柴犬チョロは異世界へ行くけど、夢の中で兄ちゃんを癒し続ける#3
「ふあぁぁ…ほ、ほ、ほぉ~」老婆はあくびをした。
同時に「くわぁ~~おぉぉん~~」と大きく口を開け、舌をペロンと出し、盛大に小さな柴犬もあくびをした。くちゃくちゃと口を動かし、まだ眠たそうな感じである。
お互いに目が合った。
「お前さん、いくつだい?」と老婆が尋ねる。
「・・・」
伏せの状態から少し頭を声のするほうへ上げ、老婆の顔をじっくり見るように表情を読み取ろうとしている。
しかし、人間の言葉を出す手段がない。犬ならば当然か…と。
コロコロの小さな柴犬は『私は犬齢18歳3か月』
人間の年齢では88歳を超えている。
まぁ~、犬の意思を疎通する手段がない。人間ならば当然ね…と。
「おや?あんた、見た目の割にはだいぶ落ち着いてるね~。かわいらしい姿でいるから、てっきり幼いのかと思っていたよ。実は精神年齢はかなり高いようだね」老婆がどうにか柴犬の意思を読み取った。
両者ともに明確なやりとりはなくとも、各々のコミュニケーション
手段を用いて会話を成立させようとした。
「あたしは人間として生きているのだけれども、なぜか人間より動物を好むタチでねぇ~」
「お前さんのように人間を愛そうとしてくれる御犬姫のほうが、あたしの家族みたいなもんさ。」
「それで……名前はあるのかい?」
柴犬は立ち上がり、短い右前足を上げ、『チョロです』
「・・・」
「ほ、ほ、ほぉ~」「分かったよ。あたしが名をつけてあげる」
「・・・う~~ん~~。【チョロ】でどうだい?」
小さな柴犬は「わぁん‼」と鳴いた。
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