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世界最小国家・バチカン市国へ、芸術と歴史を巡る旅。

こんにちは。

ドイツ・ミュンヘンで留学生活を送る大学生・桜です。


春休みのイタリア縦断旅、ピサに引き続いて今回はローマにやってきました。
前回↓


ローマ内に存在する世界最小の独立国を皆さんはご存じでしょうか。
そう、バチカン市国です。
国土のすべてが世界遺産に登録されている唯一の国家・バチカン市国を今日は存分に堪能してきます。




教皇領へ


世界史履修者なら懐かしさに悶えるであろう「ピピンの寄進」。
756年、フランク王国のピピンがローマ教皇に領土を寄進したことで成立したのが、カトリック教会の総本山であるローマ教皇領です。

国家自体は教皇庁とムッソリーニの間で締結されたラテラノ条約によって成立しました。

世界に10億以上存在するカトリック教徒に絶大な影響力を持つローマ教皇を国家元首とする、いわばカトリックの最高機関・バチカン市国には、ローマ市内から徒歩で入国します。

朝はあいにくの雨

入国の瞬間。
ヨーロッパに行くと国境が陸続きなことが多いので、島国ニッポンでは味わえない国境越えができて楽しいです。

イタリア側のきわきわに居ます

今立っているのはイタリア共和国。
この柵より向こう側がバチカン市国。

膝だけ入国


こんなことしてるのは私達だけでした。
県境越えでさえ盛り上がってしまう“日本人さ”を隠しきれていません。

警備員さんもすごく優しく微笑んでくれて、ちょっと恥ずかしくなりました…

入国直後目にしたのは、噂には聞いていた大聖堂への大行列。
できるだけ朝早く来たつもりなのに、世界中から駆け付けた観光客がすでに作っていた長蛇の列に泡を吹きそうになりました。

バチカン国籍を保有するバチカン市国民の人口は、なんとたったの600人あまり。
ここに並んでいる観光客だけでとうに超えてしまう数です。

そして雨の中並んでいると、後ろのおばちゃんに声をかけられました。
雨だから服を濡らしたくないと選んだワンピースの丈が、大聖堂には入れない短さだったようで…

替えの服も無いしどうしよう・・・と絶望していると、おばちゃんが首に巻いていたスカーフをほどいて渡してくれました。
「返さなくていいから、それでも巻いておきなさい」
と、思わぬところで触れた他人の優しさに感動してしまいました。

ちなみにこのスカーフは現在、カーテンの無い私の寮の窓に洗濯ばさみで取り付けられています。

おばちゃん、ありがとう。


サン・ピエトロ大聖堂


長い列と厳しめの手荷物検査を経て、サン・ピエトロ大聖堂に入場。

イエスの十二使徒の一人、ネロ帝の迫害を受けてローマで殉教したとされる聖ペテロの墓所の上に、彼を祀って建てられたのがサン・ピエトロ大聖堂。
サン・ピエトロとはイタリア語で聖ペテロという意味。


入って早々に見える美しい天井画は圧倒。

キリスト教の教会建築としては世界最大級を誇る大聖堂、さすがの天井の高さです。


ミケランジェロのピエタ


入ってすぐ右にあるのが、ミケランジェロの代表的な作品の一つ・ピエタです。

柵が結構手前に置かれていました。モナリザみたい

ミケランジェロがその生涯で制作した4つのピエタ像の中で唯一完成したのが、ここバチカンにあるもの。

ピエタとは磔刑に処されたイエスの亡骸を抱きかかえるモチーフのことをさす言葉で、このピエタは同作者のダヴィデ像同様に下から見上げることを前提に造られているため、キリストの亡骸に対して聖母マリアがとても大きいのが特徴だそう。


そして肝心の礼拝堂も、この規模感とこの豪華さ。

こうやって見ると人の小ささが大聖堂の大きさを表していますね。


そういえば、バチカン市国の公用語はラテン語。
ローマ帝国、さらにはカトリック教会が公用語として使い、科学や哲学などの言語にも用いられたラテン語を、現在も公用語として使用する国はバチカン市国ただ一国。

大聖堂の天井にでかでかと書かれた文言もラテン語。

外国語学部所属の私、“言語”というものに触れ続ける大学生活を送ってきたためかこういうネタにはすごく興奮してしまいます。

ちなみにラテン語は、私の大学の哲学の先生が事あるごとに「この言葉の語源はラテン語にある」みたいな教え方で“人”や”自然”を語っていて、少しはかじっておいた方がいいのかなあと思いつつも、今でも一切読めません。

解剖学の公用語は今でもラテン語らしいので、ドラマ『アンナチュラル』の石原さとみはもしかしたら読めるのかな?


