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令和四年七月。平日に東京から福岡に行って、食と観光を楽しんでみた。

7:30。旅に出る。目的地は福岡。人生2回目の福岡だ。福岡は東京の遥か西。しかし、一旦東の方向へ向かう。成田空港から福岡に飛ぶためだ。

西船橋駅を出発。JR武蔵野線の車窓からの景色を眺めつつ。移動中の景色も、旅の楽しみの一つだ。船橋法典、市川大野、東松戸のあたりには「江戸時代以前からこういう地形だったのかしらん」という風景が多いように感じられる。
目の前の風景が歴史と重なることはおもしろい。セルフ拡張現実。

しかし・・眠い!これだけ眠いと、自分の認識力が弱まり、旅を存分に味わえないのではないかと不安になる。
まぁ、そんなに思い詰めることはない。たかが旅行、遊びである。
と念じて、気持ちを楽にする。

7:48。東松戸駅発の、京成成田スカイアクセス線アクセス特急、という電車に乗る。とにかくアクセスする電車のようだ。成田空港の駅までは約50分ほど。
車内を見回してみると、6~7割は会社で働いているであろうYシャツ姿の人々。キャリーケースなど大きな荷物を持った人は数えるほどだった。途中どこかで降りていかれるのだろうか。
景色も見たいが、少し、立ったまま目を瞑る。これだけでもかなり回復するものだ。

先程、目的地への移動中の景色も、旅の楽しみの一つだ、と書いた。ぼくは、はじめて乗る電車では、ずっと景色を見ていないと損した気分になってしまう。この気持ちに、共感するという方はいますか?
そんな京成成田スカイアクセス線の途中、線路とその向こう側の車道との間のスペースに、ずらずらずらーーっとソーラーパネルが置いてあるところがあった。これはかなりの発電量になるのではないだろうか。森や山をの木を切り取らずに済むこの方法は、エネルギーと環境に関心のある私としては、高く評価したい。

そこからもう少し経って、成田空港の第一ターミナルに近い方の駅に到着。
実は、自分の意思で飛行機に乗るのは、これが初めてだ。ワクワク。高校生の時に修学旅行で乗ったけど、そのときは先生が全部やってくれてただ乗せてもらっただけ(ありがとうございます)。しかし今回はチケットも自分で取って、登場の手続きも全部自分でやるのだ。

この「はじめて感」、たまらない。

「早めに着くべし」という飛行機初心者向けのアドバイスを守り、出発の1時間半前に着いたが、やはり早すぎた。よく見ると、国内線は1時間前に着いていれば充分ということだった。時間が余ったため、空港内を周ってみる。
まだ8:40頃なのでお店はほとんどやっていないが、飲食店がたくさんある。空港は楽しい場所だ。ローソンで「北海道サンドイッチ」的なものを買って食べた(旅に出るときはサンドイッチを食べたくなる。また今回は福岡に行くので「逆に」北海道のものにした。この気持ちに、共感するという方はいますか?)。

滑走路が見える場所で食べる。飛行機が並んでいる様子は壮観だし、あの巨大な物体が空に向かって飛び上がっていく様子には、なんとも言えない驚きがある。

♪ハーイウェーイトゥーザ、デンジャーゾーン♪

搭乗時間が近づき、"あの"金属の検査のゲートをくぐる(何が"あの"だ、と思わないでいただきたい。なぜなら初めてなのだから)。ピピーッ。鳴る。ベルトとスマホだ。ベルトを外しスマホを預け、ズボンが脱げそうになりながらゲートを通る。今度は通れた。
しかし荷物の方でもうひとトラブル。筆箱に入っていたハサミが引っかかっていた。こういうのは、飛行機に乗るときは家に置いてこないといけないのね・・トホホ。それを取ってもう一度検査。検査をパス。ちょいと冷や汗

飛行機に乗る。はじめての窓側だ。しかも羽のすぐ横。フラップが見える
羽・・・なんか薄っぺらいというか、案外つくりが適当な感じがする。大丈夫だろうか・・・なんて不安になる(すべての航空関係者のみなさま、すみません)。
しばらく待ち、飛行機が動き出す。その前の注意事項はめちゃめちゃ真剣に聞いた。全然平気ですよ、ふふ。という雰囲気を出しながら、全力で聞いた。
さぁ、いよいよ離陸だ。滑走路に入る瞬間がワクワクする。『Danger Zone』が聴こえてくる。もちろん頭の中で・・・。機体が浮き上がる。あぁ、こんなにすぐに雲に追いついて、雲を突っ切って・・・。房総半島の形が見える。もうこんなに上空に!?太陽と雲が、空の旅を盛り上げる。
飛行機が曲がるとき、羽がぐいーんと傾く。「そんなに傾けちゃって大丈夫ですか!?」と言いたくなるほどに傾く。いや、『トップガン マーヴェリック』では、垂直になるまで傾いていたのだから大丈夫だ。そういう問題じゃないわ。

