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【前編】東京~名古屋まで在来線だけで行って、グルメを満喫してみた

この文章は、令和四年のゴールでウィークにおける私の旅の記録だが、あえて文字だけで記すこととする。
この時代に動画という手段をあえて選ばず、自分の想像力によって文字から旅を創りあげたい、という殊勝な心掛けを持つ読者に捧げるためである。

1日目:出発

5月3日、午前8時頃、東京駅。すでに混雑、店には行列。旅はここからはじまる。目的の場所は名古屋。旅の目的は名古屋の食を楽しむこと、それに加えて熱田神宮に行くことである。

この旅の「行き」には自らルールを課した。新幹線を使わず、在来線だけで名古屋まで向かうのである。まず東海道線で横浜に向かう。10番ホーム発の電車なのだが、少し外れた位置にあり時間ギリギリまで探しまわってしまった。早速焦った。
何しろ、今まで祖母が住んでいたということもあるので、親に連れられて名古屋に行ったことはあるが、自分の意志で行くのはこれがはじめてなのだ。この「初めて感」、たまらない。旅の醍醐味だ。何とか間に合う。車内は座れないが、混んでもいない。8:26東京発小田原行の東海道線である。運転士の後ろで景色を見ることが楽しい。運転士は何度も確認動作を行う。プロとしての身体が、普通人としての心に注意を促すための動き。それを繰り返している、といった様子だ。

横浜駅で一度降りる。ここで特急「踊り子」が来るまでの約10分の間に特急券を買わなければならない。私はホームで買えるものだと思っていたが、グリーン車の券売機しかない。焦る。調べてみると、きっぷを買うのと同じ券売機で買わなければならない。急いで改札を出る。きっぷを買う。急いで階段を昇る・・・まだ来ていない。助かった。

特急列車に乗り込む。当日にきっぷを買ったため席には座れないが、運転席の後ろのドアから景色を眺めつつ、熱海まで快適な旅。空はほとんど雲がない。快晴。小田原から湯河原あたりに見えてくる海が何とも絶景。窓に反射した自分の顔が、にやけていた。

1日目:昼。熱海~名古屋

熱海に到着。駅弁を買う。押し寿司食べ比べ弁当980円。加えて、ここから豊橋まで「休日乗り放題きっぷ」を利用することで費用を抑える。しかし案の定買い方がわからず焦る。みどりの窓口で聞き、売っている場所に行くと少し並んでいる。「これは間に合わないか」という焦りもあったが、購入した後すばやくホームに行き、「興津」行の電車に乗り込むことに成功。熱海~興津までの東海道線の景色も良い。駿河湾の向こうに見える山が、ぼやぼやと煙ったように霞んでいて、まるで幻を見ているよう。山という重量物さえ幻に見えてしまうところは、日本の文化や思想に大きな影響を与えていると思われるが、どうだろうか。

興津で12分ほど乗り換え時間があったため、熱海で買った押し寿司食べ比べ弁当を食べる。食べ比べたが、違いはあまりわからず。しかし魚の酸味が美味であった。

3両編成の電車がやって来る。興津から浜松へ。この区間が約1時間30分の長旅となる。清水の当たりから、ジャージ姿の中高生が乗ってきて、多少混んでくる。時刻はまだ11:35。午前中にここまで移動できたことが嬉しい。山の緑に目を癒しながら、しばらくゆられている。焼津辺りで中高生は降りていく。座席も空いてくる。島田のあたり、家を出てから約4時間半。少し疲れてくる。「ドアを閉めます。ご注意ください」。この言葉を、今日はあと何回聞くだろうか・・・。ウトウトしたり眠ったりしていたら、浜松に到着。家を出てから5時間半。

豊橋行の電車に乗り換える。4両編成。車内はやや賑やか。JR東海の工場や、ソーラーパネルが敷き詰められた広大な土地を過ぎ、「弁天島」という駅に。浜名湖の中にある駅だ。緑の湖面の向こうは海。白い砂浜の上に、赤い鳥居が存在感を放っている。非常に美しい場所だった。

