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『噛みあわない会話と、ある過去について:辻村深月』を読んだ

積読になっていた本を引っ張り出し、電車移動のお供にさせてもらった。カガミの孤城とかツナグはタイトルは知っているものの読んだことや映画で観たこともなかった。

ホラー小説を読んだような恐ろしさを終始感じていた。

誰かに傷つけられた人達の思いや恨み辛みを長い年月をかけて煮詰めたものを目の当たりにした。私は第三者としてその物語を見つめているだけなのに、心がギュッと締め付けられるような感じがした。重たく苦しかった。

自分がする行動や言動は自分の中で正当化されたもので。間違ってる!なんて思いながら、し続けることってないはず。

自分の中の正しさが、誰かにとっても正しいとは限らず、捉え方によっては悪にもなりうる。物事に対する切り取り方が人それぞれ違うから、感じ方も変わってしまうんだろうな。

「ナベちゃんのヨメ」
ナベちゃんのヨメ、確かに世間一般の常識から考えるとヤバい部類に入ると思う。でもそんな彼女でもナベちゃんにとって必要な存在だったんだろうな。自分を求めてくれる人が欲しかったんだろうな。学生時代の友人を減らしてしまったかもしれないが、これから続く人生にとって大切な存在を手に入れたのだからナベちゃんはきっと満足なんだろう。

「パッとしない子」
幼い頃にされたことって記憶に残るよな。正確にというよりは、嫌な部分が増幅した形で。相手は大したことしたと思っていないから、覚えていない。佑が復讐のために有名人になったとは思わないけど。その立場を使って、強烈な一発を浴びせていたな。これから一生スッキリしない、もやもやとした陰鬱な気持ちがつきまとうのだろう。もはや呪いだろう。

「ママ・はは」
これはなんかもう。世にも奇妙な物語だった。現実が写真に追いつき始めた。理想の母を手にできた。母にされた仕打ちによる怨みが不思議な現象を引き起こしたのだろうか。

「早穂とゆかり」
理詰めにしてくるゆかりがめちゃめちゃ怖かったし、圧倒的な社会的パワーで早穂を殺しにかかっているところが恐ろしかった。

特に佑とゆかりが怖かった。
最初から殺しにかかっていなくて。今ならわかりあえるかもしれないと対話の機会を設けて。でも結局変わっていないことを知り、深く言葉を刺す。幽霊のような得体のしれないものよりも、人間から溢れ出る憎しみの方がよっぽど怖い。

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