はじめての窓側の席。地上を見下ろしながら、「ここは今多摩と山梨の間くらいだろうか」と考える。できればスマホで調べたいが、機内モードにしてあるからできない。

視界が雲に覆われる。飛行機は案外揺れる。車に乗っているのかと錯覚するような揺れだ。揺れを何度か感じると、さすがに最初の、飛び立ったときの感動は薄れてきた。景色を見るのはやめて、持ってきた司馬遼太郎の『燃えよ剣』(新選組の土方歳三の一生を描く。2021年に岡田准一主演で映画化)を読む。さっき通った多摩のあたりが、土方歳三や近藤勇の出身地だ。

読みつつ、ウトウトもしつつ・・・。いよいよ着陸へ。福岡空港は、住宅地の真ん中にある。グングン下がっていく高度。「マンションに当たっちゃわないだらうか」なんて、ちょいとびびる。

福岡空港に降りる。ふぅ、時速800キロの旅はなかなか疲れる。地下鉄(福岡市鉄道空港線)に直通。
博多駅で降りる。さぁ、まずは昼ご飯を食べよう!博多のうまい食べ物を!目当ては博多の名物「ごまさば」だ。

適当に検索して見つけた、「はじめの一歩」というごまさばのお店に到着。博多駅から徒歩10分ほどの場所にある。
ラッキーなことに、めちゃめちゃおいしい。「ごまさば」もさることながら、里芋の唐揚げが抜群。最初は何かの肉かと思うほどだった。天ぷらも茶碗蒸しも、白ごはんも抜群にうまい。

こちらの定食、2000円ほどでした。値段以上に美味しかった。

はぁ、満足。ごっそさん!食べ終わって顔をあげると、壁を埋め尽くすほどにサインや写真が飾ってあることに気がついた。なんとこのお店は、イチローをはじめ数々のプロ野球選手も来ているお店だったのだ!「プロ野球選手と相撲取りがよく行くお店は間違いなくうまい」と誰かが言っていた。まさにそのとおりだと思った。

そこから、太宰府天満宮へ。太宰府天満宮は美しいところだった。推定樹齢1000年から1500年という楠の木が数本あり、きれいな庭園もある。
加えて、「飛梅」という梅の木もある。菅原道真公が太宰府に流された折、彼を慕って梅の木が都から追いかけていったという伝説があるのだが、その梅の木が「飛梅」だ。なんてかわいいやつだ。
また、賽銭をお払いするところも素晴らしく立派だ。華やかな歴史の色香が立ち込める。うーむ、たまらない。

九州の歴史は長く、深く、広い
神社内にある立派な木。「木」は「気」に通じる。立派な木がある神社は、気が満ちている。
「飛梅」。梅が追いかけてくるほどに、道真はすばらしい人物だった。
というのは、鎮魂のための方便だろうが、鎮魂を重視しない民族はない。

しかし、宝物殿や近くにある博物館は月曜日が休館日だった。残念!!調べておくんだった。トホホ。

でも、太宰府天満宮が広いので、奥の方まで行ったり、梅ヶ枝餅を食べたりしていたらすぐに1時間経ってしまう。
ちなみに、梅ヶ枝餅、めちゃめちゃ熱かった。片手で5秒も持っていられない。ジャグリングのように梅ヶ枝餅をお手玉しながら歩いた。

そろそろ宿のチェックインの時間が近づいてきた。宿は天神で取った。ちょいと疲れてしまったので、宿にチェックインしたら少し寝た。

18:40頃。宿を出る。さ、これから夜ご飯だ!
まずは博多といったら・・・屋台。そう屋台だ。屋台を楽しみに来たのだ。屋台の多いエリアを見に行く。

那珂川沿いに屋台が多く並んでいる。「長浜屋台やまちゃん」というところがよさそうだ。豚骨ラーメンを食べる。さっぱりした豚骨スープがうまい!ハイボールと合わせて1430円。川沿いなので開放感が気持ちいい。

食べ終わったあと、しばらく博多から天神あたりを歩いてみる。福岡の夜は遅い。というのも、東京よりも日没(と日の出)が30分ほど遅いのだ。だから、私が今回旅した7月の中旬くらいならば、20時ころになってもまだかなりの明るさが残る。夜から営業する飲食店が栄えているのには、福岡のこういった地理的要件が影響しているのではないだろうか。

しかしまぁ、福岡の食べ物はおいしくておいしくて、食欲が以上に亢進される。もっと食べたい、と思いつつ歩いく。そこで名前が気になって入ったのは「戦国焼鳥家康」というお店。つい先日、司馬遼太郎の『覇王の家』という徳川家康を主人公にした歴史小説を読み終えたばかりだったので気になったのだ。