浜名湖を過ぎれば、静岡と愛知の県境もすぐである。目的地の名古屋に刻々と近づいている。13:36、豊橋駅に到着。名鉄名古屋本線特急に乗り換える。しかしこれもきっぷを窓口で買わなければならない。列に並ぶ。窓口のおばちゃんがスローペースで仕事をしている。「これは間に合わないかもしれない」。焦る。しかしギリギリ間に合う。席に座れる。大変ツイてる。豊橋を13:45に出発。駅を出た瞬間、船のように揺れる。立っている人がみんな同じように揺れる。その様子は少しユーモラスだ。物理的な肉体は、心に支配されていない面がある。だから自意識にとっては思いもよらない動きをするのだ。肉体が揺れることは観察される現象であり、現象を観察しているのは意識、観察したことにこのような解釈を加えるのが心だ。そんな哲学的なことが浮かんでくる。
豊橋から名鉄名古屋は約1時間程度の距離だ。田んぼやきれいな川を通り過ぎていく・・・。と思っていたら、14:33頃、高層ビルや、凝った看板の飲食店が見えてくる。だいぶ、「都市」という感じになってきた。名古屋まであとひと息、あとひと駅。

14:38、ついに名鉄名古屋駅に到着。東京駅を出てから6時間10分。家を出てから約7時間。新幹線を使わず、自分で調べたはじめてのルートで目的地まで移動する。これができたことが嬉しい。

1日目:昼から夕方。大須で食べ歩き

名古屋の地下鉄に乗り、大須へ。大須商店街で食べ歩きをすることが目的だ。もちろん、名古屋の地下鉄に自分の意志で乗ったのも初めて。
大須観音駅に到着。大須観音は立派なお寺。そして商店街は通りが3つほどある。非常にビッグ。
なぜ大須商店街に来たのか。それは、『放課後ダイノジ【バラエティチャンネル】』というYouTubeチャンネルで、名古屋の食の魅力について紹介していた動画をたまたま観たからだ。
大須商店街で一番最初に食べたのは、そのチャンネルで紹介されていたみたらし団子。名古屋のみたらし団子は見た目も味も違う。団子というと串に4個刺さっているものを想像していたが、大須商店街の団子は小さめのものが5つ刺さっている。そして醤油の味が香ばしく、甘さはほんのりとある程度である。これがめちゃめちゃおいしい。1本100円。買ってその場で食べて、店の前の串入れに串を返せばよいという便利な仕組み。

みたらし団子を味わった後は、とりあえず商店街を一通り見て歩く。その上で、これまた例のチャンネルで紹介されていた店の「OSSO BRASIL」へ。鶏の丸焼きがうまいらしい。注文したのは鶏の丸焼きランチ1000円と、ブラジルのお酒である「カシャーサ」500円。2階の席で待つ。飲み物と食べ物が来る。まずはカシャーサを飲んでみる・・・うぐぁっ!!これは濃い!!調べてみると38~45°のアルコール度数だ。それをロックで頼んでしまった。
ロックと言うと、グラスの4分の1程度の量であとは氷、というイメージだったが、グラスになみなみと濃い酒が入っていた。今はまだ昼の半ば。ここで酔ってはまずい。そう考えてブレーキを踏む。いや、これは夜だとしても飲み切れないだろう。水を足し足し飲んでみたが結局半分も残してしまった。申し訳ありません。
鶏の丸焼きランチは・・・鶏の皮の部分はパリッと焼けていて非常においしかった。あとはまぁ、普通(笑)。他にハンバーガーなどもあったので、そちらを頼んでおけばよかったかもしれない。機会があればもう一度行って再チャレンジしてみたい。

昼の食べ歩きも最後の局面に。暑くなってきたのでアイスクリームを食べたくなってくるが、せっかくの名古屋旅。名物を食べねばなるまい。
その名物というのが、たい焼きである。今はたい焼きは6匹まとめて焼くのが主流だそうだが、大須では頑なに1匹ずつ焼くことを守っている。それが大須流だ。商店街の出口付近にあるお店。かなり並んでいる。そこに並ぶ。
1匹200円程度。焼たてでパリパリでとてもおいしかった。大須は満足。

