「ゴミは処理してくれ!だけど、ゴミ処理場は近所に置かないでくれ!」ーNIMBY問題と弁証法的図式ー

地方自治体ではNIMBY問題なるものが囁かれている。
NIMBY問題とは、「not in my backyard」の略であり、「施設の必要性は容認するが、自らの居住地域には建てないでくれ」という意味である。
これにあたるのが、地方自治体の原子力発電所計画や軍事基地、ゴミ処理場建設などの問題である。
確かに、ゴミ処理場が必要なのは分かっていても、それが近所にあっては困るだろう。
そこで私は、住民投票に重点をおいた、NIMBY問題の解決策を提案したい。
なぜなら、住民投票の過程で生じる三つの対立を乗り越えることで、最適な結果を引き出せると考えるからだ。

この問題を論じるにあたって初めに、大まかな前提を伝えておきたい。
現在合意形成において主に採用されている間接民主制は、規模と複雑性が増した現代社会においては必要不可欠である。
しかし、以前の直接民主制とは異なり、有権者すべての意見が反映されるわけではない。
ここに問題が生じるわけだ。
したがって、隅々まで意見を取りこぼさないためにも住民投票は一つの解決策となりうる。
特に、NIMBY問題は地方レベルでの問題が多く比較的規模感が小さい。
小規模だからこそ、直接民主制的な住民投票が行えると言えるだろう。
そして次に、NIMBY問題特有の性質について触れたい。
それは、受苦者と受益者の間に発生する格差問題としての性質である。
例えば、ゴミ処理場の近くに住む人と遠くに住む人を比較すればわかりやすい。
近くに住む人は騒音問題や悪臭・異臭問題に直面するわけだが、一方、遠くに住む人は何ら被害を被ることなくゴミの処理を要求できる。
このように、NIMBY問題と住民投票は対立が生じやすい構造を持っていることが分かる。

ではここからは、主に三つの対立を取り上げて、弁証法運動のようにその対立を乗り越えながら突き進み、その先に見える輝かしい社会を描いていこう。
まず一つ目の対立は、行政と住民の対立である。
この対立は、行政の一方的な権力行使をきっかけに発生する。
そして住民達は、これを防ぐために適切な情報公開を促進するわけだ。
二つ目の対立は、先ほども話した受苦者と受益者の対立である。
NIMBY問題の格差的性質を考慮すれば、受苦者が反対派に、受益者が賛成派に対応する。
そしてこの意見の対立からは、二者間における格差問題を見直し、公平性を確保する契機が得られる。
例えば、受苦者の一方的に不利益を緩和するため、その被害の軽減や補助金の交付など様々な対処を考えることができる。
最後、三つ目の対立は、問題に関心を持つ者と関心を持たない者の対立である。
この対立は、関心を持つ者が持たない者を巻き込むことで、問題に対する意識を地域全体に押し広げる機能を持つ。
まとめると、
行政と住民の対立→行政の権力行使を緩和
受苦者と受益者の対立→格差問題の緩和
関心者と無関心者の対立→問題意識の拡大
という構図になる。

このように考えると、NIMBY問題を解決する上では住民投票は必要不可欠である。
ただし、私の主張は多くの対立の発生を前提にしている。
地方で穏やかに暮らしていた住民には、一時的ではあるが、強烈な居心地の悪さを感じさせてしまうかもしれない。
隣人同士の対立ほどメンドウなことはない。
過度な対立とそれに伴うトラブルが発生することを想定して、対策を練っておくことが必要であろう。

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