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【心の理論】「自閉症の人は、他の人の気持ちが理解できない」って違うと思うの

(はじめにお断りしておきますが、今日のnoteはちょっと長めです。)

日々の生活の中で、多分大半の人は「相手の人はこう考えてるんだろうな?」「私がこれを言えば、多分嬉しがってくれるだろうな」といった、他の人の気持ちをなんとなく推し量ってコミュニケーションをとっていると思うのね。

こういうのを「心の理論(Theory of Mind):英語圏ではToMと略されることが多いです」といって、他の人の考えを推測したり意図や感情を理解する能力のことを言います。

心の理論は、だいたい4歳くらいに獲得する発達段階の一つなんだけど、自閉症の子供は心の理論の獲得が遅れるといわれていて、それが原因で他人との関わりが苦手になってしまうと言われているんだよね。だから心の理論の獲得を助ける為に、昨日のnoteで書いたように「彼らのわかる方法で学べる関わり方」が必要になるんだよね。

心の理論が獲得済みかどうかは、サリーとアンの課題や、スマーティの課題のテストなどで調べられる事が多いのね。参考までにWikipediaから。

【サリーとアンの課題】
1)サリーとアンが、部屋で一緒に遊んでいる。
2)サリーはボールを、かごの中に入れて部屋を出て行く。
3)サリーがいない間に、アンがボールを別の箱の中に移す。
4)サリーが部屋に戻ってくる。
5)この場面を子供に示して、「サリーはボールを取り出そうと、最初にどこを探すと思いますか?」と質問する。
※正解は「かごの中」だけれど、心の理論の発達が遅れている場合は、「箱」と答える。
【スマーティの課題】
1)前もって子供から見えない所で、お菓子の箱の中に鉛筆を入れておく。
2)お菓子の箱を子供に見せ、何が入っているか質問する。
3)お菓子の箱を開けてみると、中には鉛筆が入っている。
4)お菓子の箱を閉じる。
5)「この箱をAさん(この場にいない人)に見せたら、何が入っていると言うと思うか?」と質問する。
※正解は「お菓子」だけど、心の理論の発達が遅れている場合は、「鉛筆」と答える。

心の理論の研究論文は数え切れないほどあるんだけど、そのいくつかの論文には、
●知的に遅れのない定型発達の子
●知的に遅れのない自閉症の子
●知的に遅れのあるダウン症候群の子
の心の理論獲得を、上のサリーとアンやスマーティの課題を使って比較したものがあるのね。

で、その結果、定型発達の子は問題なく心の理論課題が理解できる子が大半なんだけど、知的に遅れのあるダウン症の子よりも、知的に遅れのない自閉症の子の方が、心の理論の獲得が遅れていることが明らかになってるんだよね。

これはどういう事かと言うと、心の理論獲得には知的な能力よりも、何か他の要素が必要であり、自閉症の人はその要素を持ち合わせていないんじゃないかって事だと思うのね。だからこそ、彼らのわかる方法で支援が必要だと。

上で話した論文がもう一つ面白い事を指摘してたんだけど、自閉症の子は、年齢を追うごとにサリーとアンの課題など心の理論のテストの正解率はあがるんだけど、それが日常の「他の人の気持ちを推し量ってコミュニケーションを営む」能力に結びつかない…。心の理論の理屈はわかっていても、それが日常で使えない、と。

うちの息子の場合、IQは高く学校の勉強にも特に困難を示さなかったのに、4~5年生まで心の理論課題で正解がわからなかったのね。その後、心の理論課題で正解がわかるようになった後でも、日常会話で「相手にも自分と違う気持ちがある」がわかっていないな…っていう場面が多くみられたんだよね。例えば友達の誕生日に自分が好きなゲームを買ってプレゼントしようとしたり…。「自分がこれをもらったら嬉しいから、あの子もそうに違いない」と。でも、私が一つ一つ話を詰めて行くと、「あ、そういうことか」と理解はできたんだけど…。

そんな息子が、「映画」や「まんが」では見事にストーリーや登場人物視点の心情を理解していたんだよね。それはきっと、映画でもまんがでも、ストリーに必要な要素を強調して知らせてくれるからなんだと思うのね。例えば、皮肉で顔を引きつらせながら「おめでとう」という登場人物が、背中からのショットでは背中の後ろで握りこぶしを作っていたり、そのシーンの理解に必要な俳優がアップになったり…。

こんな風にね「注意・注視を向ける先」=ソーシャルキューを自ら見つけるのが苦手なのが、自閉症の人達が心の理論獲得を阻んでいる要素の一つなんじゃないかなって思うのね。(一つです。他にもたくさんありますよ~)

ソーシャルキュー(社会的手掛かり)って、他者の表情や声のトーン、しぐさ等からその人の感情を読み取る手掛かり、すなわち自閉症の子が苦手とされる「空気を読む」事に必要な要素。

そう考えるとね、「自閉症の人は、他の人の気持ちが理解できない」は、ソーシャルキューを見つけられるスキルを獲得する事で一歩前進すると思うんだよね。

そんなソーシャルキューへの注視をや理解を増やすには、映画を使ったソーシャルスキルトレーニング(SST)やコミック会話、マインドマップがお勧めなんだけど、ちょっと長くなったからそのあたりの事はまたいつか。

あとね、発達障害の人と会話をしてて「あれ?」って思う事ってあると思うんだよね。そういう時は「こいつ空気読めてねぇ~」なんて突っぱねるんじゃなく「わかってないかもだけど,かくかくしかじかだから…」って見逃してるかもしれないソーシャルキューに意識を向けるお手伝いをしていただけたら助かります。よろしくお願いします。

ここまで読んで下さった方、お付き合いいただきありがとうございました!



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