霊廟にて、あの大物が・・・!?


教会の地下に進むと、歴代のローマ教皇の墓所があります。
少しひんやりとして静まり返った空間をゆっくり進んでいきます。

先ほども言った通り、このサン・ピエトロ大聖堂は聖ペトロの墓所の上に建てられたもの。

一番目立つところに、ペトロの墓(とされている墓)がありました。

そして私が思わずおおぉっと声を漏らしてしまったのが、こちらの方の棺。

一緒に行った世界史好きの友人とこっそり大興奮していたのですが、名前を見て誰か分かりますか?

そう、聖職者問題でフランス王と対立し捕らえられたのち“憤死”したかつてのローマ教皇・ボニファティウス8世です。

怒りすぎて死ぬという死に方が世界史には何件か存在しますが、それを初めて知ったのが彼の憤死事件を知った時でした。
(本当の死因は持病の結石だったそうですが…)


地下墓所を見たら見学は終わり。

外に出てみると、朝の3倍はあるんじゃないかという列の長さ。

こちらが正面から見たサン・ピエトロ大聖堂。

つづいて、バチカン観光のメインへ向かいます。


バチカン美術館、システィーナ礼拝堂


今ならんでいる行列は、バチカン市国の芸術が集結したバチカン美術館へ続くもの。

ラファエロの代表作品の『アテネの学堂』が描かれた宮殿や、ミケランジェロの代表作品の『最後の審判』や『アダムの創造』が描かれたシスティーナ礼拝堂を見に行きます。


イタリアはほんとにどこへ行ってもすごい人。
バチカンは特にすごかったです。

チケットなしの入場待ち列はもっとすごいことになっていて、当日券を待っていると恐らく一日がつぶれるので、絶対に絶対に事前にオンラインで買っておくことをお勧めします。

先ほどよりも厳しい空港並みの手荷物検査を通り、いよいよ美術館内へ。

バチカン美術館とは、歴代ローマ教皇のコレクションを展示している美術館。

エジプトから持ってきたであろう猫の銅像や、

本物のミイラとその棺、

メソポタミア文明で使われていた楔形文字が刻まれた石板など、ものすごい数の収集品。

建物もとても綺麗だったので載せておきます。
それにしてもすごい人…


ラオコーン


ギリシア神話において大蛇に殺されるラオコーンの姿が彫られたこの石像は、16世紀にネロ帝の宮殿跡から発掘された、なんと紀元前1世紀につくられたもの。

2000年以上前の石像がこんなに綺麗な姿で残されていることに驚き、また2000年前の私たちの祖先がこんなにもリアルに躍動感のある動作の一瞬を切り取って一つの像を造ってしまったことに、感動を覚えるほどでした。

そしてかつてのイタリア地図が何枚も飾られた廊下を通りました。

どこを見たらいいのか分からなくなるほどすべてが綺麗。

さらに先に進むと、美術館を抜けて教皇の居室に出ます。

ラファエロをはじめとした名のある画家たちが手掛けた壁画がたくさん。

この青の鮮やかさなどは流石に塗り直したりしていると思いますが、いやあ素晴らしいですね。
豪華!豪華!カトリック!と言う感じで、農民から徴税しまくって反感を得たのもわかる気がしますがとにかく美しい。


アテネの学堂


いくつか部屋を進むと、テレビとか教科書とか大塚国際美術館で何度も何度も観てきた壁画『アテネの学堂』のある部屋にたどり着きました。

絵の中心では、イデア論で抽象的な哲学を唱えたプラトンが天を指さし、反対に現実的な哲学を唱えたアリストテレスが地を指さしています。
ちなみにこのプラトンはレオナルド・ダ・ヴィンチをモデルに描かれています。

