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『ハンチバック:市川沙央』を読んだ

◎読む前
芥川賞受賞のニュースを見て、すぐに書店に買いに行った。7月の話。すっかり積読になってしまっていた。やっとこさ手を伸ばせた。

◎覚書
・ハンチバックの意味
背骨が弓のように大きく曲がっていること、またそうした人のこと。自身の経験が作品に盛り込まれているのは30%ほどとインタビューで答えていらっしゃったが、もっと盛り込まれているんじゃないかと思うくらい重たい話だった。

・こたつ記事ライター。なんでこんなに性的なものを書くことになったんだろう。出来ないものに対する憧れ?現実の自分と対極にあるものを得たかったのかな。

・寄付することで弱者に対して優位に立ちたかったようにしか思えない。金持ちのお遊びみたいだなと感じた。

・田中さん。蔑むように見る。健常者だろうと障害者だろうと、底知れぬ闇を持つ人だと分かれば、視線は変わるよな。

・お金があって健康がないと、とても清い人生になります
なってなさそう。お金があっても本当の意味で自由になることができないもどかしさで、正気を失いそうだけど。

・間違った設計図を持っている自分の人生が嫌いなんだろうな。本を読むことでさえ困難な自分に憤りを感じているんだろう。

・殺すために孕もうとする障害者がいてもいいんじゃない?
自分本位な考え方だと思った。今まで出来なかった「普通」の生き方を感じたいからといってしていいことではないだろう。そもそも普通の人間をどう思ってるんだ?

・性行為に1億5500万円をポンと出すことに対して田中さんはますます引いたんだろうな。健常者側からすれば意味が分からないことにとんでもない金額を出しているわけだもんな。

・精子で誤嚥性肺炎。可能性があることは分かっていただろうに。リスクを分かっていながらも、この先得られないかもしれない経験を欲したんだ。

・最後の物語。田中さんや自分をモチーフにしたんじゃないかな。それで田中さんに殺してもらいたかったのかも。

・全体を通して、健常者であることをめった打ちに、ボコボコに殴られている感覚がした。健常者優位主義・マチズモ。そちらの立場からすればそう見えるよな。

・健常者・障害者の間にある壁。あることは知っているのに、目を背けていること。頭を掴まれて、それを見るように仕向けられたように感じた。強い思いを言葉に乗せて、全力でぶん殴られたわ。ページはあまり多くないからさらっと最後までいけるんだけど、内容はドロっとしていて、答えがない底なし沼に引き摺り込まれそうになった。

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