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『群馬県立土谷文明記念文学館 紀要 風 第26号2022年度』

①2023年3月発行の本誌を一年後の先日読んだ。当時の永田和宏の講演録を読むと、2022年時には、コロナの時代をどう生きるか、が本当に緊切の問題だったことが分かる。そして私たちがもうそれを忘れかけていることも。

②永田和宏「ことばの力ー言葉で思いを伝えること」
〈この新型コロナウィルスの流行も、世界史の中に残ると思います。たぶん数行で、そんなには残らないだろうけれども、歴史は、あったことはすべてきちんと残してくれます。ただ私は、歴史書の中に唯一残らないことがあると思っています。それは、その歴史的な出来事の中で生活をしていた庶民の思いです。(…)その当時、普通の人々がどのような思いをもって生活をしていたか、この新型コロナという感染症を捉えていたか、そういうことは、歴史書にはまず残りません。それを残せるの、唯一短歌だと思うのです。〉  
 新聞歌壇に投稿された歌を中心に、引いて評した部分から。これを読んでいると、ああ、そうだったなあ、ともう既に歴史をふり返る気分になってしまう。確かに庶民の声は残っている。そして凄い速さで過去になっていっている。

③永田和宏〈我々がものを見るときにいかに型でしか見ていないか(…)我々はいろいろなものを決まりきった型で見ているので、それが実際にどうであるかということにはほとんど気がつかない。〉
〈我々が歌を作るときに大事なのは、固定観念、当たり前、ものの見方、型というものでものを見ずに、いかに自分の目でものを見るかということ。これは言うのは簡単だけど、とても難しいことです。〉
 これは歌を作る時だけでなく、常に自分の生活に起こって来る物事全般に対して言えることだと思った。

④永田和宏〈その人の前にいると自分のいちばん良いところが出てくる、そういう人が伴侶であってほしいと思うのです。その人の前にいると、自分のいちばん良い部分が出てくる、あるいはその人の前にいると自分が輝いているのが自分で見える。自分の良いところがどんどん拓かれていく。そういう人が伴侶であると、幸せだと私は思います。〉
 永田和宏が河野裕子について語る話、常に良い。この部分は『知の体力』にも書かれている。

2024.4.6. Twitterより編集再掲

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