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角川『短歌』2023年10月号

一日の内訳に月光は含まれる浴びるたびみずうみになるというのに 立花開 一日の内訳は時間で計られるはずだが、そこに月光を含めた。月光を浴びていると、日常的な考え方や行動ができないのだろう。ぼおっと湖になっている時間なのだ。

一度きりの命 一度きりの肌 燃やさなくても燃えているのに 立花開 一連から亡くなったピアニストを詠った歌と分かる。芸術に憑かれて燃やさなくても勝手に燃えてしまう命を、自ら縮めるように燃やした人。ジャンルは違えど、主体もその気持ちを共有している。

音が音を了えたるのちの体が体を了えたるのちの向日葵畑 立花開 曲を弾き終えるように人は命を終えたのだろうか。向日葵畑は曲が終わった後、主体の心の中に広がるイメージと取った。何かが終わった後を埋めるように咲く一面の向日葵。明暗がくっきりと描かれる。

それぞれが家庭にむかう背中見ゆ次のやくそくむすんだのちに 岩内敏行 昔の友達と集ってゴルフを楽しんだ一連。最近私も友達と集ったのでこの歌が身に沁みた。もうそれぞれ家庭がある。お互い昔と何も変わらないが、自分たちを取り巻く環境は何もかも変わったのだ。

2023.10.24.~25. Twitterより編集再掲

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