偏愛食品#447:この門をくぐる者は(1768/1000)
「この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ」と地獄の入口では告げられる。
しかしこちらの門前では「一層の食欲を持てよ」と自らを鼓舞するのだよ。
2ヵ月に1回くらいの割合で肉を食べる会、その名も肉部。
オトナの部活動だからして、構成部員4名は自由気ままにあちこちの店へお出かけしております。
「最近の店もいいけどさ」
と言い出したのはワタクシ。
「たまには昔よく通った店に行ってみない?」
「いいよ~」
特に部則などというものがあるわけでもないし、臨機応変縦横無尽な3名はただちに賛意を唱えてくれた。
「じゃあさ、羅生門はどう?」
「いいよ~」
闊達というのか付和雷同というのか、あっさり行き先が決まるところが我らの美点。
羅生門、30年前くらいに通ったなぁ~。
実際調べてみたら、1995年から1999年までの5年間で17回。均すとそれほどでもないけど、夜遅くに大勢で駆け込んで、焼肉ばくばくビールごくごくを繰り返していたから、印象が強いんだなきっと。
周りも若かったけど、こちらも30代半ばだ。
そりゃあ食べますよね、遠慮会釈なく欲望の赴くがままに。
当時絶品だと思っていた焼肉、今はどんな味わいだろう?
ビールとキムチ盛り合わせでカンパイの練習をしつつ、遅れてくる部員を待つ。
みんな口々に入店するなり「懐かしぃ~」とつぶやく。
「昔は奥の座敷に座ったよねぇ」
それは人数多かったからだろうなぁ。
夜遅くまでわいわいしていた漫画編集部は部活動みたいで愉しかったよね。
ではまず、思い出のアレを注文してみよう。
ネギタン塩~。
当時あまり塩味の焼肉を知らなかったものだから、これには毎回感動したものでっせ(誰の口癖?)。
さっと焼いてもぐりと噛みしめる。
う~ん、今でも旨いぜ。
かつては一人一皿! くらいのイキオイで食べたものだけど、さすがにそれはムリ。ロースとハラミと梅タン塩と、カルビとレバーとおろし焼肉と、いずれも4人で一皿で十分なことに気付き、なんだかちょっと悲しい。
まあでもあれから幾星霜が過ぎまして、まだ焼肉食べる気持ちがあるだけいいか、なんてますます年よりじみた感慨を持つ。
ビールからマッコリ、赤ワインとあれこれ飲みつつ、青ネギのジョンとかアサリの塩辛なんてつまみをはさみ、最後は石焼ビビンパになだれこむ。
あ、あと玉子スープもお願いします。
ふう、もうこれだけでおなかいっぱい。
昔はこのあとエリマキラーメン食べたよねぇ、などと兵どもが夢の跡。
翌日、
「古き良き焼肉屋さんだった」
「懐かしい美味しさでしたね。量を食べられなくなったことを実感しました」
「めちゃくちゃ懐かしかったのと、以前だったら焼肉食べた後で一人で冷麺ひとつ食べたなあ。。。という歳を実感する遠い目な感じ」
など、みなさん同じような感想を述べておりました。
ツワモノどもだったよね、ワレワレ。
そして、肉部の行方は、誰も知らない。
ただ一人、アンパンマンだけが知っている(のか?)。
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