他にも(切り抜きは省きます)頭にターバンを巻いてぬるっと傾いているのが医学者イブン・ルシュド、てっぺん禿げの手前で跪き何かを書いているのが数学者ピタゴラス、奥で背中を向けている黄色の服を着ているのが天文学者プトレマイオス、

など様々な世界史の重要人物が登場する絵は、まるで『ウォーリーを探せ』を見ているようで本当に面白いです。

ちなみに作者のラファエロはこの絵画に自身も潜り込ませています。

画面奥、プトレマイオスの隣で自画像そっくりの顔をのぞかせています。
偉人の中に自分も描いちゃうの、お茶目で好きです。


アテネの学堂
自画像


地球儀に大興奮


出口の手前にかつての天球儀や地球儀が展示されていたのですが、地球儀の日本列島を見てこれまた面白い発見が。

蝦夷地がまだ日本に組み込まれる前の情報の基づいたのか、あの特徴的な赤たちをした北海道がない・・・!?

そして近畿地方の一つ一つの地名を見てみると、

Meaco→みやこ=都(ピンク)
Sacay→さかい=堺(緑)
Cavachi→かわち=河内(青)

他にも「Tago=丹後」「Taba=丹波」「Aoa=阿波」など、日本の地名がヨーロッパ人の発音で書かれていてめちゃくちゃ面白かったです。
この地球儀ほしい…


システィーナ礼拝堂


最後に訪れたのは、『最後の審判』『アダムの創造』などが描かれたシスティーナ礼拝堂。
全てが一つの見学コースに含まれていて、その最後を飾るのがこの礼拝堂でした。

撮影禁止だったので写真はありませんが、本物の『最後の審判』には感動。
大塚で見たものより心なしか色彩が鮮やかに感じたのは、照明のせいかな?


礼拝堂内はこんな感じ。

最後の審判の反対側の壁↓

Wikipediaより

最後の審判↓

16世紀に描かれたこの絵画は、もともとは人物の局部が露出していたものを後世の画家が勝手に腰布やイチジクの葉を描き足して隠してしまったということで有名。

Wikipediaより

オリジナルを模写したのがこちら↓

中央のキリストはもともと腰布を巻いていますが、そのほかは明らかに布が描き足されているのがわかります。


アダムの創造↓

この絵は“あるもの”が隠されていることで有名。

右の神と神を取り巻く人物&布の部分。
絵画のために人間の解剖をしていたミケランジェロは、人間にとって最も重要な器官の一つ、「脳」をこの絵画に隠したそうなのです。

確かに人間脳を横から見た形にそっくり。

Wikipediaより


写真撮影禁止なのが痛かったですが、それでも隠れて写真を撮って怒られている外国人観光客が結構いて…
でもその中に日本人は一人も見当たらなくて、日本人の民度はこうやって守られているんだなと思わされました。

美術館を出ると若干空が晴れていました。
朝いちで来たのにもうお昼過ぎ。

バチカンの旗が掲げられているのを見ることもそうないと思うので記念に。

次いつ来るか分からないけれど、もっと西洋史や神話に詳しくなってからもう一度見てみたい絵画ばかりで、また来られたらいいなと思います。

バイバイ、バチカン市国!


発祥の地にて、人生最高のカルボナーラ


最後に、この日のお昼に食べた人生最高のカルボナーラを紹介しておきます。

イタリアに再入国し、徒歩でお店に向かいます。

やってきたのはここ。

https://www.tripadvisor.it/Restaurant_Review-g187791-d6547132-Reviews-La_Fraschetta_di_Castel_Sant_Angelo-Rome_Lazio.html

ぎりぎりテラス席を確保できましたが、私達より後ろは行列ができていました。


注文したのはカルボナーラ3人前。
鍋に入って来て、各自取り分けるスタイルでした。

卵とチーズの香りが芳醇で、ベーコンの塩気がちょうどよく、人生で食べたことのあるどのカルボナーラをも超えてくる、The本場のカルボナーラって感じ。

太めの麺がソースによく絡んで、信じられないくらい美味しかったです。

普段の旅行では基本的に「団子より花」な私ですが、たまには団子を優先してみるものいいかも、と思わされるほどの至高の味。

良いチーズと良いパスタを買って自宅でもチャレンジしてみたいです。


イタリア縦断旅・バチカン編はここまで。
次回はローマの旧跡を思う存分巡ります。


それではまた!

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