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文庫「ファッションデザイナー」を読んで。

今日は、私が一番好きなファッション関連の本を紹介します(・∀・)

1990年代の、海外ファッションにおけるゴシップとともに、マーケティングの視点からも書いた一冊。違う友達に3回あげて、3回戻ってこなかったので、合計4回、自分で買いなおしてます(笑) それぐらいお気に入り。手元に置いておきたいし、何度読んでも発見がある。

なぜ好きかを考えていたのだけど…好きなテーマなのはもちろんのこと、文章はクールなのに、エキサイティングで、そのバランスにグイグイ読める感じ。文章の温度の在り方や、皮肉やウィットの感じが自分に合う。人によっては辛口に感じるか、もしくは皮肉に気づかないかも。。

内容の面白さ、を推敲すると、私が十代後半で感じた、身の回りにあったファッションの「なぜ」に全て答えてくれる本だったから、だと思う。

1990年代、なぜ突然ルイ・ヴィトンのデザイナーコレクションに、マーク・ジェイコブスが起用されたのか? とか。。私自身はおしゃれとは縁遠い女子高生だったけど、権威あるブランドに新進気鋭のデザイナーが起用されたのは、その当時珍しくて不思議だったし、コギャルの女子高生たち(私ではない)は、そのデザインと、旧来のデザイン、果たしてどちらを買うのだろう……という視点で、興味を持っていたから。
ライセンス商品が説明された箇所では、百貨店やスーパーに「ungaro」と書かれた生活用品(シーツやカバー、ティッシュカバーなど、、ピエール・カルダンや、ソニア・リキエルもあったかな)が売られていたけど、これってなんなんだろうって。欲しい、というのではなくて、なんで急に、そういうものが出てきたんだろう、どういうことなんだろうって思ってたら、実は有名なブランドと知って驚いて、え、どういう商売なんだ?と疑問に思ってたり。
ほかにも、「ラルフ・ローレン」と「トミー・ヒルフィガー」の「ちがい」など、自分が疑問に感じていたこと、思っていたことの答え合わせがたくさんある。
答え合わせ以外にも、アルマーニのマーケティング、アメリカの高級百貨店の隆盛と凋落、ダナ・キャランの株式公開など、そのどれもが、仕組みやカラクリがわかり楽しい。

読み返していて「面白い」と思える章が毎回違う。今回特におもしろいと思ったのはデザイナーの「ゾラン」の章。
まず目に止まったのは、冒頭のゾランの言葉。「科学者でなくたってファッションはやれる。ただ、売れなくちゃ話にならない。要はそういうことさ」。
つい、昨今の某企業の民事再生と重なってしまう…。
今はどんな感じでしょうとググってみる…。

◆ゾラン:あなたが知っておくべきセクシーなファッションデザイナー - 🏕 ヨーロッパ - 2020
https://jpn.worldtourismgroup.com/zoran-serbian-fashion-designer-you-should-know-97362
翻訳された文章……、うーん^^;たどたどしく、読んでみる。
彼は上客を抱えながら(しかも有名人ではなく、自分でお金が稼げる女性実業家が購入層というのも、ごもっとも、と感じる)、「彼は売り上げをマイクロ管理し続けているため、各都市の数少ないアウトレットだけが自分の衣服をいつでも販売」する。
これはなかなか面白い手法と思う…。手法が個性に合っていながらにして、手堅いと思う(ファッション業界では、当たり前かもしれない)。
アウトレットに出すことで余剰在庫も捌けるし、「数少ない」アウトレットに出すことで、希少性は高めたままでいられる、と思う。
アウトレットは基本、余剰在庫を売るためのシステムなんだろうけど、企業によって、関わり方はそれぞれと思う。単純に倉庫に眠らせておくよりは…、が基本かと思うけど、せっかくなら皆さんに安くお譲りしたい、なんていう視点もあるかもしれない。

私はこのゾランのアウトレットの関わり方を、ブランドの価値を高めるように、逆手に取っているような気がして、ある程度、性格が悪い、という感じもする(^◇^;) いずれにしても、自分の個性を知り尽くしている気もする。個人的に、トミー・フィルヒガーとは全く正反対なんだけど、どこか似ている気もした。自分の気持ちと行動が、一致してるからかな。。

この後ユニクロやZARAを題材にした本がどんどん出版されていき、「ファストファッション」https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393333327.html 
という本を読んだとき、生産者側の苦しみと打開策について考えずにいられないほど、重たい印象を受けました。

「フランス人は10着しか服を持たない 」http://www.daiwashobo.co.jp/book/b182256.html 
も持っているし、明確にはファッションビジネスの本ではないのだけど、需要と共有のバランスというか、購入者に主導権が渡されたというか、バトンというか引導のような本と感じた。もはや何を買うかは、購入者に握られていると…。
断捨離関連の本が流行れば、捨てる権限もまた、購入者に委ねられたのかなと。

でも私は…、生産者も購入者も、それを仲介する人も、全ては同じ「人間である」と思う。欲しい人のところに、欲しいものが届くのが良いと思う。どうして不均衡があって、どうすれば解消されるかを、今後も追求していきたい。

=

ちなみに、この本が面白いということで、おしゃれ好きな友人たちに差し上げたけど、返信はなく…(^◇^;) 彼女たちは、おしゃれは好きだけど、ファッションマーケティングや、ビジネスには興味がない、ということなのかな、と思った(そのため、おしゃれ好きな母親と兄にも共有せず。。)

実際に本屋さんに行ってみて、
・ファッション、おしゃれ→実用書or芸術書コーナー、雑誌、
・ファッションビジネス→マーケティング書、
・ファッション哲学→人文書
と、分類同じファッションでもカテゴリーは全然違うんだな〜…と。ファッションと一口に言っても、関わり方はそれぞれ。

ファッションビジネス、ファッションマーケティングが好きな方にオススメです。

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