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【フランスおいしい旅ガイド】ブルゴーニュの郷土料理

ワインは、フランス人の食卓に欠かせないが、料理の調味料としても重要な役割を果たしている。その働きを一言でいえば、料理にコクをつけることであり、使い方次第で実に多彩な能力を発揮する。ワインの豊富なブルゴーニュ地方では、料理に果たすワインの役割は、一層重要である。何でもワインで煮込んでしまうのではないかと思われるほど、ワイン煮が多い。

ワインを使った料理


○牛肉の赤ワイン煮(ブフ・フルギニョン) Boeuf Bourguignon

ワインの本場ブルゴーニュを代表する料理。ぶつ切りにした牛肉(イチボ、ばら肉、肩ロース)をラードか油で表面に十分焼き色をつける。人参と玉葱の薄切りを加え、これにも焼き色がついたら、小麦粉をふり入れる。さらに、赤ワインと、ブイヨンか水を注ぎ、塩、胡椒し、ブーケ・ガルニ(香草の束)を加えてふたをし、弱火で2~3時間煮込む。途中であくや浮き脂を丁寧にすくう。このままでも、あるいはソースだけを漉して少し煮つめて肉にかけてもよい。肉は炒める前に、赤ワイン、コニャック、香草類に2~3時間漬け込んでおき、また漬け汁を、煮込む際鍋に足すとなおよい。

l'Etoile, Dijon

○雄鶏のシャンベルタン煮(コック・オ・シャンベルタン) Coq au Chambertin

シャンベルタンはコート・ドール北端のブドウ畑が生み出す極上の赤ワインとして知られている。これはブルゴーニュならではの贅沢な一皿。鶏は切って、ニンニク、エシャロット、ブーケ・ガルニとともにシャンベルタンに1日漬ける。鍋に油を熱して鶏を入れ、表面に薄く焼き色をつける。小麦粉をふり入れ、漬け汁を注いで煮る。バターで炒めたベーコンと小玉葱を途中で加える。

○羊の舌の白ワイン煮Langue de Mouton à la Nivernaise

ニヴェルネ地方の名産である羊と白ワインを組み合わせて作った料理。これにはやはり名産の人参をつけ合わせることになっている。羊の舌は水にさらしてから下ゆでし、皮をはぐ。ベーコン、玉葱、タイム、ローリエとともに白ワインで煮る。人参は少量のだし汁に砂糖とバターを加えたもので煮て、つやよく仕上げる。

○ポシューズPauchouse(あるいはPochouse)

マトロートの一種で、ブルゴーニュ地方の淡水魚の白ワイン煮。ソーヌ河畔の町ヴェルダン・シュル・ル・ドゥー生まれといわれ、現在は周辺各地で作られている。ポシューズという語は、漁師が使う袋網ポシュpocheがなまったものらしく、ブロシェ(川カマス)、ウナギ、ロット(カワミンタイ)、タンシュ(コイの一種)など、色々な淡水魚が1つの鍋でひしめきあうさまは、ポシェそのもの。作り方は、鍋にバターかラードを熱して、小玉葱、ニンニクを炒める。こげ目がついたら、ぶつ切りにした魚と白ワイン(アリゴテ)を加え沸騰させる。火を弱めて30分位煮たら、ブール・マニエ(バターと小麦粉を同量づつ練り合わせたもの)を加えてとろみをつけ、クルトンを添える。

○ムーレットMeurette

ブルゴーニュ地方の、赤ワインで煮込む淡水魚の料理。古フランス語muire「塩水で調理する」が語源といわれている。フランシュ・コンテ地方が本家であるとの主張もある。

○コイの赤ワイン煮Carpe Miroir à la Bourguignonne

魚料理には普通白ワインを使うがコイは独特の臭みをもつので、それを消すために赤ワインをよく使う。生きたコイの血をとっておき、内臓を除く。グラタン皿にコイを丸ごと入れ、小玉葱、赤ワインを加えてオーヴンで煮る。煮汁は煮つめて、ブール・マニエと血でとろみをつける。

○ハムとパセリのゼリー寄せJambon Persillé

ハムは水に漬けて塩抜きしてから、仔牛のすね肉、香草類とともに白ワインで十分煮る。ハムを取り出して粗く刻む。煮汁は漉しておく。テリーヌ型に、ハム、煮汁、パセリのみじん切りを入れて1日置く。冷めるとゼラチン質のためにゼリー状になる。見た目も美しく、食べておいしい、オードヴルに最適の一品。

