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🇹🇼🦋:台湾の山中をさまよって採ってきたもの

あるとき、台湾の山の中に蝶を撮りに行った。

台南のピンドン(屏東)という町に宿をとり、バスを乗り継いでリュウグイ(六亀)という田舎町まで行きそこから山に入った。

でも、蝶がいない・・まぁ、ときどき飛んでいるんだけど・・・ほんと時々。

子供の頃、須田孫七という虫好きの先生が台湾行って蝶を採ってきたよ、って言って写真を見せてくれた。

給水していた蝶達が一斉に舞い上がり何千匹か判らないほど多くの蝶で太陽が遮られている写真。
そんな絵を想像して山の中をさまよっていたわけだから、10匹くらい飛んでいてもなぁ、とため息の連続。
現地の人に聞いたら、「昔は沢山いたが今はいないよ」って言われて更にガックリ。

もう帰ろうと来た道を戻っていたのだが、どこでどう間違えたのか山中をあちこち彷徨う。やっと舗装された車道に出た。地図をみたらかなり明後日の方角に歩いていた。

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地図の赤いルートを歩いて目的地が。だから、赤のルートを戻ればいいのに、どっかで間違えてに出てしまった。結局でバス停を見つけて待つことしばし。全然来ない。そもそもタイムテーブルの読み方が判らん!!
私がバカなのかタイムテーブルが異世界のものなのか?  

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来ないバスを待っても仕方ないのでヒッチハイクを断行!

田舎なので交通量も少なかったが、やっと来た白い乗用車に親指を立てて合図を出したら・・なんと一発で止まってくれた。
真っ黒のサングラスをかけたおじさんが窓から顔を出す。ちょっと引いたが事情を話して町のバスターミナルまで乗せてもらうことになった。車中かなり寡黙な時間が流れる。ちと不安になったのでいろいろと話しかけても回答が無い。私の怪しい英語と中国語では意思の疎通が出来ないのか・・とさらに不安。

20分ほどで町中の商店の様な建物で止まった。中に数人の男女がいた。優しそうなおばさんがお茶をだしてくれてパンフレットを差し出した。表紙にお釈迦様の絵が描いてある。そう、そこは仏教系新興宗教の布教所だったのだ。心の中でため息をつきながら、お茶をすすっていた。学生時代、民俗学や文化人類学で新興宗教のフィールド調査なんかやっていて、耐性はあるものの身構えてしまう。

そのおばさんは、部屋の壁のに貼ってある大きな掲示物を指さした。
沢山の手形、色とりどりの手形がひしめき合っていた。

地球が良くなるように! 日本ガンバレ! みんなが幸せになりますように!

と書いてあった。おばさんは、3.11後の日本を応援するため、この小さな町の小学生達が手形をつけて東日本の復興を応援する為に作ったと説明してくれた。

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この応援垂れ幕を何かのメディアに乗せるとか、彼らの布教に使うのではなく、みんなで祈り、そして応援する。その行為そのものを重視していた。
山深い小さな町の子供達の志。まぶたの裏で涙を乾かした。

警戒心も消え、いろいろな事を話した。おばさんは急に「これから布教に行くんだけど一緒にいかないか?」と誘った。蝶の撮影がボウズで時間も余っていた私はOKして彼らの車に乗り込んだ。

何件かの老人宅を訪問し、悩み事聞いたり、元気づけたりしていた。
これが宗教の元々の形なのではないかと感じた。葬式仏教や観光仏教では無く、困っている人がいたら実際に助ける。その実践行為を目の当たりにしてショックであった。

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4件のご老人を訪問した後、バス停まで送って頂いた。

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蝶は撮れなかったが、もっと別のものを採ってきた様に想う。

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