柴犬チョロは異世界へ行くけど、夢の中で兄ちゃんを癒し続ける#2

火だ。
パチッと音をたてて統一感のない形で燃えている。真っ暗闇の空間で明かりの役割を担っている。
そばには背もたれのいい椅子に誰かが座っている。ゆらゆらととてもゆっくりな動きで椅子を揺らしている。どうやら眠たそうな感じだ。
赤いフードを被っているので、鼻の上半分ははっきりしない。服はこれまた赤いロープを着ている。全身赤のコーデだ。口や手の部分でしわが多いことから老人だと判明。

どこからかテクテクと足音をさせて、暖炉の暖かい明かりに釣られるようにして小さなコロコロの生き物が暗闇から現れた。
ぷるぷる小刻み震えている。寒さで震えているというよりかは体を動かすたびにぷるぷるしてしまうようだ。
まるで初めて外の世界にやってきた状態で歩いている。

「おやおや、どうしたんだい?」老人は目が覚めたのか、コロコロの小さな動物に声をかけた。
「安心しなさいな…あたしゃ~あんたを喰らうような恐ろしい化け物じゃないよ」「さあ、もうちょっとこっちへいらっしゃい」
全身赤のコーデでフードを被ったままの老婆は暖炉の前へ来るよう、その小さなモフモフコロコロに話した。
警戒しつつも茶色のコロコロは老婆に1メートルぐらい離れたところでお座りした。
「そこじゃないよう~。もっとこっち。お前さんの姿をよく見せておくれよ」と老婆は自分の足元へ来るよう手招きした。
老婆の声のトーンや感情を読み取ったのか、警戒しなくても大丈夫と判断して茶色のモフモフコロコロの小さな動物は老婆の足元へ近づいた。
そして、より暖かい暖炉の前、老婆の座っている椅子のそばでくるくる3回周ってから横たわった。
老婆は⦅ふう~やれやれ⦆とフードで隠れているが優しい表情でコロコロの顔を見つめた。


横たわって、すぐに眠り始めたその小さな動物は柴犬だった。

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