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一期一味、この塩はいつも私に挑戦してきます。

良い食材を使うだけでは料理は完成しない。一品一品、素材を深く掘り下げ、素材の持つ物語を追いかけた料理を皿の上に表現する。〝一期一味〟、この塩は〝忘れられない味をつくれ〟といつも私に挑戦してきます。

文・撮影/長尾謙一 

クリスマス島の塩(素材のちから第24号より)
※「素材のちから」本誌をPDFでご覧になりたい方はこちら

「クリスマス島の塩」は、ひとつひとつの素材に向き合えと教えてくれる
エスカルゴは三重県のエスカルゴ牧場で育ったルコルム種。土の匂いがする。牧場の腐葉土でつくられたパセリをクールブイヨンに使う。仕込みにかけた手間と時間がエスカルゴにこの上ないやわらかさを与える。旨みが凝縮している。ニンニク、海老芋、トリュフ、ポルチーニによって皿の上の物語は続けられる。

目指しているシンプルな料理を良い塩に気付かされる。

オーナーシェフ 石崎 幸雄 さん

ダ  イシザキ東京都文京区千駄木
谷根千で知られる団子坂下に2015年3月15日オープン。自宅に招かれるような雰囲気の隠れ家的な一軒家。シンプルな中に手間をかけ素材と向き合う。そして、素材を生かす調理は仕入れの段階から始まる。お客様がメニューを選ぶのもいいが、「石崎に任せればおいしい旬の料理を食べさせてくれる」と一晩のおもてなしを任せてもらえる料理を目指している。

「クリスタル」「粉末」「乾燥粉末」の3種類を使いこなす

私の料理は、素材と素材の新たな組み合わせで魅せる料理をつくるというよりも、素材感が直線的に入ってくるような、どちらかというと男性的な料理だと言われます。目指すはシンプル・イズ・ベスト。余計にみえることもしますが、その先にあるものはシンプルで素材のおいしさをストレートに感じる料理です。名産地のものだから品質が良いということだけでなく、手に入れた素材の良さをどう自分なりに解釈してお客様に届けるかを心がけています。

「クリスマス島の塩」は自分の料理に向き合っていると、ちょっとしたことで〝あれっ〟といろいろなことを気付かせてくれる塩です。塩のタイプも「クリスタル」「粉末」「乾燥粉末」の3種類あることも、塩を打つタイミングや量を変化させてくれますし、使いこなせば思いがけない料理ができます。

優しい塩だからエスカルゴに土の香りがする

最初の料理は、〝エスカルゴのパセリ ニンニク風グラタン〟です。エスカルゴはフレッシュできますからぬめりがもの凄いです。なので、「クリスマス島の塩」の〝粉末タイプ〟をあてて軽く米を研ぐような感じでぬめりを取ります。

エスカルゴのパセリ ニンニク風グラタン

通常の塩でやると6回くらいやらないと綺麗にならないのですが、「クリスマス島の塩」でやると2、3回でぬめりが引いてくれて本当に綺麗な茶色になります。

これをちょっと温かなお湯に「クリスマス島の塩」の〝乾燥粉末タイプ〟を入れて漬け込みます。これによってほのかに塩味を入れるのです。その後クールブイヨンで4時間から5時間、弱火でコトコト煮ていきますが、ここでは塩は入れません。ここで塩を入れると塩味がエスカルゴに入りすぎるからです。火から外して人肌に戻してから「クリスマス島の塩」の〝乾燥粉末タイプ〟を入れて一晩置いて次の日に調理します。

エスカルゴはすでに煮えていますから、バターでソテーし、クールブイヨンのソースを加え煮詰めてエスカルゴバターを加えます。アンチョビ、バター、パルミジャーノ、鷹の爪、ニンニク、パセリで仕上げていきます。海老芋も添えますが、コリッとした芯を残して茹でた食感がエスカルゴと相性が抜群です。

「クリスマス島の塩」は甘さや風味を持っていますからエスカルゴに直接打って塩を入れるというのではなく、優しく優しく入れます。時間をかけてゆっくりとやることで、ほのかに土の香りを残し本来の旨みを引き出します。塩が一歩引いて素材を際立たせる。この料理はこの塩だからできるのだと思います。

素材感がぐんぐん前にくるような料理

次は〝沖縄ロイヤルポークのキャセロール オーブン焼き〟です。豚肉には、「クリスマス島の塩」の〝クリスタル〟を挽いてふり、よく擦り込んでおきます。

沖縄ロイヤルポークのキャセロール オーブン焼き

焼き色を付けてから「クリスマス島の塩」の〝乾燥粉末タイプ〟を加えた沸騰寸前のクールブイヨンに3、4分くぐらせる程度加熱します。くぐらせてからよく拭き取って野菜と一緒にキャセロールに入れて、オリーブオイルをかけて蓋をして焼く、シンプルにそれだけです。

肉に対してダイレクトに塩を打って、塩が立つような焼き上がりで豚肉の香ばしさを味わうというのもいいと思うのですが、この料理は肉に擦り込んだ塩の力と、色を付けてからくぐらせたクールブイヨンで素材の旨みを引き出すという考え方です。

野菜には塩を打ちません。キャセロールで蓋をして蒸し焼きすることで旨みが閉じ込められ、素材感がぐんぐん前にくるような料理に仕上がります。

鹿肉をより自然な味わいで楽しむ

次は鹿料理ですが、〝蝦夷鹿のロティ ハーブ塩を添えて〟という単純な自然の料理をつくりました。

蝦夷鹿のロティ ハーブ塩を添えて

ウーロン茶に「クリスマス島の塩」の〝粉末タイプ〟を入れて沸かして粗熱を取り、そこに鹿のヒレ肉を漬けます。ウーロン茶の香りと味とやわらかな塩の香りを忍ばせておいてロティします。

280℃で40秒、その後常温で1分半、これを4回くらい繰り返します。しっかりと塩を打ってからロティすれば鹿本来の旨みを引き出せるのですが、あえてウーロン茶と「クリスマス島の塩」で優しくほのかな下味を付けておいて、お客様にご自分でハーブ塩を付けてお召し上がりいただくと、より鹿を自然に味わえると考えました。

こうして、同じ「クリスマス島の塩」でも、3つのタイプを使い分けることで、料理のニュアンスが違ってきます。「自分の料理に結論はない、もっと考えなさい」と、この塩にまた挑戦されている気がします。


お問い合わせ:クリスマス・アイランド21株式会社

(2016年12月28日発行「素材のちから」第24号掲載記事)

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