○ウフ・アン・ムーレット Oeufs en Meurette

赤ワインで作るポーチドエッグで、ブルゴーニュ独特のもの。玉葱、ブーケ・ガルニを加えて軽く煮た赤ワインを1度漉し、そこへ卵を割り入れる。卵白で卵黄をくるみ、2~3分静かにゆでて取り出す。残ったワインは煮つめて、ブール・マニエでとろみをつけ、卵にかける。

l'Etoile, Dijon


名産を使った料理


○ブルゴーニュ風エスカルゴの殻焼きEscargots à la Bourguignonne

ワインと並んで代表的なブルゴーニュの産物といえばエスカルゴ(かたつむり)である。エスカルゴはブドウの葉が大好物なので、エスカルゴの産地はワイン産地と重なる。数種類あるエスカルゴの中で代表的なものは、グロ・ブランと呼ばれる大きくて白い直径4cm位のブルゴーニュ産のものと、南西部、南部産のプチ・グリと呼ばれる小さくて灰色のものである。もっとも一般的な料理法は、殻焼きである。バターをポマード状に練り、ニンニク、パセリ、エシャロットのみじん切り、塩、胡椒を加えてよく混ぜ合わせエスカルゴバターBeurre d'Escargot(別名ブルギニョンバター)を作る。エスカルゴはよく洗って不純物を落としてから、熱湯でゆで、中身を引き出して先の黒い部分を除き、クール・ブイヨンで煮る。再び殻に詰め、エスカルゴバターでぴったりふたをする。(この状態のものが市販されている)オーヴンで焼き、殻の中でバターが煮えたぎっているようなところを食べる。食べるときは専用のエスカルゴばさみを使う。レストランではエスカルゴは魚料理に分類される。エスカルゴをシャブリ(白ワイン)で煮てから、エスカルゴバターを詰めて焼くエスカルゴのシャブリ風味焼きEscargots au Chablisや、サザエのつぼ焼きに似たエスカルゴの網焼きEscargots sur le Grilなどもブルゴーニュ地方でよく行われる料理法である。

l'Etoile, Dijon

○エスカルゴの白ワイン煮Escargots au Vin Blanc

ブルゴーニュ地方の料理。エシャロット、ニンニクをバターで炒め、下ごしらえしたエスカルゴの身、パセリ、ローリエを加える。白ワインを加えてことこと煮込み、レモン汁を絞り入れる。白ワインはシャブリなら申し分ない。

肉料理


○アトロAttereau

串の意。ブルゴーニュ地方では、あみ脂で豚のファルス(詰め物)を包んだ料理をいう。

○フェルシューズFerchuse

豚の内臓の煮込み。古くからブルゴーニュ地方にある料理で、小さく切った豚の内臓に塩、胡椒し、ラードで炒めて小麦粉をふり、ブルゴーニュ産赤ワインとだし汁、ニンニク、エシャロット、ブーケ・ガルニを加えて煮込み、ジャガイモを加える。

○ジュドリュJudru

豚の挽肉にマールブランデーで香りをつけて、豚に詰めたモルヴァン名産の太いソーセージ。

ディジョンの料理


ディジョンにはマスタードを使った料理が多く、ディジョン風とつけば、マスタードを使っていると考えてよい。また、ディジョンでは、ベシャメルソースに生クリーム、酢、マスタードを加えたムータルドソースを、豚や鶏の料理、ゆでた野菜によく添える。

○ディジョン風仔牛のソテーEscalopes de Veau Dijonnaise

仔牛の薄切りをバターで炒めてから取り出し、そこに生クリームを加えてとろっとするまで煮つめ、最後にマスタードを加えて、肉にかける。

○ディジョン風鶏手羽先の煮込みAbattis à la Dijonnaise

手羽先をバターで軽く色づけながら炒める。刻んだ玉葱を加えてさらに炒め、ブイヨンを注いで煮込む。バターでじっくり火を通したマッシュルームを加え、マスタードと生クリームを合わせたものを注ぎ、弱火で少し煮る。

○ジャンボノーのマスタード風味Jambonneaux à la Moutarde

ジャンボノーにブイヨン、白ワイン、油、刻んだ玉葱、バジル、胡椒を混ぜたものを途中でかけながらオーヴンで焼き、焼き汁にマスタードを混ぜてソースにする。ジャンボノーとは豚のすね肉の一部で、もも肉同様、よくハムにする部分である。

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