1日目:夕方から夜。今池の「味仙」へ

大須から名古屋駅へ徒歩で向かう。大須観音駅の周辺にはライブハウスがあり、かなりの人が並んでいた。
そのような光景を横目に、おそらく40分程歩いただろうか。名古屋駅に戻ってきた。
せっかくなので、特にあてはないが「名古屋っぽいカフェ」で時間をつぶそうとした。が、そのようなものは見つからず、ただいたづらに街をさまよっただけだった。これが疲労を増す。このとき私は、旅の計画には「休憩」という時間が必要なのだと学んだ。休憩する時は、マクドナルドでもいい。

結局、少し早めに夜の目的地である「今池」へ。まだお腹が空いていないので、マックに入り休憩。19:47頃、電車の揺れが体に残っていてふわふわしている。それともさっきのカシャーサのせいか。いずれにしても、この旅が身体に刻まれていくことを感じる。

体力が回復してきた。「味仙」の今池店へ向かう。台湾ラーメンが有名なお店だ。台湾ラーメンは、台湾の食べ物ではない。「台湾の人が食べていそう」ということで名古屋の人がつくったラーメンだ。名古屋の名物である。
私は台湾ラーメンはスーパーで買える2食分で350円くらいのものしか食べたことがないが、それもなかなかおいしかった。今回はついに本物が食べられるということで楽しみだ。
着いてみると、行列。15mくらい並んでいる。普段なら、行列を見るとあきらめて空いていそうなところに行ってしまうが、旅の目的が食である以上、並ばないわけにはいかない。並ぶ。前に並んでいるカップルはもう、人目が気にならなくなっている様子。その間私は、kindleで山本五十六の小説を読みつつ、25分くらい待って入店。
私が頼んだのは、「青菜炒め」と「台湾ラーメン」。そしてビールの中ジョッキ。『放課後ダイノジ』で、「青菜のあお・・・くらいで出てくるから!」と言っていたので、それが体験してみたくてやってみたのだ。しかし実際は、ビールを飲みながら少し待ったうえで、台湾ラーメンの方が先に出てきた。ゴールデンウィークでなければ「あお・・」で出てきたのかもしれない。それともこの話は「盛られた」ものだったのだろうか。しかし自分の目で体で確かめて現実を知る、というのは楽しいものだ。

出てきた台湾ラーメンを食べる。これは・・・ぐあぁ!!辛い!!もの凄く辛い!!思っていたものの8倍は辛い!!もはやおいしいのかどうかさえわからない。みんなよくこんな辛いものを好んで食べられるものだ。青菜炒めはニンニクがたっぷり入っている。これも少し辛いが、おいしく感じられる辛さだ。台湾ラーメンをひと口食べ、ビールで口を冷やし、青菜炒めを食べてラーメン・・・とゆっくり食べていたが、何度も箸が止まる。顔を上げると、感染対策用の仕切りに自分の顔が映る。唇が腫れあがっていた。
ただ、ビールを飲み切った後に杏露酒を頼んだのだが、杏露酒の甘味が、辛さを打ち消してくれた。これと併せて食べることで間食することができた。

味仙を出る。ニンニクの味が口の中に残る。近くの薬局でお茶を買い、セブンイレブンでハーゲンダッツのコーンのアイスを買う。税込み375円という高級品だ。しかしこのアイスが素晴らしくおいしかった。口の中がさっぱりして気持ちいい。むしろこれが今池の収穫なのかもしれない。
『放課後ダイノジ』では、今池にある名店として「味仙」の他に、中日ドラゴンズファンが集まるお店にして星野仙一も愛したという「ピカイチ」と、ホルモンのお店で矢沢永吉も愛したという「梅田屋」を紹介していた。その場所を確認する。ふたつとも意外と小さいお店だった。このどちらかには明日行くか・・・必ずリベンジするぞ今池!という気持ちを持って、21:50頃、宿のあるセントレア空港に向けて出発。

もう暗くて、窓に映る景色も楽しめないため、持ってきた司馬遼太郎の『新史太閤記』を読む。読むのは二週目である。アツイ。「一夜城」がつくられたのは、どうやら犬山の辺りでのことらしいと知り、俄然興味が湧いてくる。明日時間があれば行ってみるか。行けるかどうか。

そして空港に到着。初のカプセルホテル。設備が整っていて快適。部屋は秘密基地みたいで楽しい。明日の計画を立てて25時、就寝。長くて濃い一日だった。


後編はこちら


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