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角川『短歌』2024年3月号

鶺鴒のちひさな気持ちこぼれたり小走りすれば陽差しゆれたり 小島ゆかり 上句に鶺鴒に対する心寄せがある。漢字とカタカナでは印象が変わると実感。以前は滅多に見なかったが、最近よく見かける。生態系に変化があったのか。やはり走っている姿を詠いたくなる鳥。

咲きのかぎり咲きたるさくらおのづからとどまりかねてゆらげるごとし 三ヶ島葭子 全歌集刊行記念特集の秋山佐和子による百首選より。この歌は前から好きだった。まさに今シーズン。この百首選は、秋山による短いコメントがついて、三ヶ島葭子の作品がよく分かる。

いくたびも風にひるがえり飛ぶ凧のからだ透く見ゆ 言葉は鏡 狩峰隆希 四句までは具体を描写している。四句は風に凧の紙が撓って、竹ひごが透けて見える状態と取った。結句で突然、抽象的な語に飛躍するが、風に飛ぶ凧と、空間を行き交う言葉に連関を感じた。

④藪内亮輔「一葉の記憶 私の公募短歌館」
〈自分よがりに作品を作るのではなく、読者のことも考えて作る。第三者目線からも自らの歌を見ることができるようになっていった。〉
 これが二十歳前後のことだというのだからすごい。簡単に至れる境地ではないと思った。

2024.3.30. Twitterより編集再掲

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