイムリミットが、人の役に立った。腹が減っても戦はできた。そんなことを思った。
このツイートがバズりまして、こんな記事にまでしていただきました。いい記念になりました。ありがとうございます。家宝にします。
そこで働く人がいるおかげで、美味しいものが食べられたり、髪をきれいにしてもらえたり、病気を診てもらえたり、バスで移動することができたり、きれいな文章に出会うことができたり、そういうあたりまえのことへの感謝を、わたしは死ぬまで忘れずにいたいと思います。
またな。
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