このお店、入店すると店員さんが「ドンドン!」と太鼓を鳴らしてくれる。それによって客は「我は戦国武将か」と思い違いするくらいに勇ましい気持ちになる。その一方で、店内にはひとりも女性がいない(笑)。見事なまでにホモソーシャルな空気を生み出すお店、それが「戦国焼鳥家康」だ。

勘違いしてほしくないのだが、さまざまな選択肢のひとつとして、あるお店がホモソー万歳、いわば男性社会ってすばらしいよね的な雰囲気を出していることは、決してわるいことではない。
今の時代「ソーシャル」な場では男女同権は当たり前だし、そうなるよう努めていかなけれならないが(まだまだ日本は女性差別があるので)、息抜き的な場でホモソーシャルが存在することくらいは許容したほうが、度量の広い社会ってぇもんだろう。

塩で味付けされた「白モツ」が出てくる。うまい!味付けがグッドである。そして店内BGMは斉藤和義から嵐の『Love so sweet』へと変わる。『Love so sweet』は家康もを好んだとは言われていない。というか、福岡なら家康より黒田官兵衛とか長政のほうがいいのでは、とか、ごちゃごちゃ考えながらひとり飲む。悪くない。
このようなホモソーな雰囲気に浸っていると、なんか店員さんへの態度もほんのちょいとだけ武将みたいになってくる。人間の自我はすべて自分の意志でコントロールできるものではなく、環境の影響を受けて変わるものだ。あぁ、なんというポストモダン!。

そう思っていたら、ひとりのお客様がお会計を済ませ、お店を出ていった。そのときに「ボボンボンボン」と太鼓がなった。いいねぇ。でも女性は来ないだろうなぁ笑。

女性で思い出したのですが、福岡の女性って、なんだか自信があるように見えるんですよね。ファッションにしろ、歩き方にしろ、身振りにしろ。これは旅でわたしの気が高ぶっていてそう見えているだけなのでしょうか。

と思っていたら、King gnuの『BOY』が流れてきた。選曲の基準ほ完全に不明である。そのゆるさが大好きだ。

最後に明太お茶漬けをかっ食らう。あぁ、おれは今戦国武将だ・・・。そんな気持ちを味わいつつ、お店を出る。

ここまで食べたのに、まだお腹には余力がある。本当に食べ物が美味しすぎるのだ。今度は天神で屋台を探してみることにした。

ネットで近場の屋台を調べて見る。梅ヶ枝餅と同じ皮で巻いた餃子を出しているというお店に行く。着くと満席だ。でもすぐに空いたので座れた。座ると、店主と覚しき人とおじさまと若い女性とで盛り上がっている。これも屋台の醍醐味だ!でも自分は交じることに些かの抵抗が・・・残念。そのやり取りを聞きながら、日本酒を飲んでいた。 

ここの餃子がまたうまい!!加えてトマトの料理もとてもおいしい。博多のグルメの旅は大満足である。

さて、そろそろ宿にもどろう。しかし蒸し暑い。アイスが食べたくなってきた。旅だと財布の紐がゆるむ。ローソンのウチカフェのピスタチオアイスを買って食べた。これもおいしい。博多で食べるものは全部おいしい。

もうかなり、博多に住みたくなっている。これはすごい体験だ。実に楽しい旅だった。

(おまけ)
次の日もいろいろ回りました。

豊臣秀吉も参詣したという筥崎宮。個人的には、亀山上皇の木造が、高さ6mもありビビりました。
筥崎宮からほど近い、筥崎鳩太郎商店のかき氷。店は昔ながらの和風の建築で、とても落ち着きます。このかき氷もおいしかった!850円。
ソフトバンクホークスの本拠地、PayPayドーム。つい福岡ドームと言ってしまう。周囲にはショッピングモールや飲食店も多く、家族で来ても楽しめるようになっている。
ドームから「百道浜」に移動中の橋の上。橋の上が好きなんです。
福岡タワーの展望台から。今回は行けなかったが、福岡には魅力的な島がたくさんあり、それらの島が見える。
湖のようだが、大濠公園内にある「池」(?)である。とても大きい公園で、スタバや美術館があり、池の周りのランニングコースでは、暑い中子どもから大人までたくさんの人が走っていた。
福岡城の跡。天守台から、都市を望む。
日本のみならず、アジアの一員でもあるという福岡のアイデンティティを感じる。特に夜の博多・天神エリアは開放的な街だった。
かつてここに、西鉄ライオンズや福岡ダイエーホークスが本拠地にした、平和台球場があった。今は広場になっている。夏草や兵どもが夢の跡。


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