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角川『短歌』2024年1月号

苦しいね子供は親を拒めないチャールズ・マンソンが父であつても 山田富士郎 流行りの言葉で言えば親ガチャというところか。しかしマンソンは極端。愛してくれない親であっても子供は愛してしまう。最も苦しい愛の形と言えるだろう。

②「エッセイ70歳の私」山田富士郎「自由になる」
〈老いて良いことが何もないかというと、幸いなことにそうではない。世俗的な欲望(含短歌)からはほぼ自由になれたと思うし、作歌はいよいよ面白くなった。〉
 読んでうれしくなったエッセイ。

蛇口から眼球がその半身をいだしてをりぬ朝日を受けて 渡辺松男 蛇口から水滴が落ちようとしている。その水滴に朝日が映って眼球のように見える。まるで眼球が蛇口から出て来ようとしているように。不気味な風景。朝の水滴からここまで心象に落とし込む。

人間をときに見くだし飛ぶものの影あり海に うすめてながす 大口玲子 上句は鳥のことだろう。鳥が人間を軽蔑している、というのは主体の心境なのだが、鳥に神的な視点を感じているのだ。結句は原発の処理水を指す。こんな愚かなことをする人間を、という気持ち。

隙間から生えて健気と思わるる草、ずうずうしと思わるる草 永田紅 人間でもそうでしょう、と言外に言っているようだ。同じことをしているのに、人の感情のどこをどう刺激して、そのように違う気持ちを持たれてしまうのだろうか。草なら抜けばいいけれど。

⑥「歌壇掲示板」
 「今後のイベント」欄に「トークイベント『キマイラ文語』を読む会」を掲載いただきました!いよいよ近づいて来ました。ワクワクしています。

2024.1.30. Twitterより編集再掲

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